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前川健一著「旅行記でめぐる世界」(文春新書)

日本人が自由に海外渡航ができなかった戦争直後から、現在に至るまでの旅行記の紹介本。
バックパッカーの先駆者である著者の名前は前から知っていた。
本は読んだことがなかったけれど。

古本屋で見つけたときは読み捨てるつもりだったが、読んでみて、捨てないことにした。

紹介されている本のうち、既読のものは以下のとおり。
トルコのもう一つの顔
・新西洋事情
・東方見便録
・63歳からのパリ大学留学
・河童が覗いたヨーロッパ
・パリ 旅の雑学ノート
これらに関するコメントが的確で納得のいくものだったので、前川氏の評価はあてになると思う。(少なくとも私にとっては。) 特に紹介コメントに熱がこもっているいくつかの旅行記は、いずれ読んでみようと思う。

ところで、私は自分で旅行記を書くようになってから、他の人が書いた旅行記をほとんど読まなくなってしまったのだが、どうやらそれは私だけではないらしい。
インターネット上には、あまたの旅行体験記が載っているものの、旅行記はそうは売れない。旅行記を書きたい人はいくらでもいるのだが、他人の旅行話はあまり読みたくないのである。

そのとおり。
ネット上の旅行記というのは、さしてアクセスを稼ぐことはできない。要するに、あまり読んでもらえない。一番労力を注いでいるコンテンツなのに(涙)

沢木耕太郎の「深夜特急」も、もちろん取り上げられている。
この作品の人気の要因の1つとして、前川氏は次のことを指摘している。
沢木が意識してやったと思われるテクニックは、時代色を出さないことだ。・・・(中略)・・・時事の話を入れると、当時の時代背景はよくわかるが、旅行記が古めかしくなるのを避けたのだろう。

よくわかる。
私はネット上に旅行記をアップするとき、情報を求めにやってくる人のことを考えて、そのときどきの最新情報をなるべく入れるようにしている。でも、なまじっかそれがあることによって、アップしたその瞬間から、その旅行記は急速に老化していくのだ。
これを避けるためには、旅行後ある程度の年月がたった旅行記は見直して、物価その他、アップ当時には参考になる情報だったはずの事柄を、削除していくという手入れが必要なのだと思う。

「そんなことしたって、どうせ読んでもらえないんでしょ」という声が聞こえてきそうだが。


この本に関する情報はこちら

by foggykaoru | 2007-04-05 20:25 | エッセイ | Trackback | Comments(10)

Commented by KIKI at 2007-04-05 23:18
私もサイトを開設した当初に比べたら他人の旅行記読む頻度は減りました。
って私は自分の旅行記ほとんど書いてませんが(汗
旅行記ってそこに行こうと思った人が情報集めの傍らに読むことが多いかと推察しています。
まぁ読み物的に言えば自分が行ったこともないし、行こうと思ってもいないところの写真や文章って興味ないでしょうねぇ。
Commented by タサ at 2007-04-06 13:34
私も少しだけ旅行記書きました。
旅の記念として、コピー本にしてお世話になった人たちに贈った記憶があります。

ま、自己満足の世界かも知れませんね。

でも、道のところへ旅に行く前は情報収集として、旅行記を読みます。
最近、旅行をすることがめっきり減ってしまったので、あまり読まなくなりましたが。

「河童が覗いたヨーロッパ」など、妹尾河童さんのシリーズはいろいろ読みました。あの細かい挿絵が好きです。
Commented by foggykaoru at 2007-04-06 20:37
KIKIさん、タサさん。
そう、普通の旅行記は情報収集のために読まれるんでしょう。
そこから抜け出るためには、何かプラスアルファのものを持っていなければならない。

たとえば「深夜特急」
これはおそらく、文学の1ジャンル(=青春文学)として読まれている。
「読むに値する旅行記」のもう1つのタイプ、それはその土地の文化に深いウンチクが語られていて、文化人類学とか、政治学とか、別の専門領域に到達しているものなのではないかと思うんです。
後者のタイプのお薦め旅行記、これからポストしますね。
Commented by ケルン at 2007-04-08 01:28
『深夜特急』は、(しばらく前に読んだのでうろ覚えですが) 旅で見聞きしたことの記録というだけでなく、20代の若者の眼、仕事もやめてモラトリアムな状態にいること、というのを映しているんだと思います。大学生のころに読んだら影響されたかな? いえいえ、当時は私、一人旅なんてできるようになるとは思いもしませんでした。。
男の子が特に学生のときに読んだらきっとはまるでしょう。これは男性の(による、のための)本だな、本当のところはてが届かないなと思い、歯がゆい思いもしました。
Commented by ケルン at 2007-04-08 01:32
書き忘れました。

