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ライオンと魔女(岩波書店)

作者名を書くまでもないだろう。
今年のクリスマスに公開される(日本での公開は来春らしいが)映画の予告編がネット上に配信されたということもあり、最近、私の中ではちょっと盛り上がっている。その勢いで再読した。

ナルニアは、出会って数ヶ月後にランサムにハマってしまったため、読み返した回数はそれほど多くないのだが、心がまだみずみずしかった時期に読んだということもあり、語るつもりになったら、かなり語れる。おそらくランサムの次に。

全7作の中でもかなり人気の高い「ライオンと魔女」だが、実は私にとってはベストではない。
なぜそうなのかということを、今回じっくり読みながら、分析してみた。



子どもの頃の私には、「エドマンドの裏切り」が耐えられなかった。

当時の私は、自己投影できる登場人物を、読む本の中に常に求めていた。
幸いなことに、ナルニアにはルーシィがいた。読むたびに私はルーシィになれた。
でも、兄さんが裏切る。自分を嘘つき呼ばわりする。これが嫌だった。

さらに、アスランと石舞台のくだり。これがさっぱりわからない。
アスランが勝って魔女が負けるという結果には満足だったが。
(キリスト教系の短大出身の母にとっては、まさにここがツボだったらしい)

大人になってからだと、さすがにルーシィにはなれない。
今となれば、エドマンドもちっちゃな坊やに過ぎない。
だから、彼の裏切りはそれほどつらくない。
でも、まだひとつ、苦手なところがある。
それは、プリンを食べてしまったエドマンドが気持ち悪くなるところ。今でさえ、読んでいて、一緒に気持ち悪くなってしまう。

石舞台のくだりは、キリスト教の知識のある今なら、「ふふふ」という気分で読める。
「ふふふ」と思いながらも、ちょっと不満を覚える。
オリジナリティが無いんじゃない?
でも、晩年になってからキリスト教がマイブームになったルイスにとって、それこそが一番描きたかったことなのだ。文句を言ってもしょうがない。

今回読んでみて、感銘を覚えたのは以下の2点。

まずは物語の導入部分のうまさ。
何も起こりそうもない日、ルーシィがふと思いついて衣装だんすに入り込み、ナルニアにたどり着き、タムナスさんと出会う。この流れが絶妙である。読者の心はあっという間に鷲掴みにされてしまう。

そして、自然描写の美しさ。
アスランがやってきて、魔女の力が弱ったことにより、冬が去り、春がやってくる。その移り変わりがきめ細かく描かれている。
昔、母は、そういう場面を読み上げてみせて、よく言ったものだ。
「素晴らしい文章だわ! どうしてあなたはそれがわからないの。…ランサムばかり読んで」

母上、貴女様のおっしゃるとおりでございます。


でも、ランサムにだって、素晴らしいところはたくさんあるのよーーー!!

by foggykaoru | 2005-05-22 07:08 | 児童書関連 | Trackback | Comments(6)

Commented by KIKI at 2005-05-22 22:10 x
おおっ!ナルニア出ましたね。<ブログに
私は子供の頃最初に読んで、あんまり石舞台のシーンとかは
キリスト教の知識もなかったしなんとも思いませんでした。
が、やはりその後キリスト教の学校に入ってから再読したら
確かに同じくキリスト教をモチーフにしたシーンでは、ちょっぴり
しらけてしまったのは認めます。ハイ。

ただライオンと魔女はタスナムさんの家でのお茶や、ビーバーダム
でのご飯など食べ物関係のシーンと、フォーンたちが本当にいるかの
ような描き方が今も昔も大好きです♪

あ、、もちろんランサムも大好きですよ。
Commented by foggykaoru at 2005-05-23 22:27
KIKIさん。2巻目以降も追々再読してみようと思ってます。

>タスナムさんの家でのお茶や、ビーバーダムでのご飯など食べ物関係のシーン

うんうん、あのあたり、ほんとうにいいシーンですよね。
冷え切ったペベンシーきょうだいの身体だけでなく、読む側の心までもが、あったかくなります。

>あ、、もちろんランサムも大好きですよ。
なにわのナンシイさん、そう言ってくれてどうもありがとさん(^^;
Commented by crann at 2005-06-05 20:21
かおるさん

ナルニアの音楽、天の王国の作曲者ハリー・グレッグソン氏なんですね。
エルサレム攻防戦の際に攻城櫓が連続して倒れるところの音楽を聞いた瞬間に「つい最近聞いたような・・・?」と思ったのは、ナルニアの予告編でだったのですね。
でも「ハムナプトラ2」にも似てるんですけど(爆)
Commented by foggykaoru at 2005-06-05 21:27
crannさん。
天の王国の音楽ってどういうのでしたっけ?
あっそうか、ナルニアの予告編観にいけばいいのね!(笑)
Commented by Rupinasu_3 at 2005-06-06 21:33
「ライオンと魔女」は、娘にすすめられて最近読みました。
foggykaoruさんのおっしゃる通り、最初からすっかり引き込まれてしまいましたね。
子どもの頃に読みたかったなぁ、って思っていたけど
なるほど、エドマンドの裏切りは 結構キツいかも・・
映画も楽しみですね。
でも、観終わったら きっと不満話しに盛り上がりそうですね。
Commented by foggykaoru at 2005-06-07 20:46
Rupinasu_3さん。
>なるほど、エドマンドの裏切りは 結構キツいかも・・
「私はルーシィ」とか思わない子なら大丈夫でしょうね。
ナルニアは、子どもの本のわりに、悪をきちんと描いているという印象が強いです。
せっかく映画化するなら、悪を変にソフトにしないで欲しいけれど、なんせ制作がディズニーですからね。。。
>でも、観終わったら きっと不満話しに盛り上がりそうですね。
うん。きっとそうなることでしょう(きっぱり)

でも楽しみです。
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