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ヒルダ・ルイス著「とぶ船」

この本に関する情報はこちら

子どもの頃からタイトルだけは知っていて、気になりつつも、読みそびれた本。

今年めでたく100歳を迎えられた石井桃子さんの訳。
「きみは、おとなだしするから、だいじょうぶ」
なんて台詞が出てきます。
この「~だしするから」は、子どもの頃読んだ本でときどき目にして、子供心に「へえ、こういう言い方もあるんだ」と思ったものです。


きっと船に乗って飛んでいって、いろいろ不思議な国に行く話なのだろうと思っていたら、予想を裏切られました。行き先が、思い切りまっとうな場所と時代なのです。





なにしろ、アースガルドなんです。
オーディンが、そして、ロキが出てきます。
ロキはちゃんとよけいな口をきいて、もめごとを起こします。
さらに、ウィリアム征服王時代のイギリスにも行きます。 
あのマチルダじゃないけれど、マチルダという少女が出てきます。
バイユー(石井さんは「ベイユー」と書いてますが)のタピスリーに関する言及もある!!
(「バイユーのタピスリー」の複製刺繍はこちら


著者ヒルダ・ルイスはもともと歴史小説を書いていた人だそうで、この作品は自分の得意分野をを生かして書いたのでしょう。なんというか、「教育図書」の趣があります。下手をすると教科書臭がしてくる、ぎりぎりのところでとどまって、楽しいファンタジー作品に仕上がっているというところでしょうか。

また、この作品では、かなり早い時点から「子どもはいずれおとなになり、魔法を忘れてしまう」ということが明言されていて、終わり方が予想できてしまい、実際、そのとおりになります。でも、読後感はけっこうほっこりしたものです。似たタイプの児童書として、「ピーター・パン」がありますが、あれの結末よりも、この作品のほうがずっといい。

また、同じルイスでも、C.S.ルイスはきついなあとつくづく感じます。なにしろ、「ナルニアを忘れたスーザン」は見捨てられてしまうんですから。
もっとも、C.S.ルイスにとって、「ナルニアを忘れること」イコール「信仰を捨てること」だから、許せないのかも。たかが魔法を忘れることと比べること自体、けしからんと怒られちゃうかも。

この作品は1939年に発表されたのだそうです。
ランサムと同時代。そういう感じはあります。
また、20世紀初頭のヨーロッパでは、エジプトがブームだったのだと再確認しました。

脇明子さんのあとがきは、子どもの頃にこの本を愛読した人ならではの、愛情溢れる文章で、これのおかげで、読後感がさらに良くなったような気さえします。


蛇足ですが・・・
エジプトのバザールで言葉が通じなくて困った子どもたちが「ノー・サヴィー(わからんよ)」と言ってみたりします。(「サヴィー」に関する中途半端な考察はこちら
また、「フランス語がわりとよく通じる」という話を思い出して、「パルドン」と言ってみたりもします。

以前、「フランス語が話される国」に色が付いている地図(もちろんフランス製)を見たとき、エジプトに色がついていて、これはいかがなものかと思ったのですが、あながち間違いだったということではなかったのですね。でも、エジプトは英国の植民地だったのに、どうしてそういうことになるのでしょう?

by foggykaoru | 2007-02-14 21:16 | 児童書関連

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