「飛ぶ教室」観ました
2005年 12月 09日
記憶をたどると、「エミールと探偵たち」「エミールと三人のふたご」、そして「ふたりのロッテ」と快調に読み進み、次に出会ったのが「飛ぶ教室」だったような。
でも、当時の私(たぶん小学校3、4年生頃)にはこの作品、難しすぎたようでした。ケストナーから離れるきっかけになってしまったのです。
ネットを始めて児童文学の世界に舞い戻り、再びこの本を手にとったのが、たぶん3年ぐらい前。なぜかそのときも淡々と読んでしまったのですが、今回、この映画を観て、なぜ原作にハマれなかったのかが、ようやくわかりました。
子どもたちが2つのグループに分かれて反目し合うところ・・・人質を本気で殴り続ける・・・が、私には(ゲームとはいえ)ちょっとキツすぎるのです。(だから私は「ほんわかごっこ遊び」がメインのランサムが好きなんだなあ。) 友達を見返すために、危険なことをやってみようという子どもの気持ちにも、いま1つ入り込めない。赤毛のアンにもああいう場面はあったけど。
それはそれとして、この映画、悪くありません。「現代を舞台としているから、原作とはかなり違うけれど、よくできている」と、原作ファンにもかなり好評だったことがうなずけます。
ただ妥協して設定を変えたのではないのです。「ドイツの今」とうまくリンクしている。唸りました。この改変は、天国のケストナーを喜ばせこそすれ、怒らせはしないだろうと思います。
興味深かったのは音楽です。
東西冷戦の時代、若者がその怒りを表現する音楽形式はロックだった。
そして今、その役割を担うのはラップ。
私は音楽は美しいメロディーがあってこそだと思っているので、リズムだけしかないラップは苦手です。ほんとうのことを言えば、あれは音楽なんかじゃないと思ってるぐらいで。(ラップ好きな方、ごめんなさい)
好きでない人間にすら、ラップのメッセージというのは強烈な印象を残すもので、子どもたちの歌う(あれを歌とは言いたくないけれど)「Wer ist schon gern allein?(誰がひとりぼっちでいたいものか?=誰もひとりぼっちにはなりたくない)」は、今も耳の中で響いてます。この言葉、もしかして、原作からの引用なのでしょうか?
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by foggykaoru | 2005-12-09 22:59 | 児童書関連 | Trackback | Comments(8)

私も最近このDVDを見て、感想をアップしようと思っていたところだったので。近いうちに自分のブログに書きますね。
ひとつ、子供たちが反目しあう、人質を本気で殴り続ける、という所、えっ、そうかな?と思いました。
原作のギムナジウムと実業学校の反目は、ヨーニーが「世界の歴史が始まるよりももっと前からだといってもいいくらい古い」と説明しているように、一種の伝統的な戦争ごっこのようなものなんです。
人質を取られたときも初めは軍師を送って交渉していますし、次に腕っ節の強い代表者を一人ずつ出しての試合(殴り合いですが)、それが上手くいかなかった時の戦いは雪合戦ですよ。
実業学校生にしても、「仲間が謝りにくるまで、10分間に6発ずつ人質の横面をはりとばす」と決めて、それを律儀に守っていたり、妙にユーモアがあります。
その辺が伝わらなかった映画って・・・
もちろん彼らの反目は、ほんとうに嫌いなわけではなく、一種のゲームだというのはわかってます。でも、私にはキツすぎるのです。
人質をとってもいい。(←ランサムの子どもたちもやりそう)
一対一で殴り合うのもいい。(←カッレくんたちもやってます)
でも、人質を殴るのは、私は嫌なのです。
映画はそのへんのところをちゃんと描いていると思います。
だからこそ、なぜ私にとって原作がしっくりこなかったのかということ、さらには、私がどういう人間なのかということがよくわかってしまったわけで。
わかりにくい文章だったので、書き直しましておきました。

なぜだか「飛ぶ教室」はあんまり印象に残ってないんですよ。
ものすごくスキなのは「二人のロッテ」「点子ちゃんとアントン」
ロッテちゃんは、繰り返し読みましたね(笑)
復活祭のタマゴのあたりがツボでした。
さて、ランサム、もったいない・・と思ってる間に
時間切れです「シロクマ・・・」(^.^;)
ふふ、でも年越しして読めるのも素敵。
来年読んできっちり完結ですね、嬉しい&寂しい
ですね。ツバメ号子供たちは、おりこう過ぎて
どうだろう・・とおもいつつその分をアマゾン海賊が
がんばってくれてますから相殺ですか?(笑)
でもランサムの話も内容が結構ショッキングな
ものも多いですよね、何冊かは、ビックリしました。
でも、面白かったですけどね(^^)
おっと、ランサムのコメントじゃなかったですね。
ケストナー。時間を作ってみてみますDVD。
ロッテちゃんはまだ大人になってから再読してないなぁ。。
アントンは今年の夏、ケストナー聖地巡礼記を書くために読んだけど、エミール以上のマザコ・・・もとい、母親によせる愛情の深さに感動すると同時に、おそれいりました(苦笑)
読了は新春に持ち越しですか。待ってますからね!
ランサムはツバメアマゾンもいいけど、もしかしたらそれにも増していい味出してるのはDきょうだいなのかもね。今で言うところの「天然」で(笑)

ヨナタンがもー可愛くて!
今回の現代風への改変は、私もかおるさんと同じ意見で、ドイツの今とのつながり方はとてもいいし、そのおかげでお話に幅が出てると思います。
ただ、希望としては、当時の雰囲気を再現したのも作って欲しいですね。凝り性のドイツ人のことだから、時代考証も完璧にしてくれるのではないでしょうか。
>凝り性のドイツ人のことだから
をを!! たった今、「時代考証が完璧な飛ぶ教室」の妄想場面がむくむくと頭の中にわきあがり、走馬燈のように駆けめぐったところです(笑)
うん、いいですねえ。
なにしろ「ヒトラー 最期の~」を作ったドイツ人ですもの。見応えあることでしょう。

実は、この作品、前にも映画化されているそうです
(ケストナーの人気を考えると当然とは思いますが)。
Das fliegende Klassenzimmer 1954 で検索すると、挿絵の雰囲気に近い画像がヒットしますよ。ドイツではDVDにもなっているようです。
新しいほうの映画が公開されたころ、ドイツ人(30代)が「昔の映画が良すぎたから今度のは見る気がおきない」と言っていました。
『エミールと探偵たち』も、『ふたりのロッテ』も,その他、ひととおり映画化されて、リメイクの波が最近やってきたということだと思います。
『エミールと探偵たち』の昔の映画については、辻邦生さんが、子供の頃に見たと何かで書いていました(たぶん戦前の話)。