「アホイ」について
2005年 05月 25日
5月はしばらくの間、東京の有明に停泊していたのですが、そろそろ名古屋に向かうはず。名古屋の次は大阪だそうです。
西日本の帆船好きな方、このチャンスを逃しませんように。
で、私はというと、先週末に見てきました。その詳細は、そのうちにメインサイトのアーサー・ランサムのコーナーにアップする予定です。ただし、予定はあくまでも未定であって、決定ではありません(苦笑)
本記事のカテゴリーは「バベルの塔」。すなわち言語ネタ。それもヒジョーに軽いネタです。正直、こんなのアップしちゃっていいのかねと思わないでもないのですが、まあいいか。
私たち(「アーサー・ランサム・クラブ(略してARC)」という名前の団体です)は、船上に通訳がいるとわかったとたん、思いつく限りの質問を浴びせかけました。その質問の中には、船に関するまともな質問、たとえば「この船のバラストはどうなっているのか?」というのもありましたが、まともでないのもかなりあったわけで。
普通の人はまず絶対にしないだろうけれど、私たちにとっては最重要かもしれない質問はこれでした。
「スペイン語で『アホイ!』はどう言うのか?」
"Ahoy!"とは、英語で船に呼びかけるときの決まり文句。
日本語にはそれに相当する水夫言葉は無さそうだけれど、あえて言えば「おーい!」でしょうか。
スペイン人乗組員に、その質問の趣旨を理解させるだけでもけっこう大変でしたが、手を変え品を変え例を変え説明した結果、得た答えは
「アッ デルバルコ」
この時は「バルコ」はたぶん「船」という意味だな、と想像しただけでしたが、その後、ARCのメーリングリストで事後研究がなされ、この言葉が"Ah del barco!"であり、英語の"Ship ahoy!"に相当することが判明しました。つまり、ただの「アホイ」ではなかった。
ここで私は考えました。
フランス語で「アホイ!」は何と言うんだろう?
フランス語の間投詞としては、"Ah!"(アー) とか、"Oh!"(オー)をまず思いつきますが、"He!"(エー。"e"の上に右上がりのアクセント記号が付きます)なんてのもあります。
そう言えば、フランスの古い子どもの歌に"Il etait un petit navire"(昔、小さな船がありました)というのがあって、「オエオエー」というかけ声が出てきたなあ。
日本人の語感には、まるで船酔いしてるみたいで、初めて教わったとき、「げげっ」と思ったものです。
そんなことを考えながら、英仏辞典を調べたら、
Ship ahoy! = Oh du navire! (オー デュナヴィール) または Ohe du navire! (オエー デュナヴィール)とあるではありませんか!!
("ohe"の"e"の上には右上がりのアクセント記号が付きます)
「オエー」は「アホイ」だったんだ。。。しばし感慨に浸った私でした。
この歌はこちらで歌詞を見ながら聴けます。歌詞を読むときは「文字のエンコード」を「西ヨーロッパ言語」にしてください。
楽譜が見たい方には、こちらがいいでしょう。ただし、楽譜の下の歌詞にミスプリントがあって、肝心の「オエオエー」が「オアオアー」になっていますが。
この歌、1番しか知らなかったのですが、最後まで読んでみたら、けっこう面白かったので、ご紹介します。
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昔 一度も航海に出たことのない小さな船があった オエオエー
それが長い航海に出た 地中海を航海した オエオエー
5、6週間たったら食べるものがなくなった オエオエー
みんなでクジを引いた 誰を食べるか決めるために オエオエー
クジに当たったのは一番年下の水夫だった そいつを食べることになった オエオエー
みんなはソースは何にしようかと考えた 可哀想に少年は食べられてしまう オエオエー
ある者はフライにしようと言い またある者はフリカッセにしようと言った オエオエー
みんなが話し合ってる間に 彼はトプスルに登った オエオエー
