六嶋由岐子著「ロンドン骨董街の人びと」
2007年 07月 19日
だいたいが、洋の東西を問わず、古美術の世界というのは、きれいごとでは済まないはず。
その上、階級社会の根強く残る英国で、王室に直結する、最上流階級のまっただ中に身を置いたのである。生半可な体験ではない。ネタとしては極上である。
第1章では、留学生としてロンドンに最初に居を構えたイーストエンドの実情が描かれている。
イーストエンドというのは、ガイドブックにはおよそ言及されておらず、また、企業の駐在員としてロンドンに在住する日本人の大多数が、一度も足を踏み入れることなく終わる地区。
これが実にすさまじいというか、ヤバイ場所なのである。
最近、日本は「格差社会」になったと言われるが、英国に比べればまだまだなのだということがよくわかる。
第2章からはうってかわって、古美術とそれを取り巻く人々の華麗な世界。読むうちに、「最も英国らしい英国」の伝統の厚みと品格が浮き彫りになっていく。そして、そのいやらしさ、傲慢さも。
英国のいやらしさ。
これをはっきりと描き出しているという点で、このエッセイは他に類を見ない。と同時に、その筆致に、英国に対する深い愛がこもっているという点でも比類が無い。
特定の外国に心惹かれ、その国との関わりが深くなると、どうしてもその国の嫌な面も見えてくる。単に憧れているだけでは済まなくなってくるのだ。でも、つきあいが長くなれば、その国がいわば自分の一部になってしまい、切り捨てることはできなくなる。切り捨てるということは自分を否定することになるから。悩み苦しんだあげく、欠点や嫌なところを現実として見つめ、認識しつつ、「いろいろあるけれど、やっぱり好きなのだ」という境地に達するのだと思う。
真に読む価値がある海外事情エッセイとは、そのレベルのものなのではないだろうか。
だから、英国ファン必読書だと思うけれど、初心者マークの人にはどうなのかなあ。英国に対する無垢な憧れに冷水をぶっかけることになるかも。
そのかわりに(?)年季の入った英国ファンには自信を持ってお薦めする。
この本に関する情報はこちら
これ以外に、最近読んだ海外事情のエッセイのうち、出色だと思ったのは以下の2作。
・パリふんじゃった
・パリ住み方の記
by foggykaoru | 2007-07-19 19:34 | エッセイ | Trackback | Comments(22)
>古美術の世界というのは、きれいごとでは済まないはず。
>ネタとしては極上
>切り捨てるということは自分を否定することになるから。悩み苦しんだあげく、欠点や嫌なところを現実として見つめ、認識しつつ、「いろいろあるけれど、やっぱり好きなのだ」という境地に達するのだと思う。
こういう考え方をされるところが、すごくいいな!と思います。もう、しっかりファンです。
本当に、国を好きになるのも、友人を好きになるのも同じですよね。私は前に国際交流の仕事をしていて、アテンドの際に憧れていた国々の人の嫌な面をどっさり見てしまい、若さゆえに一時は大嫌いになったのですが、のちにやはり嫌いになりきれないことに気がついたのでした。いや、友人の場合は欠点ごと好きだから、国も同じことかもしれません。長所と短所って、1枚のコインの表と裏みたいなところがありますよね。欠点を否定すると、長所にもシミが見えるような気がします。
この前のテロ未遂事件の容疑者が全員医師だったのも、サッチャー以後の医療改革の結果、医療制度が崩壊したので、その穴埋めの為に海外からの医療技術者の移民審査を簡素化したために不穏分子が紛れ込んだのだだとか…
誰の言葉でしたか、「全ての国は、世界から見れば特異な国である」
「普通の国」なんて存在しませんね
これは読んでみたいと思わせますね。わたしは住んだことはありませんので、そこまでの階級社会もいやらしさも見てはいませんが、延べ日数では3ヶ月以上はイギリスにいる計算になります。警察署に行ったこともあるし、精神病棟に行ったこともあります。現地の事務所で5週間ほど働いたこともあります。やっぱりイギリスが好きです。
