鹿島茂著「『レ・ミゼラブル』百六景」(文春文庫)
2006年 01月 01日
今年もどうぞ宜しくお願いいたします。
旧年のシメに予告した「レミゼ」解説本、読みました。
鹿島氏はフランス文学者。しかも、ユーゴーをはじめとするロマン主義文学の専門家。なので、原作を読みこなす自信はないけれど、少しは勉強したいという凡人にとっては、この本が現時点においてセカンドベストである(ベストは原作だから)という点は、間違いないはず。
500ページに迫る厚さではありますが、フランスで出版された「レミゼ」各版の挿絵がたくさん載っているので、文章の量はたいしたことありません。それにとても読みやすい。現に私は1日で読めました
原作の舞台となった当時のフランスの状況がつぶさに説明されています。この作品に出てくる「革命」がいったいいつの何という革命なのか、ずっと疑問に思っていたのですが、ようやく謎が解けました。
「1832年の6月暴動」というものだったのです。
ここでフランス革命以後のフランス史のおさらい。
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1789年7月 バスティーユ襲撃 いわゆるフランス革命の始まり
1793年 国王ルイ16世処刑
1799年 ナポレオン登場
1802年 ヴィクトル・ユーゴー誕生
1804年 ナポレオン帝政の始まり
1814年 王政復古 国王ルイ18世(ブルボン家)
1830年7月 7月革命 国王ルイ・フィリップ(ブルボン=オルレアン家)
1832年6月 6月暴動
1848年2月 2月革命 王制倒れる 第2共和制の始まり
1852年 ナポレオン3世による第2帝政の始まり
1870年 普仏戦争でフランス敗れる。第3共和制の始まり
1885年 ヴィクトル・ユーゴー死す
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6月暴動というのは、私が持っている高校生向けの世界史年表には載っていません。それぐらいマイナーな事件なのです。鹿島氏によると、この時点で振られたのは三色旗だそうです。
そういえば確か、赤旗が初めて振られたのは2月革命だときいたことがあります。
ジャン・ヴァルジャンの最期の解説には涙がこぼれました。解説なのに。
原作読破は断念したものの、やっぱりラストだけはきちんと原作で読もうかなというという気分に浸っているところです。
この本に関する情報はこちら
by foggykaoru | 2006-01-01 18:36 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(4)

私も原作挫折仲間です。でも、いつかは続きを読み始めたい…
ユーゴーはほんとうに濃く濃く書き込んでいく作家で、そこがつらいのですが、「燭台事件」に至るあたりも、状況が詳細にかかれているので、ヴァルジャンのつらく苦しい気持ちに共鳴して、飛行機の中で大泣きしてしまいました。
ブルボンといえばお菓子を思い出す私です。
たとえばトルストイの「戦争と平和」の場合は、物語のところはとても面白くてきちんと読める。で、ところどころにある論文調のところさえ斜め読みすればよかったんですが、レミゼはそういうわけにはいきませんでした。
ミュージカルではばっさり削られた銀の燭台ですが、ほんとうは削っちゃいけないところですよね。。。
あれのお陰でヴァルジャンは生まれ変わり、そのヴァルジャンに同じことをされたジャヴェールは死を選んだわけなんだから。