アレクサンドラ・リプリー著「スカーレット」(新潮社)
2005年 02月 13日
「あのスカーレットとレットがついに帰ってきた!」と話題になって既に久しい。森瑤子氏が翻訳したということも、当時はかなりの話題になったものだが、マーガレット・ミッチェルの「風と共に去りぬ」とは違って、今やすっかり忘れ去られてしまった。まあ、これは当初からある程度、予想できたことかもしれないけれど。それでも、スカーレットの「明日は明日の風が吹く」という台詞に感涙したことのある人にとって、楽しめる作品ではある。
だが、ここでこの作品をとりあげることにしたのは、小説として優れているということからではないのである。
恋愛小説としては、この程度のレベルのものは、たぶん他にもごまんとあるのではないかと思う。それよりも私にとって、この作品の価値は、アイルランド史を教えてくれたことにあった。そこにスカーレットとレットの恋路がからんでくるのだから、これはかなりオトク感があるというものだ。
オハラ家はアイルランド系移民。その農場「タラ」の名前の由来は、ダブリンにほど近い、非常に有名な地名であり、観光名所になっている。著者リプリーが目をつけたのはその点だった。執筆前、彼女はアイルランド各地に取材旅行をしたに違いない。アイルランドに行ってみて、私はその感を強くした。肝心のタラには行けなかったんだけど(涙)
というわけで、「風と共に…」が好きで、アイルランド旅行の前に手っ取り早く、しかも楽しく歴史を勉強したい人にお薦め。ただし、恐ろしく厚いです。けれど、「風と共に…」が読めた人なら大丈夫。(もちろん)どちらかというと女性向け。
「愛蘭土紀行」と併せて読めば、鬼に金棒!?
by foggykaoru | 2005-02-13 09:48 | 過去に読んだお薦め本 | Trackback | Comments(8)

他のことは手につきません。
『風と共に去りぬ』のファンの間では賛否両論みたいですが、やめられない止まらないのは、ほんとうです。
『愛蘭土紀行』(2のほう)と並べてお薦めするとしたら、『ケルトの島・アイルランド』(堀淳一、ちくま文庫)も一緒にどうぞ。歴史色は薄くなるけれど、あの島が愛しくなりますね。
母(『風と共に去りぬ』の小説も映画もわたしに勧めてくれました)が『スカーレット』を読んで、かおるさんと同じ意見だったのに驚きました。
話の内容には「無理矢理なところもあるけどね、よく調べてあるわぁ」と言っていました。
アイルランドには一度も行ったことがない母ですが、アイルランドの歴史や風習については、この小説から色々引っ張ってきて教えてくれました。
・・・ところが、わたし自身はまだ『スカーレット』を読んでいません(あんまり色々聞いたせいかしら)。
早々読んでみようとおもいます!楽しみが増えました。
実は、私がこの本を読んだのは、アイルランド旅行の計画をしていたとき、これを読んだばかりだった母に「歴史がわかるからぜひ読んでいきなさい」と勧められたからなんです。ほんとうに適切なアドバイスでした。
(読書に関していえばかなりのリピーター派なんです)アトランタのミッチェル博物館にも行った私ですから、読みましたが・・・・・・ ま、本人が続編を書かないならあんなものですよね・・・。
とはさておき、読んだ当時はゴールウェイの響きが気に入り、いつか行ってみたいなぁと思った記憶がかすかに残ってます。
小説を読んで歴史や文化が分かるものってお得感(?)がありますよね。