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地雷を踏んだらサヨウナラ

著者・一之瀬泰造という人はフリーカメラマン。
72年からインドシナ、特にカンボジアを舞台として活躍し、73年に共産軍に占拠されたアンコール・ワットに単独潜入、消息を絶ち、82年に死亡を確認されたのだそうだ。

こういう本はアンコール・ワットに行く前に読むべき?
でも、行った後だからこそ、登場するになじみがあり、現在の姿を知っているだけに、興味深く読めた。
今でこそアンコール・ワットは何の心配もせずに観光できるけれど、内乱後しばらくの間は、大雨が降ると埋められた地雷が流れだしたりしていたそうで。
今だってちょっと離れた遺跡に行く場合、「周囲に地雷が残っているから、道路からはずれてはいけない」なんてことがガイドブックに書かれているのです。

で、この本ですが、
彼の日記と両親や知人にあてた手紙で構成されている。
同じ時期に違う相手に書いた手紙も多いので、同じことの繰り返しがわりと多い。でも、繰り返しのおかげで、彼の熱い思いがかえって強く伝わってくる。

この本の宣伝コピーを私が書くなら
「青雲の志を抱いて海外雄飛した若者が、戦場で駆け抜けた青春」
手垢がついた表現の羅列ですが、本当にそういう感じです。


この本を読んだオバさんとして、私が若者へ送るアドバイスは以下のとおり。←誰もアドバイスしてくれなんて頼んでないって(苦笑)

「一旗揚げたい」と思うのは若者の特権です。
もしも海外で何かやりたいのなら、どうぞどんどんお行きなさい。
失敗しても死にはしないです、たぶん。(戦場カメラマンのような、命を張る仕事の場合はおいといて)
やりたいのにあきらめるのは、人生がもったいない。

そのために、日本で準備できることは、なるべく準備しておいたほうがいい。
一之瀬氏だって、カメラマンなんだから写真で勝負!と言いたいところだけれど、それだけではダメだった。
外国人同業者に「英語を勉強しろ」としょっちゅう言われた。高野秀行さんだったら行く前に現地の言葉も勉強していくよ。
あと、カメラマンは自分の写真に記事を付けなければならないこともある。文章力もあったほうがいい。
一之瀬氏にとって、日本への手紙を書くことが文章修業になったらしいけれど、巻末の「未発表記事」はいまひとつ読みにくい。もっとキャリアを積めばもっと文章力がついただろうと思うと切ない。



そして、
一之瀬氏だけではなく、
一之瀬氏と交流があった現地の人々の多くもまた、きっとポル・ポトによって虐殺されてしまっただろうと思うと、また切ない気持ちになる。



この本に関する情報はこちら
あら、映画化されていたんですね。知らなかった。。。

by foggykaoru | 2014-03-21 09:27 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(4)

Commented by むっつり at 2014-03-21 18:38 x
たしかキャパが地雷により「戦死」したはず…
戦後の地雷は信管がカウンター式になっていて、三回目に踏まれたときに爆発とか悪質になっていますから(大戦中に開発された戦車の前にローラーを取り付けて爆破処理する方法を無効化する為)、本当に危ないんですよね
しかも三回目なんて言うのは機械式カウンターで、中国製のなら電子式もあるので数百回後と言うのも有るそうです(電力は踏まれた圧力で発電)
Commented by foggykaoru at 2014-03-21 22:10
むっつりさん。
一之瀬氏は地雷で亡くなったわけではなく、クメール・ルージュに処刑されたらしいです。
この本の題名は彼の手紙の中の文章に由来しています。
「アンコールワットを撮れたら死んでもいい。地雷を踏んだらサヨウナラ」という。

地雷というのはほんとうに非人道的な武器だそうですね。
殺さずに、残りの人生を台無しにするという。
Commented by ふるき at 2014-03-23 00:28 x
98年にボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボに行った時、郊外の公園に行こうと思って、民宿案内所の人に訊いたら、足で何かを踏む仕草をして駄目だと。地雷があったようです。街中でもアスファルトやコンクリートの場所や土でも人が沢山歩いているを除いては、歩かないようにしていました。 
Commented by foggykaoru at 2014-03-23 08:22
ふるきさん。
旧ユーゴは地雷がけっこう使われたみたいですね。
確か、ドブロブニクの廃墟になったロープウェイの駅に歩いて登る場合、地雷があるかもしれないから、道路をはずれてはいけないとガイドブックに書いてあったような。
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