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翼のはえた指

副題は『評伝安川加壽子』
私の年代でピアノを習った人には、この名前はおなじみのはず。

著者の青柳いづみこという人は、安川加壽子の弟子である。ピアニストでもありつつ、音楽に関するさまざまな著作をものしているという、こちらはこちらでスゴイ人。その筆致は非常に冷静で、弟子だからといって甘さや感傷に流れることはない。最近、楽な本ばかり読んでいたということもあり、久しぶりに読み応えのある本を読んだと実感した。

外交官の娘として、幼少期をパリで過ごた加壽子は第二次世界大戦の予兆の中、帰国。華々しいデビューを飾る。間もなく結婚。戦後間もなく音楽活動を再開。演奏家として、また、教育者として、日本に西洋音楽の種蒔きをする。低レベルの評論に傷ついたり、少数派の「フランス流」であるがための苦労も相当あったが、、家庭人としても充実した生活を送る。
私なんかに比べたら、人生の密度5倍? 10倍? 
そんな彼女をリューマチが襲う。指が動かなくなり、演奏家としての人生は終わる。
晩年はリューマチの症状が全身を襲い、病魔との壮絶な戦いにあけくれる。

戦前のパリじこみのステージマナー。
当時の日本人にとってはまさしく「妖精」の出現だっただろうな。

そして加壽子の円満な人柄。
ほんとうの意味で育ちが良かったのだろう。

読んでいくうちに、ピアノの先生とのおしゃべりをいろいろ思い出した。
(高校になってからのピアノのレッスンは、半分以上先生とのおしゃべりだったので)
安川加壽子は母語がフランス語。日本語が下手だったから、レッスンの指示は上手でなかった
とか。
「彼女は奏法が違う」ということも聞いた。
日本ではピアノを弾くとき「手を丸くしろ」とばかり言われるけれど、彼女の手は平ら、つまり指を伸ばしている、でも鍵盤を叩く瞬間は指が立っているのだからすごい
とか。

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by foggykaoru | 2012-11-23 11:16 | 伝記・評伝

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