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行かずに死ねるか!

石田ゆうすけ著。副題は「世界9万5000km自転車ひとり旅」
「お前は馬鹿だ」と言われながら脱サラして、7年半かけて自転車で世界一周した記録です。
私はあまり他の人の旅行記は読まないのだけれど、自分が絶対しない旅、できない旅をやった人の本は好んで読みます。高野秀行氏の本とかね。

ひと言で言えば
爽やかです。

7年半を文庫本1冊にまとめてあるので、まさに旅のエッセンス。そぎ落とすのが大変だったとあとがきにある。そりゃそうでしょう。だからこっちは退屈せずに読めるのだけれど。

「お前は馬鹿だ」と言われても、安定した生活を捨てたという点で、高野さんと共通している。高野さんは捨てたというより、最初から背を向けたんだけど。
「馬鹿だと言われてもあきらめきれずにやってしまう」若者は、世の中にある程度はいたほうがいいんじゃないかと思う。それも国の活気の一要素なのだ。でも、もう我が国にはあまりいないんではないか。そもそも若者自体が少ない、ということもあるし、なによりも就職が大変すぎる。やっとの思いで就職したら、もう怖くてやめられないんじゃないのでは・・・? 精神的にも疲弊してしまって、もう旅どころじゃなくなってるのでは。 

7年半も旅してたら、いろいろな出会いがある。
命からがらの目にも遭う。
そしてやりきった果てに待つのは充足感ではない。(充足感もあるだろうけれど)もっと複雑な感情。
「帰ってくる」のだから、最後は既視感いっぱいの世界なのである。
もしも世界の果てに行きっきりだったら、どういうことになるのだろうか・・・なんてことを考えていてイメージするのが、アスランの国に行くリーピチープだったりし、やっぱり何事も基本は「行きて帰りし物語」なんだな、なんて思ってしまう自分自身に苦笑してしまうワタクシでありました。

タイトルの「行かずに死ねるか!」は、あくまでも出発前の気持ち。
旅しているうちにどんどん気持ちが変化していくので、読み終わってみると、このタイトルはかなりずれてしまっています。


この本に関する情報はこちら

著者石田ゆうすけ氏のブログはこちら

by foggykaoru | 2014-03-13 21:45 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(2)

Commented by むっつり at 2014-03-13 23:14 x
浦島太郎のように故郷に帰っても未知のモノが有る訳でもなく、安堵感よりがっかりが覆い尽くしたのだとしたら、日本より著者の成長が上回っていたという事になりますよね。
別格の人物かも?
Commented by foggykaoru at 2014-03-14 21:14
むっつりさん。
だってだって・・・
大げさに言えば「命をかけた旅」が終わってしまうんですよ。
胸中に去来するのは安堵感がメインではない、というのは私にはすごくよくわかる気がするんですが。
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