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山内進著「北の十字軍---『ヨーロッパ』の北方拡大」(講談社)

普通の十字軍の本をろくすっぽ読んだことがないのに、こっちは読んであるというのは、なんとも妙なことです。


山内進著「北の十字軍---『ヨーロッパ』の北方拡大」(講談社)_c0025724_2117067.jpg「テンプル騎士団の謎」を読んだとき、シトー派のベルナールの名前が出てきて、旧知の人に再会した気がしたのです。

清貧を貫いたベルナール。
シトー派の教会や修道院は、彼の思想を体現していて、一切の装飾が排除されています。彼は偉大なる聖人なのです。
と言えば聞こえがいいのですが、ほんとうにそうなのでしょうか?
(左は世界遺産であるフォントネー修道院。フランスのシトー派修道院の代表格です。ほんとになあんにも装飾がありません)

彼の信仰の篤さに異議を唱える資格など、キリスト教のことをろくに知らない私にあるはずがありません。でも、弁舌に長けた彼が後押しをしなかったら、フランク人だってあんなに大挙して十字軍にでかけたりはしなかったかもしれないと思うと、「コンチクショー」と思わずにいられないのです。

敵方である(というより、敵方にされてしまった)異教徒にとっては、彼はA級戦犯です。

十字軍というと、エルサレム奪還の十字軍が有名ですが、十字軍はまだ他にもある。
それが「北方十字軍」です。

聖ベルナールはこちらも声高に後押ししてます。そして、その思想の影響はとどまるところを知らず、新大陸発見後のヨーロッパ人の基本理念ともなり、それがひいては列強の帝国主義にもつながっていくのです。

聖ベルナール、ほんとにひどいやっちゃ。
ちなみに、聖ベルナールはSaint Bernard(サン・ベルナール)
英語ではセント・バーナード。
聖ベルナールがいくら嫌な奴でも、雪山で遭難した人を助けるワンちゃんたちを白い目で見てはいけません。。。(苦笑)

バルト3国のうちの2国(エストニアとリトアニア)の旅にでかけることになったときに、この地域の歴史がてっとり早くわかる本はないかと探しまわり、図書館で見つけたのがこれでした。
イギリスやフランスやイタリアあたりだったら、気軽に読めて中身のある歴史本はいくらでもあるのですが、こういう国々の歴史をそこそこ面白く、わかりやすく書いた本は非常に少ないのです。

西洋史好きな人と、東欧(特にバルト3国とポーランド。厳密には東欧北部、と言うべきかも)に関心がある人にお薦め。


この本の詳しい情報はこちら

by foggykaoru | 2005-07-14 21:19 | 過去に読んだお薦め本 | Trackback(1) | Comments(4)

Tracked from 障害報告@webry at 2010-04-20 00:32
タイトル : ここは酷い北方十字軍ですね
北の十字軍 (講談社選書メチエ)講談社 山内 進 ユーザレビュー:倫理的にどうかと思う ...西欧拡大思考の根拠が ...Amazonアソシエイト by 異教徒との戦いのために作られたドイツ騎士修道会とかあの辺の騎士団なんだが 異教徒は人権ないから何してもおk、という発想の元で 異教徒の土地切り取り放題略奪し放題の手がつけられない国家となってしまった あげくに、異教徒の国がキリスト教に改宗するから勘弁してくれ、といっても 改宗は偽りだと決めつけて侵略軍の準備を始めてしまう次第で...... more
Commented by fendi_jp at 2005-07-15 18:36
「セント・バーナード」という文字を見て「バーナード・ヒル」が浮かんでしまったあたり、私も重症ですね…。
より良い作品シリーズ、面白かったです(笑)
「『持ってたイメージとずれてて悲しい!』ってこう言う気持ちだったのね?」という経験を、つい最近したので、かおるさんの気持ちが良く分かりました(笑)
先にイメージがなければ結構スルー出来るんですけどね。
さて、事後報告なのですが、こちらのブログ、リンク取らせて頂きました。
不都合ありましたら外しますので、遠慮なく仰ってくださいませ。
では失礼します。
Commented by foggykaoru at 2005-07-15 21:02
フェンディさん。
だから言ったじゃないですか、フェンディさんは正真正銘の幽鬼なんですよ(爆)
>「『持ってたイメージとずれてて悲しい!』ってこう言う気持ちだったのね?」という経験を、つい最近したので
えっ、なになに? 何の映画でそんなことを?
原作がある映画ですか? 宇宙戦争?(笑)

「RotKをより良い作品に」シリーズ、アラゴルン関係は終わったけれど、まだ大物が残ってるんです。しつこくてごめん。なにしろRotKはあちこちいろいろあるもんで。

リンクありがとうございます。これからもどうぞ宜しく♪
Commented by Elarran at 2005-07-17 16:05 x
こんにちは、かおるさん。
LOTRを面白くする為の奮戦記・・・草葉の陰から
見守らせて頂いてます(T_T)しくしく
清貧・・・てなんでしょうね。
特に宗教を信仰も研究もしていない私が
何も言えることはないのですが。
キリスト教のおったまげ!な大聖堂には
建築スキには堪えられませんが、冷静に考えれば
搾取と強奪の集大成・・・高いドォモに怨嗟の声が
聞こえるような・・・いえいえいえいえ!!!
壮麗であればあるほど人は神の国に近づいた
気がしたのでしょうか。あるいは神の御心にかなった
救いの手が届きやすくなった・・・・う~ん(~_~;)
装飾がなくともこの立派な寺院の建築に
一粒の血も流されなかった訳は
あるまい、異教徒ではなく・・・と思いました。
怖いっす、キリストが説こうとしていた事、
他の人の解釈や意見は挟まずに本当に本人から
聞きたい・・・と十字軍の話やら大聖堂を見ると
思うのです。あぁうまく言えませんが。
Commented by foggykaoru at 2005-07-18 19:18
Elfarranさん。
一応記事には「清貧」と書いたけど、ほんとうかなあと思ってます。
アッシジの聖フランシスコは間違いなく清貧だったけど、ベルナールは怪しい。彼は「清貧を説く」のが上手だったんじゃないかな。あくまでも私の想像ですが。
でも、ベルナールの息がかかった修道会は清貧です。個々の修道士レベルはね。会はものすごいお金持ちだったけど。
どこの宗教も「おったまげ!」なものを作るものなので、キリスト教だけが特別だとは思わないですが、少なくとも、イエスが目指したものと、今のキリスト教会のあり方が、「完全に一致している」ということはありえないと思うんです。
大きな組織になり、それを存続させるために、いろんな手が加えられたに違いない。一番大切な教義にもね。たぶん。
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