『ゲド戦記』にひとこと
2006年 10月 12日
これは週刊文春の先週号に載っていた記事のタイトルなのです。
まあ、こういう記事が書かれること自体は、別に驚くことでもなんでもないのですが、書いた人の名前を見て驚きました。
なんと中村うさぎ氏なのです。
その連載エッセイで彼女が「ゲド語り」をしてるんです。
(ご存知でない方のためにご説明いたしますと、中村うさぎ氏というのは、度はずれたショッピング好きでローンの返済に追われていて、それをネタにしたエッセイをウリにしている人。最近はそれに加えて、美容整形の体験レポを書いたりと、文字通り身体を張り、自分の身を削って、原稿料を稼いでおられる人であります。)
かいつまんで紹介しますと・・・
小説の映像化に際しては、「原作の世界観とキャラクターを守る」ということだけを条件にして、それ以外のことについては製作者にできる限りの自由を与えるべきだと、常々思っている。
ジブリのゲドは、世界観とキャラクターは一応守っている。
にも関わらず、このアニメ作品を見たとき「ル・グインが気の毒だ」と思った。
原作のゲドはこういう作品ではないんですよ!
・・・という内容。
ちなみに、彼女の今週号の記事はいつもの借金ネタに戻ってます。
ゲドのこと、どうしても1度は書かずにいられなかったんだろうと、彼女の心中を思いやると同時に、ジブリのゲドがいかに「問題作」なのかということを、今さらながらに感じた次第です。
by foggykaoru | 2006-10-12 22:09 | 児童書関連 | Trackback | Comments(5)
結局私は劇場で見るのは、あきらめました。
見てがっかりするに違いない、と思ってしまったらだめですね。
映画を観た方の感想で一番気になってしまったのは「世界が狭い」。
これは中学生の女の子の感想なのですが、
「ちょっと旅するとすぐ目的地についちゃう。島と島を渡っていくはずなのに、同じ陸地のなかを移動してる?と、映画を観た人は思ってしまうだろう。多島海じゃなくて、ふつうの島みたい」
・・・これを聞いた瞬間、最後の望みが潰えました(おおげさ)
そして、連想したのは「山手線圏内モルドール」(爆)
もっと冷静になったら、レンタルで借りてじぶんちの小さい画面で確認する、にしておきます。
このトップのフォト、いい雰囲気ですね。
ゲド戦記、これはさすがに、いくら映画と原作は別だ、と考えるとしても私の中でどうしても受け入れがたくて、見ない!と決めているのですが。
いろいろな行き違い等があったこと、ル・グィンさんの出されたコメントなど、知った上でいわせていただくのですが、一端手を離してしまった作品に関して、もう、何も仰る事は出来ないのではないか、と思うのです。
今回、宮崎駿さんが作らなかったことで、あれこれ余計に言われていますが、私は、もし駿さんが作っても、似たような結果だったのでは、と思えてしまうのです。ただ、その場愛、文句が出にくかったかもしれないな、と思います。
本は読んだ人がそれぞれ自由に自分のイメージを持てます。
映像と音で表す事は、かなりその自由を制限します。
それが、自分の持っていたものに近かったり、自分が確たるものを持っていなければ、○を出せますが、そうでない場合には拒否反応となりますよね。
(長くなったので、分割します)
作品は、作り上げられた時点で、作り手の手を離れて一人歩きを始める物だと思うのです。出来上がったものを人に公開するならば、受け手がどう解釈しようが、それを制限出来ないと思うのです。
新たな解釈を示されたくないならば、たとえどんな形であれ、映像化を許すべきではなかった、と私には思えます。
ル・グィンさんが「これはよかった」とおっしゃっている挿入歌も、私にはこれのどこがゲドの世界なの?と思える歌でした。ということは、私が持っているゲドの世界のイメージはル・グィンさんが思っていらっしゃる世界とちがうのかもしれない、と考えたりしました。
ホビットの冒険まで、映画化されるのだそうですね。
またかあと溜息が出てしまいました。
>「世界が狭い」
そうなんですってね。ちっとも「さいはて」じゃないということは聞き及んでいます。
>「山手線圏内モルドール」(爆)
ふふふ。懐かしいですねえ。
ところで私、あの後、実は考えが変わりました。
あれは浮世絵に影響を受けたアラン・リーが、ジャポニズムの技法で描いた世界なのです。
滅びの山、北斎の富士山に似てるでしょ?
だから、遠近法に基づく西洋絵画の世界じゃないんですよ。
近くに見えるけど、ほんとうはとーっても遠いんです(爆)
ル・グインさん、あれでも一生懸命コメントを差し控えておられるんだと思うのですが、それでもひとこと出ちゃうということなんでしょうねえ。
ジュニアじゃなくてパパが作った場合、やっぱり改変はすごかったかもしれないけれど、少なくとも「絵」のレベルはもっと高くなったのではないか、とは思います。(見てないんだけど)
あの挿入歌については私も同感。なんであれを評価したのかな。
ル・グインさんにとってはエスニックなムードがあるということなのでしょうかね。