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アレクサンドラ・リプリー著「スカーレット」(新潮社)

たまには本の話題を出さないと(苦笑)

「あのスカーレットとレットがついに帰ってきた!」と話題になって既に久しい。森瑤子氏が翻訳したということも、当時はかなりの話題になったものだが、マーガレット・ミッチェルの「風と共に去りぬ」とは違って、今やすっかり忘れ去られてしまった。まあ、これは当初からある程度、予想できたことかもしれないけれど。それでも、スカーレットの「明日は明日の風が吹く」という台詞に感涙したことのある人にとって、楽しめる作品ではある。

だが、ここでこの作品をとりあげることにしたのは、小説として優れているということからではないのである。

恋愛小説としては、この程度のレベルのものは、たぶん他にもごまんとあるのではないかと思う。それよりも私にとって、この作品の価値は、アイルランド史を教えてくれたことにあった。そこにスカーレットとレットの恋路がからんでくるのだから、これはかなりオトク感があるというものだ。

オハラ家はアイルランド系移民。その農場「タラ」の名前の由来は、ダブリンにほど近い、非常に有名な地名であり、観光名所になっている。著者リプリーが目をつけたのはその点だった。執筆前、彼女はアイルランド各地に取材旅行をしたに違いない。アイルランドに行ってみて、私はその感を強くした。肝心のタラには行けなかったんだけど(涙)

というわけで、「風と共に…」が好きで、アイルランド旅行の前に手っ取り早く、しかも楽しく歴史を勉強したい人にお薦め。ただし、恐ろしく厚いです。けれど、「風と共に…」が読めた人なら大丈夫。(もちろん)どちらかというと女性向け。
「愛蘭土紀行」と併せて読めば、鬼に金棒!?

by foggykaoru | 2005-02-13 09:48 | 過去に読んだお薦め本 | Trackback | Comments(8)

Commented by shou20031 at 2005-02-13 11:40
わお。欧米諸国には足を踏み入れることを禁じられいる私には縁がないのかな~アイルランドか~たしかアメリカではアイリッシュってセレブの条件なんですよね。違いましたっけ?またわけわからなくなってしまった。また来ます。また小説覗きに来てくださいね。
Commented by foggykaoru at 2005-02-13 20:28
shou20031さん、どうして欧米諸国に行くのが禁じられているんですか~? アメリカのセレブはWASPと呼ばれます。えっと、ホワイトで、アングロ・サクソン、それで、プロテスタント。アイリッシュは、長いことイギリスの属国で、貧乏の子沢山というイメージでさげすまれていたし、カトリックだからアメリカの白人の中でも、決してメジャーな立場じゃないんですよ。
Commented by ケルン at 2005-02-14 20:38 x
こんにちは、この本、分厚いけど、私は3日くらいで読みきった記憶が・・・
他のことは手につきません。
『風と共に去りぬ』のファンの間では賛否両論みたいですが、やめられない止まらないのは、ほんとうです。

『愛蘭土紀行』(2のほう)と並べてお薦めするとしたら、『ケルトの島・アイルランド』(堀淳一、ちくま文庫)も一緒にどうぞ。歴史色は薄くなるけれど、あの島が愛しくなりますね。
Commented by foggykaoru at 2005-02-14 21:23
ケルンさん、本を読むのが遅いとおっしゃってたと思うのに、この本は早かったんですね!
>ケルトの島・アイルランド』
ほお、メモメモ・・・。
Commented by Chica_Chubb at 2005-02-14 22:16
こちらでは初めまして。丸面(Chubb)です。
母(『風と共に去りぬ』の小説も映画もわたしに勧めてくれました)が『スカーレット』を読んで、かおるさんと同じ意見だったのに驚きました。
話の内容には「無理矢理なところもあるけどね、よく調べてあるわぁ」と言っていました。
アイルランドには一度も行ったことがない母ですが、アイルランドの歴史や風習については、この小説から色々引っ張ってきて教えてくれました。
・・・ところが、わたし自身はまだ『スカーレット』を読んでいません(あんまり色々聞いたせいかしら)。
早々読んでみようとおもいます!楽しみが増えました。
Commented by foggykaoru at 2005-02-15 20:49
丸面さん、ようこそ! おお、丸面さんのお母様も!!!
実は、私がこの本を読んだのは、アイルランド旅行の計画をしていたとき、これを読んだばかりだった母に「歴史がわかるからぜひ読んでいきなさい」と勧められたからなんです。ほんとうに適切なアドバイスでした。
Commented by KIKI at 2005-02-18 22:01 x
「スカーレット」懐かしい! 5年に一度は「風と共に去りぬ」を読み返し
(読書に関していえばかなりのリピーター派なんです)アトランタのミッチェル博物館にも行った私ですから、読みましたが・・・・・・ ま、本人が続編を書かないならあんなものですよね・・・。
とはさておき、読んだ当時はゴールウェイの響きが気に入り、いつか行ってみたいなぁと思った記憶がかすかに残ってます。

小説を読んで歴史や文化が分かるものってお得感(?)がありますよね。
Commented by foggykaoru at 2005-02-20 08:09
KIKIさん、そんなに読み返していらっしゃるんですか! 私は中学生のときに一気読みしたっきりです。今、この年になって読み返したら、いろいろな感慨がありそう。ゴールウェイといえば、私はあそこで競馬にぶつかりました。そのおかげで町中の宿がなくなって、いられなくなってしまったんです。で、ああこの競馬も取材したんだろうな、、、とある種の感動を覚えたのでした(苦笑)
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