ダン・ブラウン著「ダ・ヴィンチ・コード」(角川書店)
2005年 12月 05日
なかなか図書館の順番が来ないので、友人に借りてようやく読みました。えっ、自分で買えって?(爆)
私は西洋史ネタに興味を抱いて読んだので、無理矢理「西洋史」カテゴリーに分類します。でも、これは「エンターテインメント小説」というほうが当たっているでしょう。
パリのルーブル美術館で起きた奇妙な殺人事件に端を発し、驚くべき物語が展開していきます。特に上巻はよくできてます。パリに行って、いろんなスポットを確認してみたくなりました。
で、「面白い!下巻も貸して」と友人に言ったところ、彼女ったら醒めた目をして「・・・そーお? でも、尻すぼみなのよ」と、水をぶっかけるようなことを言うではありませんか。彼女だけならともかく、もう1人の友人も同じようなことを言うのです。
そこで、下巻は、「そんなに期待しちゃいけないぞ」と自分に言い聞かせながら読みました。
そうしたら、さほどがっかりせずに済みました(苦笑)
なまじっかキリスト教とか、西洋史に詳しくないほうが、良い意味で衝撃を受けることができるかもしれません。
特に映画「最後の誘惑」を観た人にとって、最後の落としどころはさほど目新しくないはず。
私の非常に個人的なツボは、著者の言語に対する態度でした。
これはイギリス人がイギリス人を始めとする英語圏の人々を対象に書いた小説です。
だから、ヨーロッパの数千年の歴史に関わる謎解きのポイントとなるのが、英語の判じ物が中心なのです。英語でないと、英語圏の読者の興味を引きにくいから。(また、イギリス人である著者にとって、英語以外の言語の判じ物を作り上げるのは無理だったのだろう、という意地悪な見方もできます)
英語というのは、今でこそ大きな顔をしてますが、長いことヨーロッパの端っこのマイナーな地域の、言っちゃあ悪いけど、田舎臭い言語だった。
だから、数千年の歴史をひっくり返すような昔の判じ物が、英語ばかりなのはかなり不自然。
著者はその点を気にして、「なぜこれが英語で書かれているのか」という理由付けを一生懸命してます。多少苦し紛れの感はあるけれど、その一生懸命さがカワイイかも(笑)
また、この物語の女主人公は、英語が堪能なフランス人。なぜそんなに英語が上手なのかということも、きちんと説明してあります。
これは、英語圏以外のヨーロッパ人に、真実味のある物語として受け止めてもらえるかどうかという点に関して、かなり重要な要素なのではないでしょうか。フランス人を始めとするヨーロッパ大陸の人々に受け入れてもらうためには、つまり、本を売るためには、こういう配慮が不可欠なのだろうなと思います。
結局、この本を読んだ最大の収穫は、シラス役のポール・ベタニーを観るのがますます楽しみになったということ。彼がどんな怪物的な演技を見せてくれるのか、注目したいです。
パリでロケしたシーンを観るのも楽しみ♪
この本に関する情報はこちら
by foggykaoru | 2005-12-05 20:10 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(16)

わかるけど、でも、あまり嫌いになれなくなってしまいます。あの役は、ひたすらイヤなイメージなのに。
現在は、英語は世界の共通語(のひとつ)として、大きな存在ですよね。
同じ本を書くのも、日本語では、最大1億人(赤ちゃんも含めて)くらいにしか読んでもらえない。海外の人に存在を知ってもらいにくい。でも英語で書けば、それだけで色々な国の人に読まれるチャンスがあり、各国語に訳されて多くの人々に届く可能性がぐんと増える。
学術論文も同じ理由で、英語で書かないと始まらないらしい。
かおるさんのおっしゃる、
>英語圏以外のヨーロッパ人に、真実味のある物語として受け止めてもらえるかどうかという点に関して、かなり重要な要素なのではないでしょうか。...つまり、本を売るためには、こういう配慮が不可欠なのだろうなと思います。
と、逆の構造になっていて、おもしろい。
ここ最近、世界の広がりが少しはわかってきたせいか?日本語と英語だけでは足りない、と思うことが多くなりました。
これこれ、噂は聞いていて 読みたいリストに入っています。
ルーマニア語でもあるのですが、ちょっとこれは日本語
(Or英語が手に入れば英語)で読みたく、次の帰国時の
リスト入りです!!
下巻は期待しない方がいいのですね・・ でも楽しみです ♪


忘却力ますますパワーアップ、まいったか(自爆)。
しかしまあ、なんです。
あんなことが、キリスト教徒にはショックなんですねえ。
でも、そここそがこの小説の勘所だから、非キリスト教徒は、キリスト教徒の半分も楽しめないかも。
逆に、キリストを冒涜しているとお怒りの向きもあるようですが、部外者なので気楽に読める、ともいえます。
以前、デンマークの人と話していたら、
「デンマークは人口が少なく、デンマーク語に翻訳してもペイしないので、海外の本はあまり翻訳されない。海外のベストセラー小説を読みたければ英語を勉強するしかない」
と言っていました。
日本の人口が多くてよかった!
シラス役がポールなのは周知の事実なのかと思ってたのですが、そうでもなかったんですね。。。
私は「ああこれをポールが演じるのね」と思いながら読んだせいか、シラスは嫌いではないんです。哀れな存在だとは思うけれど。
それよりも、フランスの警部のほうが嫌いかも。
「なぜ英語なのか」という言い訳は、ヨーロッパ大陸の読者のためだけでなく、英語圏のインテリ読者を納得させるためにも必要だったのでは・・・?と、記事をアップした後で思いました。
そんなにネタバレしてるんですか! 私、あんまりテレビ観ないんで。
「マスター&コマンダー」のときも、テレビCMを一度も観たことがなかったのが幸いしたんでした。。
ポール・ベタニーのこと、mogさんでさえご存知なかったとは!!
ね、年とると、せっかく本を読んでも忘れちゃうでしょ。
だから私はこのブログ始めたんです(苦笑)
この本を一番楽しめるのは、「キリスト教や聖書の中身をおおざっぱに知っている」というぐらいの人なのでしょうね。
私も「最後の誘惑」を観ていなかったら、もっと素朴に驚くことができたかも。
私、本は未読なのですが、日本の映画サイトでベタニー氏の役どころを知り、大変楽しみにしています。
ある意味美味しい役になりそうで、期待してるんですけどどうでしょうか。
日本での公開は来年5月頃とか。遠いですね~。

ダ・ヴィンチ・コードより天使と悪魔の方がトンデモで結構楽しませてもらいました。あの反物質爆弾はないよな~、です。
この本は蘊蓄の嵐をいかに楽しく感じるかだと思います。歴史にもキリスト教にも疎いから十分楽しみました。
シラスはベタニーが演じることを知らなくても哀れに思いました。トム・ハンクスは好みじゃないけど、ベタニーなら見に行こうかなと思います。

物知らずなので、蘊蓄の嵐はどちらも楽しかったです。


どっちも蘊蓄部分はともかく、何度も読む話ではないと思います。