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わかりやすさとありがたみ、そして指輪物語

お気に入りの文語体「天使祝詞」ではありますが、実は今回このシリーズを書くまで、あまりよくわかっていなかったのでした。

それは「おん身は女のうちにて祝せられ」の、「女のうち」の部分。
私はその後の「ご胎内」と関わる曖昧模糊としたイメージで捉えていたのですが、フランス語訳を見て、そうでないことがわかりました。
「entre toutes les femmes」
「女」に相当する「femme」が複数形になっている!
(大学でラテン語の単位を取ったからには、ラテン語のmurieribusという単語が複数形だということに気付かなくちゃならなかったのですが、なにしろあの1年間は茫然自失だったから(苦笑))
だから口語訳では「主はあなたを(女性たちの中から)選び」となっているのですね。


ここまで祈りの記事を引っ張ってしまったからには、「キリスト教ならこれ!」という、「主の祈り」を紹介しないわけにはいきません。
まずは文語体から。


父と子と聖霊のみ名によってアーメン。
天にまします我らの父よ。
願わくば み名のとうとばれんことを。
み国の来たらんことを。
みむねの天に行わるるごとく
地にも行われんことを。
我らの日用の糧(かて)を今日(こんにち)我らに与えたまえ。
我らが人にゆるすがごとく、
我らの罪をゆるしたまえ。
我らを試みにひきたまわざれ。
我らを悪より救いたまえ。アーメン。


個人的に、「天使祝詞」ほどの魅力は感じないものの、「願わくば・・・んことを」という表現は好きです。こういう言い回しは、ぜひとも日本語に残しておきたいと思うのですが。
ただ、初めてこの祈りを読んだとき、よくわからなかった箇所がありました。
それは「「我らを試みにひきたまわざれ」の部分。
わかったのは、英語版を目にしたとき。

In the name of the Father, and of the Son, and of the Holy Spirit. Amen.
Our Father who art in heaven,
Hallowed be thy name,
thy kingdom come
thy will be done
on earth as is in heaven.
Give us this day our daily bread.
Forgive our trespasses
as we forgive those who trespass against us.
Lead us not into temptation,
but deliver us from evil. Amen.


そうか、Lead us not into temptation、つまり「我々を誘惑せんでくれ!」という意味だったのね!

よく日本の古典、たとえば「源氏物語」あたりは、原文で読むよりも英訳のほうがよっぽどわかると言われますが、まさにそれだったのです。

そして、ご多分に漏れず、最近はこの祈りも口語訳にとって代わられているようで。
英語の口語版も併記してご紹介します。


父と子と聖霊のみ名によってアーメン
天におられるわたしたちの父よ。 [Our Father in heaven]
み名が聖(せい)とされますように。[holy be your Name]
み国が来ますように。[your kingdom come]
みこころが天に行われるとおり地にも行われますように。
[your will be done on earth as in heaven]
わたしたちの日ごとの糧を今日もお与えください。
[Give us today our daily bread]
わたしたちの罪をおゆるしください。[Forgive us our sins]
わたしたちも人をゆるします。[as we forgive those who sin against us]
わたしたちを誘惑におちいらせず[Do not bring us to the test]
悪からお救いください。アーメン。[but deliver us from evil. Amen.]


「聖とされますように」って・・・ そんな日本語あるんですか?
breadが「糧」のままなのが嬉しかったりして。
まあ、まさか「パン」にするわけにはいかなかったのでしょうね。
誘惑はテストかぁ・・・テストねえ。

と思ったのですが、「指輪物語」に「I pass the test」という台詞があったことを思い出しました。ガラドリエルが、フロドに「指輪をさしあげます」と言われて、(PJの映画では)CGで恐ろしい姿に変わって、元に戻ってから言う台詞。
「わらわは試練に耐えた」と訳されているところ。

そんなことを考えると、この口語版英語の祈りにも、いくばくかのありがたみを感じ始めてしまうのが、我ながら不思議です(爆)

っていうか、この祈り、「指輪物語」のテーマに相当かぶってますよすね。
さすが、敬虔なカトリック信者が書いただけのことはある!

by foggykaoru | 2007-07-05 20:34 | バベルの塔 | Trackback | Comments(12)

Commented by ラッコ庵 at 2007-07-06 06:59
昔は意味もわからず唱えていましたが、口語訳を見てみると、特に後半部分、いかにも愚直なお願い!という感じでリアルですね。
「聖とされますように」だけでなくヘンなキリスト教語(ルー語みたいなもの?)が結構ありますよね。、「キリスト者」とか。
Commented by むっつり at 2007-07-06 07:15
聖を「せい」と読むから…
「ひじり」なら落ち着くんですけど(^_^;)
でも「ひじり」と言う言い方自身が古語ですので文語調になってしまいます
Commented by サグレス at 2007-07-06 07:52
いいですねぇ、ガラドリエルの台詞で聖書口語訳にありがたみをおぼえるなんて、オタクの鑑ですね!

