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空白の五マイル

著者の角幡唯介氏は高野さんの後輩。早稲田の探検部出身である。そもそも彼の名前を知ったのは高野さんの「辺境中毒!」に収録されている対談の相手としてである。
今年、彼の『アグルーカの行方』が高野さんの『ソマリランド』とともに講談社ノンフィクション賞を受賞したというので、まずはデビュー作のこちらから読むことにした。

チベットの奥地にあるツアンボー峡谷は、長年、冒険野郎たちの心をそそってきたが、その険しさから、いまだに踏破した人は出ていない。まだ「空白の五マイル」が残っている。その五マイルを踏破するぞ!と思い定めた角幡さんの奮闘記である。

すごい。これぞ探検、冒険。
いくつ命があっても足りないとはこのことだ。
しかも元新聞記者。読ませる文章である。

単行本は2010年刊行。
いくつもの賞を受賞しているが、これだけハードでまっとうな探検記なら当然のこと。
「まっとう」というのは、高野さんの探検はまっとうではない、ということが、この本を読んでつくづくわかってしまったのである。
ハードはハードなんだけどね。たとえば『アヘン王国』とか『西南シルクロード』とか。でも、まっとうではない。だから高野さんは長いこと日の目を見なかったんだな。

私は高野さんの本のほうがタイプです。
というのは、高野さんの探索の対象が「人間」だから。
厳しい大自然も悪くないけれど、私は自然そのものよりも、自然と人間との関わりのほうに興味があるのです。

若いときに何かを読んで、「そこに行きたい」と思う気持ちはとてもよくわかります。
子供時代に本を読んだことがきっかけで、「死ぬまでに絶対に行こう」と思いさだめた土地が、(飛行機には乗るけれど)電車を乗り継いで行けるところでほんとうによかった(苦笑)

この本に関する情報はこちら

by foggykaoru | 2013-11-16 19:09 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(6)

Commented by むっつり at 2013-11-16 22:46
あの方は酒と麻薬漬けですから
冷静に考えたらアウトローです
でも読ませるのは、求めているのは秘境でもなければ珍獣でもなければ。世界の人ですからよね
強欲な海賊にさえ人間を見出す人と言うだけで大物
私なら逃げ出す事だけしか考えられません
Commented by foggykaoru at 2013-11-17 09:21
むっつりさん。
まあ、作家というのは一種のアウトローかも・・・
アウトローを日本語に訳すと「無法者」ですね。あ、これはどうでもいいランサムネタでした(苦笑)

>逃げ出す
いいえいいえ、ふつうだったら逃げ出すどころか、はなから行きませんてば。
Commented by ケルン at 2013-11-18 12:44
『アグルーカの行方』は半年ほど前に読みました。私も、つくづく「読ませる」分を書く人だな、と思いました。このチベットのほうは未読ですが、この人の本ならグレードは高いだろうと思っているので、いずれ読むつもり。
Commented by foggykaoru at 2013-11-19 20:15
ケルンさん。
高野さんいわく、「探検部員は文章を書く訓練を積んでいる」のだそうで。
Commented by むっつり at 2013-11-20 22:28
昔、読んだ本で船火事になり二艘のセーリングボートで脱出しますが一艘は海賊船に救助されましたからね。(もう一艘は廟しかない小島に漂着)
行くつもりはなくても可能性はあるかも?
Commented by foggykaoru at 2013-11-21 20:39
むっつりさん。
うーん。
そもそも、船旅に出ないんじゃないでしょうか。普通。
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