レ・ミゼラブル
2013年 01月 03日
今年のお正月映画のイチオシの評判高いこの作品、観てきました。舞台は10年以上前にロンドンで観たきりなので、細かいことは覚えていません。でも楽曲はよく知っています。
個人的には「なぜ英語なんだ?」という感情があることは否定しませんが、最初にフランスで上演されたときには大して評判にならなかったこの作品を、誰もが楽しめるエンターテインメントとして完成させたのがマッキントッシュという英国人なのだから、文句を言う筋合いではない。むしろありがとうと言いたい。
で、結論から言いますと、
この映画はミュージカルの映画化作品として大傑作だと思います。というのは、私はミュージカルを映画で観ると、たいてい「舞台で観たかったな」と思ってしまうのです。でも、この映画は私にそう思わせなかった。これはすごい。
何よりも、キャストがみんな歌える人だということが素晴らしい。
ミュージカルが映画化されるときは、集客力を考えて、大して歌えない人がメインキャストの中にいることが少なくない。例えば「シカゴ」とか「マンマ・ミーア」など。
アン・ハサウェイの熱唱(泣けました!)はTVスポットでも流れているからおいといて、まずラッセル・クロウがあんなに歌えるなんて。超びっくり。
さらにみんな役者。アップに耐える演技ができる。ラッセル・クロウはジャベールには合わないのではないか(むしろヴァルジャンじゃないか)と思っていたのだけれど、良かったです。
そしてヒュー・ジャックマン。私はジャベール役はむしろ彼じゃないかと思っていたのですが、こちらも歌がうまい。そして何より、ヴァルジャンは怪力の持ち主。そういう意味でも彼にぴったり。(もちろんラッセル・クロウも力持ちに見えるけど、ヒューには負ける。)
マリウス役のエディー・レッドメインも合っているし、歌がうまい。彼のは顔は知っていたのですが、どこで観たのかわからず、調べたら(この映画の公式サイトは役に立たなすぎ。)なんと『ブーリン家の姉妹』でした。
そして、映画ならではの現実的なセットが素晴らしい。
舞台だとここまでリアルにはできない。
いちばんのツボは都市大改造前のパリでした。見せてくれてありがとう!
レ・ミゼ関連の記事
・『レ・ミゼラブル』百六景
・偉大なる日
・映画版『ワン・デイ・モア』に関する一考察(?)←ネタバレ注意
・『民衆の歌』英語版とフランス語版の違い
・『ちびっこ仲間』英語版とフランス語版の違い
ただ、荒れ果てたカフェでマリウスが歌う場面までも、ひたすらリアル。昼間の室内。うーんと思ってしまいました。
舞台だったらここは絶対に暗くするはず。マリウスのみにピンスポ。時折り今は亡き仲間たちの姿が浮かび上がる、、、という演出になるところです。あくまでも想像ですが。
映画でもそういう演出はできるのに。特に「ありし日の仲間たち」の映像を使うのは簡単。
なのにあえてやらなかったのですね。。
ヴァルジャンの死の場面にはファンティーヌが登場します。まああそこは彼女が歌っているということもあり、彼女の姿を出さないわけにはいかない。
ほとんど完璧なこの映画ですが、ケチをつけるとすればラストのラストです。
死んだ人々がヴァルジャンとともによみがえるところ。
明るい日差しのもと、さっきまで死んでた人々がめちゃくちゃ元気な顔で歌う。あれれれ。
舞台だったらもっと荘厳になる。
あの行進曲が半ば葬送行進曲あるいは鎮魂歌のように聞こえる。
でも半ば明日への希望を託した歌にも聞こえる。
そこが「レ・ミゼ」という作品の真髄だと思うだけに、ちょっと残念。
思えば、この場面だけは現実の場面ではない。象徴的に描かれているわけです。
そこを映画的に処理するにはどうするのが正解だったのでしょうか・・・?
もっとネタバレ度の高い、しかもどーでもいー『ワン・デイ・モア』に関する考察はこちら
by foggykaoru | 2013-01-03 21:50 | 観もの・聞きもの | Trackback(8) | Comments(10)

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そうなんです、舞台の映画化はたいてい「舞台で観たかったな」と思わせてしまうんですね。
この作品は「映画は映画でいいじゃん」と思えたのでたいしたものです。

さて、この「レ・ミズ」(英語での省略形は、Les Mizだったと思います)は、私がNYに住んでいた頃からロングランのヒット作ではあったのに、ブロードウエイに見に行きそこなったものなのです。
だから舞台で観てないから、映画に行っても、比較する事での失望はないわけだろうし、行こうかな、と迷っておりました。
で、kaoruさんの評を読んで、是非とも大画面で見に行きたくなりました。
実は、ラジオで流れてきたアン・ハサウエイの歌いっぷりに、ブロードウエイなら主役は無理、声量不足、と聞こえてしまい・・・・
それで腰が重くなってしまいました。
(映画「オペラ座の怪人」のファントムの歌にはガッカリした経験がありますし。)
映画では大掛かりな装置も見ごたえあるだろうし、やはり早めに見に行こうと思います。
ありがとうございました。

いや~15年ほど前の米国映画よりは遥かに荘厳なラストでしたよ
wowowで年末に放送していたのを予習代わりに見てから映画館に行きましたから、その違いを鮮明に認識
なにしろ米国映画では警部が入水自殺して、ジャンバルジャンが「私は自由になれたんだ」と歓喜して終わりだったんですから
しかも、目の前で飛び込んだ(たいした高さじゃありません。せいぜい数メートル)のに助けようともしないんです。
何かの象徴かもしれませんが、苦難の中でも思いやり(愛)を忘れぬ者こそ神の意思の体現者だという原作のテーマを無視しているような気がしました。
おそらく、アメリカ人好みの「ハッピーエンド」と赤嫌いが噛み合わさった結果なんでしょうが…
やたらリアルな下水道以外は感嘆した素敵な映画だというのが私の個人的感想です
映画版ファントムは確かに力不足でしたね。クリスティーヌはよかったのに。
レミゼは楽曲を知っているほうが楽しめるけれど、知らなくても楽しめると思います。
ただ、前もって知らないと観終わって口ずさめる歌はあまり無いです。難曲が多いので。
えっ、、、そんなところで終わってしまうなんて(絶句)
そこで喜ぶって? 銀の燭台の教えはどうしたの?!
この作品はもとのミュージカルが素晴らしいのです。
原作の精神性をしっかり生かしている・・・と思います。なにしろ原作読むのは挫折しちゃったもので(苦笑)
下水道はすごかったですね。
大怪我したマリウス、あんな汚い中でよく助かったと思いました。
とにかく皆歌が抜群に上手くて素晴らしかったです。

むむ。なんとなくオフラインのオトモダチのような気がいたします。
この映画は小説「レ・ミゼラブル」の映画化作品なのではなく、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の映画化作品なのですよね。
全部歌なんて変!とか、とか言われると、もうどうしようもありません。
あと、「はしょりすぎ」とか言われても。
原作を忠実に映画化したら、10時間になるはず。
そんな文句を言うのだったら観るなと言いたい。