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犬が星見た ロシア旅行

武田百合子の旅日記。
ダンナである泰淳のエッセイに描かれる彼女に興味を惹かれたので、彼女の有名な「富士日記」でも読んでみようかと思っていたのだが、たまたま図書館でこの本を見つけてしまったので。

昭和50年ころのロシア(正確にはソ連)旅行。
泰淳に「旅行に連れていってやるから日記を書け」と言われて書いたんだそうな。
若干、言葉遣いの粗さが見受けられるけれど、読ませる文章です。

今は昔ということが多い。トイレとか、今のロシアは全然マシだし。
旅情報としては役立たない(けれど、そもそもそんなものを必要とする人はこの本を読まないだろう)、けれど、読み物として面白い。
結局、彼女のキャラが面白いのです。まさに炸裂してます。
そして、1か月近くの長旅とは言え、1回の旅でで文庫本1冊分の文章を書けるのはすごいなあと、旅行記を書く身としては感嘆しました。
観光名所の説明なんかほとんどない。
でも切り取り方がうまいんです。
たまたま出会った人、たまたま見た光景を詳しく書いている。それが面白い。

旅行記がずっと読み継がれるかどうかということは、そこにかかっているのだろう。


ハバロフスクから入り、西に進み、ウズベキスタンの後、グルジア(今のジョージア)に入ったとたん、食生活が目に見えてよくなるのが印象的。

去年、私たちの旅の最後は、モスクワのデパート内の高級ジョージアレストランでのディナーでした。
引率者のふゆきが「ジョージア料理なら美味しい」と太鼓判を押すので。

ジョージア、行きたいなあ。

旅の最後は北欧(ストックホルムとコペンハーゲン)なんだけど、ここでの料理は洗練はされているけれど、ごく簡素なカナッペになってしまう。

一緒の便でストックホルムに行ったモスクワ特派員夫妻が「ソ連からこっちに来るとほっとする」的なコメントを言うが、百合子本人は西欧社会に物足りなさみたいなものを感じたようだ。
わかるような気もする。

でも、私はやっぱりモスクワ特派員の側だな。



by foggykaoru | 2017-12-28 20:34 | エッセイ | Trackback | Comments(0)

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