「試みに会わせず」のくだりは、最初に読んだ思春期の頃、切実な感じがしました。私自身が、時々良からぬ衝動に駆られて苦労していたから、かもしれません。
Commented by リンゴ畑 at 2007-07-06 08:11
主の祈りって、全体はこういう内容なんですね。初めて知りました。サグレス殿ではありませんが、管理人殿って優先順位の上位がやっぱり指輪物語なんですね!
映画のガラドリエルは、自分の空想上の彼女とは、随分かけ離れていました。特にあのセリフを言うシーンは、恐ろしい姿でなく、もっと神々しくて、同時に美しすぎるから恐れを感じる姿にしてほしかったですよ…。朝のガラドリエルだから、もっと豊饒さがあり、光とともにすべてを育てて力づけるタイプなのじゃないでしょうか?(すみません、愚痴ですね)
Commented by foggykaoru at 2007-07-06 20:43
ラッコ庵さん。
>愚直な感じ
原点に立ち返ろうという考えからすると、それは正解なんですよね~
Commented by foggykaoru at 2007-07-06 20:44
むっつりさん。
「ひじり」だと、舶来の宗教という感じがしなくなっちゃいません?
Commented by foggykaoru at 2007-07-06 20:45
サグレスさん。
いや、ほんとにありがたみを感じているかというと、よくわからないです。
感じようとしている、というのが本当のところかな(爆)
Commented by foggykaoru at 2007-07-06 20:48
リンゴ畑さん。
指輪映画は台詞を暗記しかねないほど見たので、英語の話というとまっさきに浮かびます。
ランサムは英語が浮かばないの。神宮訳がずぼっと入ってるから。

PJ映画に関しては、いやってほどたくさんオタク記事を書いてます。
もしも興味がお有りだったら、右に出ている「タグ一覧」の「映画」をクリックしてね♪
Commented by crann at 2007-07-11 20:31
ひさしぶりに高尚なるオタクの考証を拝読して、満足感をあじわってます!
これを神道におきかえるとどうなるのかなーなんて余計な妄想をいだいたり(笑)

口語のお祈りは、なじみません。
やさしくしても古語のリズム、五七五のほうがなじみますよね。
わたしたち、をわたくしたちにしてもいいのに・・・
Commented by foggykaoru at 2007-07-14 22:30
crann@leiraniさん。
「試練=テスト」だということに気が付いたのは、まさにこのポスト書いている最中だったのでした(笑)
それまではただ「つまんない英語だなー」と思ってたんです。
Commented by mog at 2007-07-20 16:37
☆これって、つまり、主の祈り、なんですね?
 先日、小学校のホーム化ミングスデイがあって、行った時に久しぶりに主の祈りを唱えました。一瞬、覚えているかどうか冷や汗ものだったのが、結構憶えているもんなんですね...。
文語体で暗記しましたがちょっと、訳文が違うのはどうしてだろう。
天にまします我らが父よ 願わくば御名を崇めさせ給え 御国を来たらせたまえ 
御心の天に為る如く地にも為らせ給え 我らの日用の糧を今日も与えたまえ 我らに罪を犯すものを我らが許す如く我らの罪をも許したまえ 我らをこころみに会わせず悪より救い出したまえ 国と力と栄とは限りなくいつ汝のものなればなり アーメン。 
 そういえば中学の時聖書の時間の試験で突然頭真っ白になっちゃって...先生に『一体どうしたんですか?』って言われたんですけれど、ただただ慢心していたとしかいえませんでした...嗚呼、神様って..厳しいとその時つくづく思いました。

Commented by foggykaoru at 2007-07-20 20:51
mogさん。
このポスト書くときに検索してみたんですが、どうやら「主の祈り」にはいくつものバージョンがあるみたいですよ。
ここにご紹介したのは、たまたま私が知っているもの。
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