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実はリクエストがあったのです

「キリスト教の祈り」シリーズ、最後に控えるのは「主の祈り」のフランス語版。
というのはこれを教えて欲しいというリクエストがあったのです。
だからここまで延々引っ張ったの(爆)

例によって、アクサン記号は省略してあります。
( )内はおおよその発音。単語をつなげて発音する「リエゾン」をどの程度するかは、個人差が大きいのですが、一般的にリエゾンは多ければ多いほど古めかしくておごそかな感じがするので、できるだけたくさんしてみました。


Au nom du Pere, du Fils, et du Saint-Esprit. Amen.
(オー ノン デュ ペール、デュ フィス、エ デュ サンテスプリ。アーメン。)
Notre Pere qui es au cieux,
(ノートル ペール キ エ ゾ スュー)
que ton nom soit sanctifie,
(ク トン ノン ソワ サンクティフィエ)
que ton regne vienne,
(ク トン レーニュ ヴィエンヌ)
que ta volonte soit faite
(ク タ ヴォロンテ ソワ フェット)
sur la terre comme au ciel.
(スュル ラ テール コモー スィエル)
Donne-nous aujourd'hui notre pain de ce jour.
(ドンヌ ヌー ゾジュルドゥイ ノートル パン ドゥ ス ジュール)
Pardonne-nous nos offenses
(パルドンヌ ヌー ノー ゾフォンス)
comme nous pardonnons aussi
(コム ヌー パルドノン ゾッスィ)
a ceux qui nous ont offenses.
(ア スー キ ヌ ゾン トフォンセ)
Et ne nous soumets pas a la tentation,
(エ ヌ ヌー スーメ パ ザラ タンタスィオン)
mais delivre-nous du mal. Amen.
(メ デリーヴル ヌー デュ マル。アーメン。)


フランスにおける「祈り事情」ですが、ずーっと前(たぶん何十年か前)は、主に対する呼びかけが「vous」だったと聞いています。が、日本語や英語で口語体の祈りが一般的になるよりもずっと早い時期から、「tu」で呼びかけるこちらのバージョンが唱えられ始めていたようです。
なにしろ「tu」はタメ口ですから、この祈りには、英語の文語体のような荘重な雰囲気はありません。
でも、英語の口語版に比べると、はるかにきちんとした感じ。

なぜ英語の祈りの2バージョンにはそんなに大きな差があるのか?
一見してわかるのは二人称代名詞の違いです。
文語体の「あなたは」はthou。これの所有格thyを使っている。
be動詞もartという古い形が使われています。(口語ではbe動詞そのものが省略されています。)

それに対して、フランス語では、大昔の祈りでは「vous」(距離を置く二人称、いわゆる敬語)、現在の祈りでは「tu」(身近な相手に使う二人称、いわゆるタメ口)と、気持ちの上の違いこそありますが、どちらも日常会話で使う二人称代名詞である点では同じ。
そもそも、フランス語の人称代名詞に文語体特有の単語は存在しない。

さらに、英語には本来の英語つまりゲルマン系起源の語彙と、ラテン語起源の語彙の両方がある。
ラテン系語彙(temptationとか)は高尚で改まった感じがするのに対し、ゲルマン語彙(testとか)は土着ならではの親しみやすさが漂っているので、そのあたりの単語を取り替えれば、祈り全体の雰囲気ががらっと変わる。

それに対して、フランス語にはラテン語起源の語彙しか無い。(もちろん例外はあるけれど。)
だから、言い換えようがない。
単音節の単語が多い英語口語版に比べて、長ったらしい単語が多いし、この祈り、唱えてみるとリズムが心地良いのです。英語文語版には負けるけれど、けっこうおごそか。でも、フランス語としては、これはごく普通の文体。


それはそれとして、以前から気になっていることが1つあります。
「与える」「ゆるす」に相当する語が
英語では give と forgive
フランス語では donner と pardonner
とういうふうに、きれいに韻を踏んでいる点。
もしかしたら、ではなくて、きっと、forgive と pardonner は、それぞれ give と donner から派生した動詞なのでしょうね。と思っているだけで、確認していないのですが。

by foggykaoru | 2007-07-06 20:38 | バベルの塔 | Trackback | Comments(2)

Commented by リンゴ畑 at 2007-07-07 07:23
フランス語の主の祈り、で思い出せるのは、「禁じられた遊び」で長男が馬にけられて臨終を迎えるとき、大人は主の祈りをきちんと知らないので、末っ子のミシェールが祈るところだけです…。こういう発音なんですね。きれいな音だなあ…。ドイツ語じゃなくて、フランス語を選択すればよかったですよ。
P.S.
昨夜は映画の記事を夢中で読み耽ってしまいました!オ・モ・シ・ロ~イですね!ここまでじっくり観てもらった映画も幸せですよ!でも、管理人殿って、歌舞伎の大向うさんみたいですね!愛がある故に評価が厳しいタイプ。それに、いつも声援しているし。
Commented by foggykaoru at 2007-07-07 21:05
リンゴ畑さん。
「禁じられた遊び」にそんな場面あったんですね。あまりにも昔見たから忘れてました。
私はドイツ語の音も決して嫌いではありません。歯切れがいいし。

PJの指輪映画には、一時期はまりにはまったから。
でも、どうやって直すかなんて考えながら見るのはほんとに邪道。
あんなことをしてしたせいで、指輪映画は私の中で終わってしまったような気がしてます。
ただツッコミを入れながら見るだけにとどめておけば、まだまだ続いていたかも(苦笑)
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