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フロドンとメーンサ

唐突に始まったラテン語&キリスト教の祈りシリーズでしたが、実はこれは「ラテン語のはなし---通読できるラテン語文法」(大修館)をご紹介するための、長い長い前フリだったのです。
この本に関する情報はこちら
大修館勤務の友人によると、最近のヒット本なのだそうな。

これを貸してくれたのは、友人・ネタ大明神でありました。
「ビルボン、フロドンの謎が解けたわよ」と言いながら。
6月の頭には読み終わり、すぐに紹介記事を書きたかったのですが、この本に刺激されたことによって書きたくなった記事があまりにも多く、どうしたって連載ものにせざるを得ない。なのに、折悪しくランサム展で超多忙モード。しかたなく、寝かせておくことにしたのです。

さて、ラテン語といえば、「メーンサ、メーンサ、メーンサム」です。
「メーンサ」つまり mensa とは、「机」の意味。
この本の最初のほうに、この名詞の語尾変化がしっかり載っています。
左が単数形、右が複数形。

主格(机が) mensa / mensae
属格(机の) mensae / mensarum
与格(机に) mensae / mensis
対格(机を) mensam / mensas
奪格(机から)mensa / mensis
呼格(机よ) mensa / mensae

かのチャーチルがラテン語の最初の授業でこの語尾変化を習い、「呼格って何ですか」と先生に質問したら、「机に呼びかけるときに使う格だ」という答えが返ってきて、「机に呼びかけるなんて、ありえないじゃないか」と慨嘆した、という逸話が紹介されているのですが・・・

アーサー・ランサムという英国児童文学作家の作品中で、主人公の子どもたちが「メーンサ、メーンサ、メーンサム」と唱えています。
これはいったい何格?

確認してみました。「女海賊の島」の256ページ。
「Mensa, mensa, mensam メーンサ、メーンサ、メーンサム」(机の、机よ、机を)がまるでちんぷんかんぷんであることに気がついた。

・・・・間違ってるじゃん。
「机の」は mensae。mensaは主格。「机の」じゃなくて、「机が」です。
二番目のmensaは奪格か属格のどちらか。「机の」という訳が正しいのなら、属格ということになります。でも、属格の場合、アクセントの位置が変わって「メンサー」になるのです。「メーンサ」が正しいのだとしたら、奪格なのだから、「机から」です。
どちらなのか?

これを解く鍵は325ページ。
ここでは、生徒たちが「机」の複数形の語尾変化を唱えています。
ペギイがあとをひきうけて……「Mensae, mensae, mensas……」でつっかえると


これは「主格→呼格→対格」という順番です。

だから、「Mensa, mensa, mensam」も「主格→呼格→対格」という順であるはず。ゆえに、2番目のmensaは呼格。ゆえに「机よ」という訳は正しいが、発音は「メンサー」としなければならない

大学でラテン語をやったとき、教科書の語尾変化表と「女海賊」を比較対照したかどうか、全く覚えていないのですが、私のことだから、たぶんやったのでしょう。
で、たぶん、「ここ、変だ!」と思ったはずです。
思っても、どうすることもできなかった。
今だったら、報告するところがあるわけですが。

神宮先生に心から感謝しているランサマイトたちの愛の結晶なのだけれど、先生ご自身にとっては嫌味としか思えないかもしれない「ランサム・サガ補完計画」はこちら。


そうそう、「ビルボン、フロドンの謎」については、「療病院の中庭」にアップしてあります。ほぼ1年ぶりの更新です。。


この本に関するランサムネタ、さらに続きます。

by foggykaoru | 2007-07-07 20:15 | 指輪物語関連 | Trackback | Comments(8)

Commented by リンゴ畑 at 2007-07-07 21:04
もう、このブログが面白くて、毎日「UPはまだ~??」と扉を開けております!もしや、管理人殿はローレライ?ここばっかり見てて、気がついたら骨になっちゃうのかなあ…。
今日もオモシロ~イ!「療病院の中庭」を見るまで、ビルボン&フロドンって、訛ってるかと思いましたよ!お友だちも深い方なんですね~!でも、こういう読者ばかりだと、原作者も翻訳者も、気になって頭がハゲてしまうかもしれません…。
Commented by foggykaoru at 2007-07-08 07:42
リンゴ畑さん。
楽しんでいただけて嬉しいです。
このシリーズを早く終わらせないと、その後に読んだ本の感想文が書けないので、必死になって片づけ中でして(苦笑)
しかし、、、、「メンサーは奪格です!」という指摘が即座にあって、今、慌てて本を見直したら、しっかり間違えてました。
指摘してくださった方、ありがとうございます。

お友達、深いですよ。
専門が仏文で、「フランス語版指輪物語」トップページの下のほうに、グリフォンのウンチクを語っている人。彼女は私にとって指輪の師匠です。
彼女ともう1人、仏文学研究者で指輪マニアという友人がおりまして、あの「フランス語版指輪物語」は、一般ウケしなくてもいい、彼女たち2人さえ楽しんでくれればいいと思って作ったコンテンツなのです。
Commented by crann at 2007-07-11 20:26
いえ、充分にウケてますよ、フランス語かじったどころか舐めたくらいですけど。

かおるさん、わたしフラ語版ベルサイユのばらってのを手に入れました(笑)
たぶんPCでしか再生できないと思いますけど。
いまマリー・アントワネットがマダム・デュ・バリーと熾烈な宮廷覇権争いをしているところです。
おりしもパリ祭間近、このまま一気にフラ語吹き替えで「お勉強」しようかしら(笑)
日常に全然役に立たないけど。
Commented by foggykaoru at 2007-07-14 22:28
crann@leiraniさん。
>フラ語版ベルサイユのばら
その本、知ってます。。。
現代の日常には役に立たなくても、18世紀のベルサイユの日常には役に立ったはずです(爆)
Commented by crann at 2007-07-15 20:17
かおるさん

本じゃなくてアニメ・・・見ます?なかなかすごい解説がついていて、そっちがオオウケです。昨日の某お茶会で見たい♪という方がすでに二人も・・・(笑)
Commented by foggykaoru at 2007-07-15 20:49
crann@leiraniさん。
へえ、フランス語版のアニメなんですか? アニメ自体は日本製?ですよね?
ネタじゃなくて、マジな観点から、チェックしてみたいです。場合によっては購入するかも(爆)
Commented by crann at 2007-07-15 22:22
元はもちろん日本製ですし、日本語も入ってますが、フランス語吹き替え・字幕があるのでとある方から譲っていただきました。その人の家では再生できなかったので(爆)
解説もすべて!フラ語で「正規フランス版」だそうです。
さすが、第2のオタクの国?(笑)
Commented by foggykaoru at 2007-07-17 20:53
cramm@leiraniさん。
ほうほう。FNACで検索してみました。
これ↓でしょうか? もしかしたら買うかも・・・?!
http://www4.fnac.com/Shelf/article.aspx?PRID=1830967&OrderInSession=1&Mn=30&SID=57069293-6ebf-4d58-0f5c-b8a7ddedad56&TTL=180720071348&Origin=FnacAff&Ra=-3&To=0&Nu=12&UID=19472F08A-8571-6906-120B-C78CB71752AE&Fr=0
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