「ふたりのロッテ」
2006年 09月 27日
私にとってこれは、「ドナウ川のリンツ」という地名を強烈にインプットしてくれた本です。長じてドイツから鉄道でウィーンに行くとき、「リンツ」という駅名を目にして深い感慨を抱いたものです。
読むのは数十年ぶりですが、大人になってから、劇化されたものを見る機会があったので、だいたいの内容は覚えていました。だから「こんな話だったのか!」というような、新鮮な驚きはなく、淡々と読んでしまいました。
この作品は親子の情愛をテーマにしていますが、主人公は2人の女の子。なので、「エーミール」や「点子ちゃんとアントン」にみられる、息子と母親の交流の場面はありません。ケストナーが自らを投影して描いた「母親思いの息子」像は、涙を誘うほど感動的なのですが、同時に、重いというか、今の言葉でいうと「うざったい」ところがなきにしもあらず。この作品の主人公であるルイーゼとロッテはもちろん親思いの良い子たちなのですが、しょせん女の子(=娘)なので、ケストナーの思い入れの度合いが全然違う。
だから、読んでいて気が楽といえば楽。その反面、物足りない感じも否めない。
頭を切り換えれば、ケストナーがほんとうにプロの作家としての立場で書いた作品だという位置づけができるかも。
ルイーゼが母親とピクニックをするガルミッシュ。
バイエルンに行ったとき、すぐそばをかすめました。
行っておけばよかったとちょっぴり後悔。
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by foggykaoru | 2006-09-27 20:32 | 児童書関連 | Trackback | Comments(8)
ほとんどケストナーを読んでいません。ふたりのロッテは確か数年前に映画にもなりましたよね。
「二人のロッテ」と聞くと、この三つが浮かびます。
大学の専攻を選ぶとき、ドイツ語もちらっとよぎったんです。ケストナーのせいで。スウェーデン語もね。リンドグレーンのせいで。
にも関わらず、フランス語を選んだ私です。フランス文学には思い入れのある作家なんていなかったのに。
ケストナー、イギリスの児童文学とは味わいが違って、それはそれで面白いです。
その違いはドイツだからというわけではなく、ケストナーの個性が強いせいだと思いますけれど。
私のイチオシは「エーミールと探偵たち」です。
リンドグレーンは大好きでした。やかまし村、これは映画もよかったなあ。確か脚本はリンドグレーン自身が書いたと聞きました。
高橋さんはケストナーと親交があり、「自分よりも背が低かった」と書いておられますね。それだけではないでしょうが、コンプレックスがあの負けん気の性格を作ったような気がします。
「エーミール」の訳文をちょっとだけ読み比べてみたんですが、高橋健二訳のほうが、断然ウルっときます。
日本人よりも小柄だということは、ドイツ人としてはダントツに小柄だということですね。それはコンプレックスになりそう。