椎名誠の旅もの。
彼の旅は多くの場合、テレビ等の企画がらみだが、これもそのひとつ。
江戸時代にアラスカに漂着し、ユーラシア大陸に戻ってからロシアを横断し、エカテリーナ女帝に謁見したあげく、やっとの思いで帰国を果たした大黒屋光太夫の足跡をたどる。
椎名誠の本はお気楽路線であるが、この本はちょっと真面目。
なにしろ旅がつらい。
凄まじい風の吹きすさぶアラスカの離島。
そして、今のロシアじゃなくて、ソ連。
ゴルバチョフ時代なのだから、それ以前よりはマシなのだろうけれど、今のシベリアと比べると、非常に敷居の高いソ連。
そこに、極寒の時期に滞在する。
なにしろ光太夫の体験にならわなければならないのだから。
シベリア鉄道の北に、第二シベリア鉄道と呼ばれる鉄道が走っていることは知っていた。(シベリア旅行のとき、そちらに行く列車を見た)
その沿線は永久凍土地帯なのだけれど、、、
いやーーーー
人間が住むところじゃないよ。
行っちゃったはいいものの、飛行機が飛ばなくていつ戻れるかわからない、それもサービス不在のソ連で。
という苦労をしたあとで訪れるイルクーツクが、ほんっとに鄙にもまれないいところだということがよくわかる。
椎名さんたちテレビクルーは、そののち、夏にもソ連を訪れるけれど、なんと冬のほうがいいんですと。氷に閉ざされて美しいから。
なにしろ古い話だから、どなたにもお薦め、とは言わない。
私には非常に面白かった。シベリア鉄道の旅をして、そこそこ土地柄を知っていることが大きい。
というわけで、あの旅に誘ってくれた友人には、自信を持って強くお薦めしたい。