私は、これから行きたいと思っている地域の旅行記は、なるべく読まない、ということが多いです。先入観なしで自分がどう感じられるかが知りたいから。映画や本と同じ。
情報収集は最小限するとしても、他の人の感想はできれば読まずにいます。

かおるさん、その本に『ロンドン東京五万キロ』という本は出てきませんでしたか?
Commented by go_to_rumania at 2007-04-08 15:25
そうですよね、このあたり 私も考えます。
私のブログにも 結構旅行される前の情報収集で来てくださる方が
いるので、値段やその他情報もなるべく収集した時期を書くようにしていますが
私もブログが趣味の一環なのでいつもUpdateできているわけではない、、
しかし ルーマニアの情報はまだ少ない、、、

自身も本よりもブログ(ネット)をツールとして収集する情報、参考にすることが
ありますので、考えてしまいます、、、  
Commented by hami_tree at 2007-04-09 18:39
旅行記のあり方は、私も考えさせられます・・・。
旅を通して、マニアックでもいいからなにかを語ることができたらおもしろみが増すだろうなとは思うものの、そんな教養を持たない私はありきたりの旅行記しか書けません(^^;)
でもとあるサイト(旅行系ではない)と出会って、数ある旅行記の中に埋没してしまうような「普通の旅行記」を書くくらいなら、もっと自分らしさを前面に押し出してみてもいいのかなーと、あれこれ模索しているのですが、そしたらばまた、更新がすっかり止まってしまいました(苦笑)
ま、ぼちぼちと、改変していきたいと思います・・・。
Commented by foggykaoru at 2007-04-09 20:21
ケルンさん。
>旅で見聞きしたことの記録というだけでなく、20代の若者の眼、仕事もやめてモラトリアムな状態にいること、というのを映しているんだと思います。

そう。読んでないけれど、そうなんだろうなと思います。
月並みな言葉で言えば「自分さがしの旅」
この場合、「旅」よりも「自分さがし」の比重が高いんじゃないかな。
だから、旅先それ自体にさほど興味を持っていない人であっても、本を手に取るんじゃないかと思います。

>私は、これから行きたいと思っている地域の旅行記は、なるべく読まない、ということが多いです。
わかります。
私が旅行記をたくさん読んでいた時期というのは、「行きたいけれどきっと行けないだろう」という時期だったような。
だから、代償行為として読んで、まだ見ぬ土地に思いを馳せていた。。。これって小学生の頃にランサム読んでたときと同じかも(笑)

歴史や文化のウンチクものをよく読むのは、海外事情研究、つまり、広義の旅行準備なのかもしれません。
Commented by foggykaoru at 2007-04-09 20:24
go_to_rumaniaさん。
来てくださる方のことを考えると、情報をどんどんアップデートしなくちゃならないという義務感に駆られるけれど、個人のサイトやブログというのは、あくまでもボランティアなのですよね。
自分がいちばん書きたいことと、要求されていることが、多少ずれるのはしかたがないにしても、大きくずれてしまうと、精神的に負担になります。
そのあたり、かねあいが難しいですよね。
Commented by foggykaoru at 2007-04-09 20:31
はみさん。
>旅を通して、マニアックでもいいからなにかを語ることができたらおもしろみが増すだろうな

そうですよねえ。まあ、私の場合は「児童文学の旅」がそうなのかもしれません。
でも、私が語れる(というか、語りたい)児童文学作品は数が限られているからなぁ(苦笑)
やっぱり「独自の切り口」が必要なんでしょうね。
でも、そういうものがあっても、アクセス数は伸びないことでしょう。世の多くの人が旅行記に求めるのは「独自性」ではなくて、単なる情報源。
でも、ネコが見ていても視聴率。
ほんとうに熱心に、本放送を見て、さらに録画したビデオを見て、さらにDVDを買う、というような人のために書ければいいのです。自信が自分にあれば、ごちゃごちゃ考える必要ないのよね。。。
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