マリー・ルイーゼ
2015年 04月 30日
著者は塚本哲也という人。
世継ぎが欲しくてたまらなかったナポレオンが、年上の女房ジョゼフィーヌと無理矢理離婚して、ハプスブルク家の皇女をもらい、思惑通り息子が生まれたはいいけれど、そのあたりから運勢がどんどん下り坂になってしまった、、、という話は知っていた。
彼の息子がハプスブルク家に引き取られ、ライヒシュタット公と呼ばれたが、結核に侵され若死にした、ということも知っていた。確かこの本でライヒシュタット公の肖像画を見たんじゃなかったかな。なかなかの美形だった。
マリー・ルイーゼはナポレオンに対して薄情だった、と言われているのだけれど、この本は彼女にかなり同情的である。
蛇蝎のごとく嫌っていたナポレオンが、実際に会ってみたらとても魅力的だったから、彼女の気持ちも変わり、夫婦は仲睦まじかった、とか。
ナポレオンが落ち目になってウィーンに帰ったのは、父親の命令だからしかたなかったのだ、第一ナポレオンからの連絡も途絶えがちだったのだから、とか。
まあそういうことなんでしょう。
ナポレオンはきっと魅力的な人間だったんだろうし、十代で嫁に行かされた「もと深窓の令嬢」が、ほんの数年で亭主が没落してしまったら、亭主についていくよりも、父親の言うことを聞いて当然。
後半は息子であるライヒシュタット公とか、パルマが生んだ大作曲家ヴェルディとか、本題とはずれた話題が多いのだけれど、それぞれが興味深いので、文句は無い。
キャラ的にあまり強くないマリー・ルイーゼのことだけではネタ切れする、ということだろう。
まあ強いて文句を言うとしたら、タイトルを「マリー・ルイーゼの時代」とかにするべきだった、ということになろう。
そういえば、
スロベニアではナポレオンは救国の英雄だったんだっけ
などということを思い出しました。
ハプスブルク家の支配から、ほんのいっときだけれど、解放してくれたから。
スロベニアの首都リュブリャーナにはこんなものがあるんです。
ナポレオンのロシア遠征の下りは、直前に読んだ「ロシアについて」とかぶるところがあり、なかなかツボでした。
西洋近代史が好きな人にお薦めします。
ただし、文章がちょっと。推敲が足りない。
語句の順番を変えたほうがわかりやすいのにと思われる文がちらほら。
著者の塚本氏はもと新聞記者だというのに、どうして推敲しなかったんだろう?と思ったが、この本を書いたとき、氏は高齢でかなり身体が弱っていて、慣れないワープロでの執筆にかなり苦労したらしい。だから直しきれなかったのかも。
この本に関する情報はこちら
by foggykaoru | 2015-04-30 22:02 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(2)
自然に「人たらし」が出来ないと権力を簒奪出来ませんから
それにしても、王族って日本の公家もそうですが、世の中の流れを見る目だけは有りますよね
そうそう、人たらし。ナポレオンもそういう感じだったみたい。
一族郎党意識の強いコルシカ出身の彼としては、ハプスブルク家から嫁さんをもらえば、その実家と戦争するなんてこともないだろうと思いこんでいたらしいです。