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明暗

そうです、夏目漱石の『明暗』です。

漱石の作品は中学生の頃『坊ちゃん』を完読、『吾輩は猫である』はけっこう面白かったけれど飽きて上巻でギブアップ、高校のときに教科書で『こころ』の抜粋を読んだけど、本は自分自身のツテで選びたいし、教科書に載っている小説を読むなどという優等生的趣味は持ち合わせていないので、授業だけで済まし、大学生になってから『三四郎』を読んでみたらこれはいたく気に入ったのですが、しばらくたって『行人』を読んでうんざりし、ギブアップすると同時に「漱石は若者が読むべきではない、四十過ぎるまでは読まないことにしよう」と思い定めて幾星霜。
少年老い易くと言われるように、はっと思ったら四十をはるかに超えていまして。
でも、若いときに想像していたようには老成した気分にならないので、手を出さずに今に至る。

あっ、そうだ! 友人の勧めで『虞美人草』を読んだっけ。

今回これを手にとったのは、水村さんの『続・明暗』を読みたかったからです。

漱石なので例によって、たっくさん注がついていますが、文豪の作品を真面目に読み解こうなんて気負わずに、「たかが新聞小説なんだから」と気楽に読みました。

で。

気楽に読んでいいのだと思いました。
有川浩並みに。はい。
漱石は明治の有川浩です。え、暴言ですか? (有川浩は平成の漱石だとは言ってませんよ。)

でも

ものすごく面白いというほどでもないぞ。
ただ、まさにこれからというところで終わってしまっている。
当時の読者の「ええーっ、こんなところで死なないでよ~!!!>漱石さん」という悲鳴が聞こえてくるようです。
この続きを書こうと思う人がいても不思議は無い。

で。

『行人』も同じなのだけれど、主人公があまりにも良い御身分なので白けます。
贅沢こそできないけれど、とりあえず何もしないでも食べていける。
読んでると「なんだこいつ、いい気なもんだな」と思ってしまう。だから夢中になれない。

今回の発見。
ジェーン・オースティンの作品に似てます。
漱石は英文学者なのだから、当然、彼女の著作には親しんでいたのでしょう。
ただ、ジェーン・オースティンのは主人公の女性が幸せな結婚をする話。ハッピーエンド。
それに対してこの作品は、結婚したのにいまひとつ幸せでないカップルの話。アンハッピーエンドの予感。
さらに、ジェーン・オースティンだったら、主人公の女性は内面的な魅力がある。
でも、この作品の主人公は・・・ はっきり言って嫌味。その妻も。
っていうか、魅力的な人が出てこないんですけど。

と文句ばかり言ってますが、これでいつでも『続・明暗』を読むことができるようになったので、とりあえずオッケーです。

by foggykaoru | 2013-07-17 20:14 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)

Commented by ゆきみ at 2013-07-18 08:01
お久しぶりです。
夏目漱石、好きです。文庫で読める分はとりあえず読みました。
いわゆる高等遊民って、目の前にいたらイラッとするかもしれませんが、小説の中ならなかなか面白いと思います。生活に縛られない人の、雲の上の??悩み。
そもそも私が夏目漱石にはまったのは、「それから」が気に入ったからですし、「源氏物語」では、チョーお坊ちゃまの匂の宮が好きです。
「続・明暗」も読みましたので、foggyさんの感想を楽しみに待っています!!
Commented by foggykaoru at 2013-07-18 22:32
ゆきみさん。
>いわゆる高等遊民って、目の前にいたらイラッとするかもしれませんが、小説の中ならなかなか面白いと思います。生活に縛られない人の、雲の上の??悩み。

うーん。
目の前にいたことがないからわからないけれど、小説の中でその心中をこまごま書かれるとイラッとするような気がするんですが。

私はいつになっても源氏物語のことは語れるようにはなりそうもないです(苦笑)
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