友人として付き合うにはいい人たちですが、あまり仕事の付き合いはしたいとは思いませんね。
どーもどーも気に入っていただけて嬉しいです(テレテレ)
こういうことを考えるのは、長年フランスやフランス人に接してるからですよ。フランス人まっただ中で暮らしたことこそないけれど。
イギリス人のほうがフランス人よりも一般的な日本人にはウケがいいと思うんです。
確かにフランス人には欠点がたくさんあるし。でも、フランス人は自分の欠点を隠すのが下手だと思うんですよね。
ってか、イギリス人が上手過ぎるのかもしれない。。。
この本、読んでから10日以上たってるので、詳細はすっかり忘れてしまっています。もしかしたら私の感想文はずれてるかもしれないので、期待はずれだったらゴメンナサイ。
あんぐろふぁいるさんはあんぐろふぁいるさんなのだから、イギリス好きじゃなくちゃね♪
まあ、日本にも人種差別はあるから、あんまり偉そうなことは言えませんけどね。
この本の中にも「イギリス人が(貧しくてかわいそうな)外国人」に対して持つ優越意識のことが書かれています。
よそから見ると、自分の国と違う良い点(または悪い点)が目立ってしまうだけで。
英国好きがしばらく続いたあとで、それをいったん休んで北欧に目が向きましたが、良いところばかり見えるのをどこかで、私、まだ初心者なんだろうなー、って思っていました。スウェーデンもフィンランドも、自殺する人はたくさんいるということだし。。
日本のことも、「何から何まで好き!」と思っている人は他の国にたくさんいることでしょうね。
イギリス人自身もそういう犯罪に関する本を読むのが大好きだったりします。確かにちょっと風変わりな所のある人たちだと思います。彼ら自身もその点は自覚しているようです。
そういうエキセントリックな所は置いておいても、一緒に仕事をしてみると自分の価値観が通用しない場面に直面する事が、ままあります。日本人にとってはなかなか理解しにくい所があって、自分たちの考え方の延長でつきあおうとするとトラブルになる事が多いようです。
どうしても自分の価値観に引きつけて相手のことも考えがちになるものですが、それは間違ったアプローチです。日本の外交などを見ていても、どうもそのへんを分かっているようで分かっていないんじゃないかと感じる事もありますね。
フランス人が自分の欠点を隠すのが下手なんじゃないかと言うご指摘は、僕も同感です。フランス人とイギリス人を比べるとかなり面白いですね。
価値観の違いは、歴史や習慣に拠っていることが多く、お互いに理解しづらいものです。理解できなくても尊重できればいちばんいいのですが。
日本で初めて起きた殺人事件と同じパターンの事件が、5年ほど前にイギリスで起こっていました。新聞で読んで怖いなあと思ったことが、日本で起こったことにショックでした。こういうグローバル化はうれしくないものです・・・
>自分たちの考え方の延長でつきあおうとするとトラブルになる事が多いようです。
そうなんでしょうねえ。こちらの常識が向こうにとっては非常識になることはたくさんあるのでしょうねえ。
趣味?でつきあうぶんには、そういうことに腹を立てたら、それきりにできるけれど、仕事が関わってくると、そういうわけにはいきませんよね。
要するに、すべては己を知ることから始まるのですね!(笑)
私も以前にその本、読みました。かなり気に入った一冊です。どんな国にだって人にだって良い面と悪い面がある。憧れだけではなくどっぷりと結果、冷静に書かれていますよね。私も常に、忘れないようにしたいと思っています。
「魔女の宅急便」のように、いろいろあるけれど、この街が好き、といえることができるかどうかですよね。
私のブログ、チェコの住んでいる人のなかでは一番と言っていいほど辛口だと思いますよ…。勿論、控えめに書いてはいますけれど。

