池内紀著「ゲーテさん こんばんは」
2007年 02月 03日
素人が楽しくお勉強するには、専門家が肩の力を抜いて書いた本を選んで読まなくちゃ。
と思っている私にぴったりの本でした。
高校レベルの世界史は、年代ごとに「いちばんのイベント」をやっていたところの歴史だけをピンポイントで扱うので、その裏で他の国や地域がどうなっていたのかが、さっぱりわかりません。また、文化史と政治史が結びつきにくい。
この本を読んだ収穫は、文学者ゲーテの生きた時代というのが、18世紀後半から19世紀前半、つまりフランス革命前夜からナポレオン帝政が終わるあたりであることが、しっかり頭に入ったこと。そして、その当時のドイツがどんなだったのかについて、ある程度のイメージがつかめたこと。
ゲーテは裕福な家庭に生まれ、教育パパの後押しで、当時の最高水準の学識を得た。
18世紀は啓蒙主義の時代であり、つまり「子どもの教育」に熱心な親が初めて出現した時代なのだそうです。
なるほど。レオポルト・モーツアルトも、その時代を体現した人だったのね。
ただ、レオポルトの息子ヴォルフガングは、金遣いが荒くて、マトモな生活能力に欠けていたふしがあるけれど、ゲーテは違う。彼はワイマール公国の高級官僚として、きちっと勤め上げた。小国ワイマールのために、ずいぶん尽くしたらしい。
この違いはどこからくるのかな。モーツアルトの場合、音楽教育だけは最高のものをしこまれたけど、他の面はおろそかにされたのかも。また、なんといっても、当時の音楽家は「河原乞食」と大差なかったということもあるかも。
本題のゲーテに戻ると、この人、ただ筆が立っただけではなかったのです。
なにしろ、あらゆるものに興味を持つ。旅をすれば、道端の石ころを拾いまくる。雲を観察する。骨も。人間には無いと思われていたナントカという骨を発見したのは、彼なのだそうで。なんと博物学者だったんですね。「万能の天才」という言葉を思い出します。
ただし、彼の研究は、妙に文学的アプローチだったので、後世の科学に影響を与えているようなものはない。業績呼べるものは、ナントカという骨を発見したことだけで。
彼がもっとも力を入れたのは色彩学。これまた、誰にも相手にされなかったし、今も相手にされてない。彼の色彩学の内容がちらっと書かれているけれど、私のような素人でも「大きな勘違い」に立脚したものだということがわかります。
ゲーテが養生のために通った温泉マリーエンバート(現チェコのマリーアンスケーラーズニエ)。
そこで「マリーエンバート哀歌」という詩が書かれたのだそうな。
マリーエンバートは「マリアの湯」
池内氏曰く「観音湯みたいなもの」と。
「哀歌」は「エレジー」
だから、「マリーエンバート哀歌」というのは、「湯の町エレジー」なんだと。
日本でゲーテというと、いかにも格調高そうだけど、実はその程度なんですよ~ もっと気楽に楽しみましょうよ~ ということ。
なるほどなあ、そうなんだろうなあと思います。
こういうことが言えるのは、ドイツ語の大家だからこそ。
けっこう楽しかったのですが、ときどきだれて、読み終わるのに何日もかかってしまいました。たったの267ページの文庫なのに。
これはたぶん、私自身の問題。もともとドイツに対する関心は(イギリスやフランスに比べると)高くないから。
ドイツ好きの人に特にお薦め。一気に読めると思います。
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by foggykaoru | 2007-02-03 11:57 | 伝記・評伝 | Trackback | Comments(7)
そういえばゲーテの本って読んだことないのです。ドイツの本といえばケストナーとヘッセくらいしか、、、
この人の本は、端から読んでみたい本ばかりなのですが、数が多いのと私が遅いのとで、ほとんど読んでいません。カフカ全集も訳されていますね。
ちゃんと読み通したことがないかも・・・しれません^^;
時代背景も興味深い。読みたいリスト(笑)に入れときます。
ランサム終了しました。あーーーこんな風に終わっちゃうなんて
少しさみしい・・・でした。もっと読みたいですわ。
で、やはりツバメ谷と六人の探偵あたりが一番スキかも♪しれません。
ゲーテ、お読みになったことがあるんですか? すごい!
私なんて、「若きウェルテルの悩み」「ファウスト」というタイトルを知っているだけです(苦笑)
ついにランサム読了ですか。。少しさみしい・・・うんうん、すごくよくわかります。
あれで終わっちゃったんですよ、12巻が。
それにしても、谷はともかく六人がお気に入りとは。どこがいいんですか?ってランサマイトが口にすべき言葉じゃないか(自爆)
この本を読んで、次に池内さん訳の「ファウスト」をとても面白く読んだのですが、こちらも面白くさーーっと読めてしまい、内容が残らなかったという・・・(ついでにいうと、挿絵が嫌いな方の絵なのです・・・)
で、他の方の訳の「ファウスト」の方は、なかなか手が出せないままになっています。(反省)
池内さんは、簡潔明瞭に訳する天才だと思っています。
グリム童話集、彼にかかるとどなたの訳されたものよりも短いのです。でも、ちゃんとそれぞれのおはなしのエッセンスは損なっていない。私は、彼の訳か、ちょっと古い日本語の味のある金田鬼一訳が好きです。
>面白かった記憶はあるのですが、内容はほとんど忘れてます。駄目ですね。(笑)
忘れちゃいますよね。だから私はこのブログ始めたんですもの(笑)
池内さん訳の「ファウスト」、面白いんですね。じゃあ読んでみようかな。

