Morse, Morsian, Martian
2007年 07月 08日
「ラテン語のはなし」で見つけたもう1つのツボ。
ラテン語は名詞が語尾変化する。固有名詞さえも。
英語で「ブルータス」と発音される人物の名前も、以下のように格変化する。
ブルータスが Brutus
ブルータスの Bruti
ブルータスに Bruto
ブルータスを Brutum
ブルータスから Bruto
ブルータスよ Brute
だから名詞を覚えるときは、主格だけを覚えても使えない。
たとえば英語だったら、「death, 死」と覚えればいい。
フランス語だったら「mort, 女性、死」と覚える(この名詞は女性名詞なので)のだが、ラテン語の場合は「主格、属格、性、意味」の順番に列挙して覚えなければならない。
だから
「mors, mortis, 女性、死」と覚える。
英国の推理作家コリン・デクスター作のモース警部シリーズ(好きです♪)に、これが使われているのだそうです。
監察医がモースを「モース、モーティス、女性」と呼ぶ場面があるのだそうで。(「女性」がwomanではなく、名詞の性を表すfeminineであるのがミソ)
ところが、翻訳者はこれがラテン語学習の流儀にひっかけた駄洒落であることがわかっていないらしい・・・
翻訳という仕事はたいへんです。ということに加えて、ここで思い出したことが。
英国の児童文学作家アーサー・ランサムの作品「長い冬休み」の中に、これに似た場面があるのです。
見知らぬ子どもたちを火星人に見立て、通信してみたDきょうだいに、火星人からの応答があります。どうやらそれはモールス信号らしい。
ここのディックの台詞は、原文ではこうなっています。
Morse, Morsian, Martian. Naturally we don't know their language.
モース、モーシアン、マーシアン。
モース、モーティス、女性。
なんとなく似ていて面白いわねと、ネタ大明神に話したところ、彼女からさらなる考察が。
「ああいうふうに、音が似た単語を列挙するのは、ラテン語学習で身につけた癖なんじゃない?」
ふーむ。
そうかもしれない。そうでないかもしれない。
ディックがラテン語を勉強しているかどうかということとは関係なく、ランサム自身はラテン語をやっていたのだから、そのせいで、こういう台詞が自然に出てきてしまったということは考えられます。
ちなみに、この「モース、モーシアン、マーシアン」は訳出されていません。
「モールス、モールス人、火星人」と訳すことは可能ですが、日本語では意味をなさない。
悩んだ末、カットする道を選んだのだろうと思います。
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「ラテン語&キリスト教の祈り」に関する記事一覧
・「アヴェ・マリア」の歌詞(ラテン語)及び、そのフランス語訳と日本語訳(文語体)
・ラテン語の「こんにちは」
・「アヴェ・マリア」の日本語訳(口語体)
・「主の祈り」英語訳と日本語訳(文語体及び口語体)
・「主の祈り」フランス語訳
・ラテン語の格変化+ランサマイト向けネタその1
・ラテン語の格変化+ランサマイト向けネタその2(この記事です)
by foggykaoru | 2007-07-08 08:24 | バベルの塔 | Trackback | Comments(21)
もうすっかり、管理人殿のブログにハマってます。近くに住んでいらた、肩もんだり、お茶入れたりして、「早く続きを!」と騒いでいることでしょう。
でも、>Morse, Morsian, Martian.って字面を読むと、非常にありがた~く思いましたが、管理人殿のなぞ解きを読んだら、「な~んだ、オヤジギャグじゃん!」って感じです。神宮先生が、ランサムのオヤジな部分を無視して訳してくださって、ホントに良かった…。
でも、「ラテン語学習のおかげでそういうふうに唱える癖がついてるかも」というのは、鋭いなあ!
火星人についてそんな言葉遊びをしていたとは、知りませんでした。確かにこれは訳しづらい。モース警部の方は、訳注でも入れてあればいいのに、もったいないですね。こんなのを訳すのはとても難しいことだとは思いますけれど、読者としては、やはり文章がきれいで、なおかつ必要な訳注が付けられるくらい学のある人に訳してほしいと思います。
なにしろこのシリーズ。忘れないうちに終わらせなきゃ、ということで、大慌てで連載した次第。
これからはもうちょっとのんびり行きます。
音遊びというのは翻訳しようがないものが多いですからね。神宮先生も諦めちゃったんでしょう。
私も実は、あの朗読テープを聴いて、初めて気付いたんです。びっくりでしたよ。
「モールス信号は知らない→ぼくたちにとっては火星語」という考え方にはそんなに違和感無かったんですけどね。
ねっ、ネタ大明神さんって鋭いでしょ。二人で族会員になろうかと思案中。
でも、族名が決まらない・・・。
メーンサ族ってのは、おこがましいし。なにしろこんな団体↓がある。
http://www.mensa.org/nationalinfo.php?country=27
動詞活用表族ってのは座りが悪いし。
ネタ大明神は「海賊」とか口走っていたけれど、それは違うし、別の意味でおこがましいし。
へええ、そういう遊び方、一般的なんですか?!
ストーリーに重大な関係が無ければバッサリと切り捨てるの方法ですよね
アガサ・クリスティーですけれどハヤカワミステリーでは、いきなりネタ晴らしの訳を苦し紛れにしていたのを微かに覚えています
いえいえ、あやまらられることなんかありませんよ。
「オヤジギャグ」というのは、レベルの低いしょーもないものだけを指すと思ってるんですが、世間では違うのかな?
英語は言葉遊びが豊富です。他の外国語は知りません。
パリンドローム(回文)、タントゥイスター(早口言葉)、スクラブルもそうだし(道具がいりますが)、昔、会社にやってきたベルリッツかどこかの講師は次のようなゲームを紹介してくれました。
みんなで輪になって座る。
一人ずつ順にアルファベット一文字を言って、前の人に追加する。
最終的に4文字以上の単語を作ったら終わり。
ただし、終わらせた人が負け。
たとえばこんな感じです。
Aさん「S」
Bさん「SC」
Cさん「SCE」
Dさん「SCEN」
Eさん:Eと言ったら負けなので、うんうん考えるが降参。
Fさん「SCENA」
一同きょとん!
Fさんは SCENARIO と完成させ、確かにそういう単語があることを証明する。
「私の一番目は、貴金属。(→or 金)
私の二番目は、天国の住人。(→ange 天使)
私の全部は、おいしい果物。(→orange オレンジ)」
ところで、dieuが大文字から始まるのは、「唯一全能の神」を示すときだと思います。
1音節ずつだとちょっと違いそうですが。
前にARC会報でランサム・ダブレットを考えた人がいたのを思い出して見つけました。

