アジア未知動物紀行
2012年 11月 17日
著者はもちろん(!)高野秀行氏。
今回の探し物は
・ベトナムの猿人「フイハイ」
・奄美の妖怪「ケンミン」
・アフガニスタンの凶獣「ペシャクパラング」
若いときから旅のネタ(!)を見つけては、出発前に入念な準備をしてからでかけていた高野さんだが、今回の3つの旅はそうではない。
突発的・衝動的にでかけるのも悪くない、と思い始めたとのことで、ベトナムではホーチミンに着いてから慌ててテントを購入したり。そのバタバタぶりがまた面白かったりする。
もちろん(!?)探し物は見つからないのだが、それでも(それだからこそ?)楽しめるのだから、読者としては何も問題ないわけで。
強く思ったこと。
それは
高野さん、あなたの旅は正解です。
ということ。
現代において、未知のもの(さまよえる湖だったり、怪獣だったり)を発見したり、人跡未踏の地(南極点だったり、エベレスト改めチョモランマだったり)に到達したりすることは、もはや事実上不可能になっている。
また、「話には聞くけれど、見たことがない土地やもの」をこの目で見たい、という欲求すら、今の若者には抱きにくくなっている。
私は小学生のときから英国湖水地方を一目見たいと思い続け、10年後に初めてウィンダミアに行って大感激した。
でも、今やネットで写真をいくらでも見ることができる。これは果たして幸せなことなのだろうか?(とか言いつつ、写真や旅行記をアップしている私は、他の人々の幸せを奪うことに加担しているのである)
旅する意義はいろいろある。「あった」と言うべきかもしれない。
今や1つしか残っていないような気がする。
それは「出会い」である。
ところが、インターネット、特にスマホの登場によって、「出会い」の機会すら減っている。
なにしろ生身の人間に訊かなくても、スマホで検索すればたいていの情報が得られるのだから。
高野さんが求めているのはスマホでは得られない情報である。
だから現地の人々とふれあい、語り合わなければならない。
そういう意味で、高野さんの旅は「正解」なのだ。
未知動物という、はっきりした興味の対象を持っている高野さんは幸いである。
現時点でこの単行本はユーズドでしか入手できません。
もうすぐ文庫化されるかも。
by foggykaoru | 2012-11-17 23:09 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(4)

私の場合、あこがれの湖水地方に旅して、最も衝撃的な出会いは、初めて二人だけで旅をした実の叔母の過去、だった・・・
なーんて、なんだか「青い鳥」の結末みたいでした。
もちろん、素晴らしい旅行でしたけれど、見るものの殆どが、懐かしいというような、
確認行動となってしまいました。
車で行動したのが、まずかったのかな、とも思います。
本当に、人生ベスト5には入る旅行だったのではありますが、単なる一旅行者で終わってしまいました。
見たことがないものを追い求めてというつながりで、
どうでもいい話しなんですが、
今フジテレビで是枝監督が作っているドラマが、何だか気になります。
阿部寛が主演で、コロボックルのような小人「クーナ」を、長野の森で探す、というような話なんです。
地味~~な作りながら、映像がきれいだし、お勧めです。
「目に見えるものが全てではない」というのが、テーマなんですが、
応援したくなるドラマです。
醍醐味というか、、、旅しないとできないのは、生身の人間に出会うことだということです。
他のことは今や旅しなくてもできるから。
>確認行動
そうなんですよね。
思い入れがある物件(たとえばランサム物件)の場合は確認するだけでも、一般物件よりは数倍楽しいのだけれど。
それでも、相棒がランサム好きかどうかで全然違うと思います。

行けないからネットで見る人もいるし、行きたいから見ないでおく人もいるし、それはいろいろでいいんじゃないかな。
クーナのドラマ、気になるんだけど初回だけ見て止まってます。時間ができたら見よう・・・。(生田斗真の四万十川のはカヌーが出てくる!と遅れながら見てますが。)
情報通信の技術が進み、バーチャルな中で済ませようと思えばどんどんできる世の中になってきている。
そのことが現実の旅をも浸食しつつある、ということです。
人それぞれ、ということはあるけれど、スマホで検索できるから人にものを尋ねない旅人が増えるのは、とても気持ち悪い感じがするのです。
まあ、気にしないでね。