彼はてっぺんで神に祈った そして果てしない海を眺めた オエオエー
周りは海だけ そしてどっちを向いても 波しか見えない オエオエー
おお、聖母マリアさま! 不運な少年は叫んだ オエオエー
私が罪を犯したというのならお赦しください あいつらが私を食べないようにしてください オエオエー
その瞬間 少年にとって大きな奇跡が起きた オエオエー
何千という小さな魚が 船に飛び込んできた オエオエー
その魚を捕まえてフライにした 少年は助かった オエオエー
この話が気に入ったんなら また始めから話してやってもいいんだぜ オエオエー
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めでたしめでたし。
途中までは、日本人にとってまさに「オエオエー」の世界なのでした(笑)
by foggykaoru | 2005-05-25 21:00 | バベルの塔 | Trackback(1) | Comments(12)
「あっ、この歌知らないわ」と思って、ずっと気に掛けていたのです。
きっと、美少年が「オエオエ~~」と歌っていたのが、印象的だったんでしょう…当時の私。
至って、個人的な思い出でした。
興味深い唄ですね…!食べ物が無くなって、誰を食べるか相談して、それが一番年少の水夫になった、というのを読んでフト思ったのは、「海神丸」(野上弥生子)でした。あっちは食べられちゃいましたが…^^;
歌確かに途中までオエオエですね。
日本で祈る場合はやっぱり
「神様仏様!」ではないでしょうか?
歌の最後の歌詞がなんだかとっても気に入りました。
私なら「んじゃも一回最初から!」と言ってしまいそうです・・・。
そうかやっぱ「神様仏様」なのね。最近、耶蘇方面の本ばかり読んでて、日本人としてほ普通の感覚がなくなっちゃって(苦笑)
最後の1行、いいでしょう?
この歌、古い歌だから、いろんなバージョンがあるようで、最後の1行が無いやつもあります。でも、あえてこっちをご紹介しました。
すばらしく素敵な歌で、感動しました(笑)
ビクトリア号、近場なのに結局いけずじまい、そういうものですよね。
昨年は日本丸ついてたのに。
オエオエーですが。
ポル語=サンバの歌詞にはよくでてきます。
オエオエ~オ~という掛け声みたいに。日本語の「ソレヤットコドッコイホイサッサ」みたいなもんだろう、と思ってました。
日本でも帆をあげるときに、そーれそーれとかやーれやーれ、とか(ソーラン節ですね・・・)言いますから、調子をつけるのには母音がいいということでしょうか?
日本人が窮地におちいったら・・・
神様仏様!と叫ぶか、南無阿弥陀仏!とかそのバージョンまたは短縮して南無!!とか・・
何にせよ、ひとつの単語のなかに複合的な意味や隠喩を秘める「日本語」、一度唱えただけで、神=880万、仏=どれくらいいるんですか??
アレシボ電波望遠鏡(天文台)も驚きの最大出力救難信号発信に違いないと思います・・・
ビクトリア号、ご一緒したかったのに、残念でした。
ネタ大権現であり、かつまたフランス語歴の長いleiraniさんのことだから、この「オエオエー」の歌、もしかしてご存知なんじゃないかなーと思っていたのですが。
ツボにハマっていただけたようで、嬉しいです(^^;
「オエー」はポルトガル語にもあるんですか!
そう言えばサッカーにも「オエーオエオエオエー」がありましたっけね。あれもラテン系起源なのでしょう。たぶんイタリア語かしら?
私にとっての「アホイ!」は・・・「飛ぶ教室」なんです。
でも原文も「アホイ!」だったかどうか・・・ドイツ語ですもんね。
高橋健二さんがそうしただけなのかも・・・・(笑)
ちょっと気になります。
ごめんなさい、見落としてました。
「飛ぶ教室」に出てきてましたっけ? 覚えてない・・・(汗)
でも、チェコ語の「ハロー」が「アホイ」なのですから、ドイツ語にも入っていると思いますよ。
これ以外で、私の人生の中の「アホイ」は思いつかないです(笑)
うー、、ごめんなさい、思い出せません。「飛ぶ教室」、あんまり読んでないもので。。。