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「英米児童文学の宇宙---子どもの本への道しるべ」

2002年ミネルヴァ書房刊。本多英明編著。

目次をご紹介。

序章:英米児童文学の20世紀(本多英明)
第1部:古典への新しいまなざし
第1章:不思議の国の絵画---キャロルとシュルレアリスム(庭野延子)
第2章:少年時代の光と影---『トム・ソーヤーの冒険』論(高田賢一)
第3章:インドの紳士の物語---『小公女』における英国人男性性の回復(川端有子)
第2部:広がる視座、問われる真価
第4章:偉大なる詩のなかへ---『ホビットの冒険』における「憧れ」の探求(成瀬俊一)
第5章:魔法と悪口の物語---E.L.カニグズバーグ『魔女ジェニファーとわたし』における物語性(横田順子)
第6章:自己と民俗のアイデンティティ---ヴァージニア・ハミルトンの『わたしはアリラ』を読む(白井澄子)
第3部:同時代の児童文学に挑む
第7章:嘘つきたちのギャラリー---アン・ファインの挑戦(西村醇子)
第8章:創世記の再構築---フィリップ・プルマン『黄金の羅針盤』『神秘の短剣』『琥珀の望遠鏡』(小峰和子)
第9章:多文化社会と子どもの本---アレン・セイの描いた家族の肖像(本多英明)
第4部:絵本を読み解く
第10章:命をみつめる絵本考---絵本とクオリティー・オブ・チャイルドフッド(桂宥子)
第11章:絵本が解放されるとき---Little Blue and Little Yellowをてがかりに(高鷲志子)
第12章:「育てる者」と「育てられる者」の葛藤---『まどのそとのそのまたむこう』に描かれた命の神秘(灰島かり)

目次を見る限りでは、わたし的にピンとくるものはあまり多くない。にも関わらず、古書店で1200円出して買ってしまったのは、序章にランサムの言及があり、しかも、けっこうページが割かれていたため。
しかも、その節の表題が「静かな湖面、広がる想像」と、思い入れたっぷりなのである。
この人、ランサムが好きなのね、間違いナイ!(←古いっ)

それによると、ランサムは「エドワード朝の精神を基盤にしてジョージ朝時代に活躍した作家」なのだそうである。

ほー、なるほど。
エドワード朝というのは、ビクトリア朝のすぐ後。まだまだ「いいとこ」の女性が、ガチガチの道徳でがんじがらめになっていた時代。E.M.フォースターの「眺めのいい部屋」の時代である。その当時、お嬢様たるもの、たとえば「胃の調子が悪い」などとは、口が裂けても言ってはならなかった。なぜなら、身体のことを口にするのは非常にはしたないことだから。
その時代の生き残り---生きた化石?---が大おばさんなのだ。

それ以外の章のほとんどは、ぱらぱらめくった程度。唯一、きちんと読んだのは第3章である。テーマは『小公女』と、それが書かれた時代との関わり。世界史好きにはわくわくさせられる内容である。『小公女』を再読してみようかという気になった。

巻末の著者紹介に、「トールキンとC.S.ルイス」という著作が挙げられていた。
そこで、トールキンに詳しい英文学のI先生に「こういう本を手に入れたのですが」とお見せたら、先生、ページを繰りながらしみじみとした口調で「良い本をお買いになりましたね」とおっしゃった。
本多氏はI先生が相模女子大学で教えていたとき、同僚だったのだそうだ。
「この方は神宮輝夫先生のお弟子さんです。まだお若いのに、最近、お亡くなりになりました。惜しい方を亡くしました。もっともっといろいろな話をお聞きしたかったのに・・・」

ああ、私もお話をお聞きしたかったのに。


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by foggykaoru | 2006-12-18 20:04 | 児童書関連

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