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ミツコと七人の子供たち

著者はシュミット村木眞寿美という人。
「ミツコ」とはクーデンホーフ光子。
ハプスブルク家が君臨する落日のオーストリアの貴族に嫁いだ、あの人のことです。

なかなか興味深いです。
外交官クーデンホーフ伯爵の妻となった経緯、オーストリアに渡ってからの生活。
そして、早すぎる(そして謎の残る)夫の死。
さらに、この本の大きなポイントは、タイトルにあるとおり、「7人の子供たち」。
ハプスブルク家の時代が終わり、ナチス・ドイツが入ってくると、彼らの人生は大きく翻弄されます。
伯爵の子女がそんなことに・・・

「民族自決主義」を唱えたアメリカのウィルソン大統領が、ヨーロッパの実情を全然わかっていなかったということもよくわかります。
要するに、「この線からこっちがなに人、あっちがなに人」ということではなかったのに、線を引っ張ったから、それまではなかった諍いが生まれ、悲劇に至ることもあった、ということです。
旧ユーゴ解体のときもそういうことがあったと聞きます。宗教が異なる人々が平和に暮らしていた村だったのに、一方が一方を排斥する形になってしまった、というような。

ネタばれしたくないので詳しくは書きません。

光子という人は、その当時の日本女性の常として、「学」はなかった。
でも、決しておバカだったわけではなく、けっこう学習能力は高かったようです。
でも学習意欲は夫の死とともについえてしまう。
一方、彼女の子供たちは、インテリだった父親の血を引いているし、学問をする環境に恵まれていたから、深く思索する力もあった。
でも彼女には、そこまでの能力は無かった。
母子の関係はぎくしゃくせざるを得なかった。

というわけで、晩年はあまり幸せではなかった。

彼女の息子が「パン・ヨーロッパ」を提唱し、それがずっとあとになって欧州連合という実を結んだ、と言われますが、英国がEU離脱を決めた今、この本を読んで、愁いみたいなものを感じてしまいました。



by foggykaoru | 2017-01-20 20:16 | 伝記・評伝 | Trackback | Comments(0)

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