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不可触民

副題は「もうひとつのインド」
著者の山際素男は「マハーラーバタ」の翻訳で賞を受賞した人だそうだ。

不可触民(不可触賎民という言い方のほうが普通?)の実態に迫ったリポート。

以前、「女盗賊プーラン」を読んだときのショックほどではないけれど、やっぱり衝撃的。
すさまじいです。
他人様の信仰についてどうこう言うべきではないのでしょうが、ヒンズー教、カーストというのは問題だと思います。(バリ島もヒンズー教だけど、あそこはちょっと違う。かなりユルイ。なにしろ牛肉も食べちゃうんだそうで)
言うなれば、インドという国は、国をあげて「いじめ」を黙認、奨励しているようなもんです。

なんだかんだ言って、「愛の宗教」を自称するキリスト教は悪くない。
キリスト教にだって負の歴史は山ほどあるけど、「お前たちにはマグダラのマリアをさげすむ資格はない」とか言ったイエス様はかなり偉い。

昔、何かで読んだけど、日本にキリスト教の宣教師がやってきたとき、日本の民は自らの手を汚して働く宣教師の姿を見て、「この人は偉い」と評価した。
でも、インドで同じことをしたら、全く尊敬されなかった。
インドの人々は「あんなことは下位のカーストがやること。自分でやるなんてどうかしてる」と思ったので、とても布教しにくかったんだそうで。
確か、ザビエルってインドで死んだのですよね。きっと失意の中で。

ガンジーなんかダメ、だそうです。
彼は不可触民のことを「ハリジャン=神の子」と呼んだそうですが、それは「おためごかし」である、と、一部の目覚めた不可触民は口をそろえる。

不可触民の中には、イスラム教や仏教に改宗する人が少なくない。(その結果、イスラム教徒や仏教徒がさげすまれることがある。)
だから、パキスタンが分離独立したのは、イスラムだから、というよりも、カースト社会から脱却するためだったという側面があるのだそうです。

インドを個人旅行していて、いろいろ被害に遭う女性の話をちょくちょく聞きますが、「虫けらのように扱ってもかまわない人間」の存在を当たり前とする環境に育ったら、たまたま出会った異国の女性をどうしたってかまわない、という気分になりやすいはず。

インドって今、経済成長著しいそうで。
中国の経済成長にかげりが見え始めた今、これから投資するならインドだ、とか言われます。
でもインド国民の4分の1が不可触民なんですって。
数億の人々が常に飢えていて、農奴、あるいは家畜同様の扱いを受けている国。
もしかしたら、家畜以下かも。なにしろ死んだって惜しくないんだから。
そういう国が経済成長するって、何なのかなあ。

この本に関する情報はこちら


ついでに「女盗賊プーラン」に関する情報はこちら

by foggykaoru | 2015-06-18 21:51 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(4)

Commented by むっつり at 2015-06-20 07:07 x
日本の派遣法もそうですが、人間を使い捨てにしての経済成長が一番手っ取り早いですよね
膨大な人口とは捨て駒の数というのが投資家の観方

生まれで生涯が決定する社会の成長なんて過去のしがらみに潰されるだけなんですけれど、ね
Commented by naru at 2015-06-21 01:01 x
カースト制度のことは、聞いてはいたけれど、
まさかそこまでひどいとは。

インフラが劣悪なのは、ニューデリー駐在経験のある友人から聞き知ってはいました。
(度々おこる停電で、絶対やってはいけないのは、冷蔵庫を開ける事、だそうで。
開けると中の温度が上がってしまうからなのですが、
室内の暑さに耐えられず、冷蔵庫あのドアを開けて
頭を突っ込んだことがある、と言ってましたね。)
Commented by foggykaoru at 2015-06-21 21:22
むっつりさん。
>膨大な人口とは捨て駒の数というのが投資家の観方
そうなんでしょうねえ。
でも、そういうことでしかものを考えないというのも、なんともうすら寒いです。
Commented by foggykaoru at 2015-06-21 21:23
naruさん。
この本または「女盗賊プーラン」をお読みになることをお薦めします。
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