増田義郎著「インカ帝国探険記--ある文化の滅亡の歴史」
2007年 09月 07日
メキシコ旅行に持っていった本です。「メキシコはインカじゃなくてアステカだろう!」と突っ込む方もいらっしゃることでしょう。でも、同じ著者の「古代アステカ帝国---征服された黄金の国」はずっと昔にすでに読んであったので。
「アステカ」はすでに絶版のようですが、こちらは今も版を重ねています。初版1975年で、私が古本屋で買ったのは1997年19版。ロングセラーなのですね。
「探険記」と銘打っていますが、著者が探険した記録ではありません。インカ滅亡史。副題のほうが正しい。
改めて思ったのですが、中南米のインディオというのは、スペイン人にとって「カモネギ」のような存在だったのでしょうねえ。うなるほどの金銀財宝を持っていながら、馬も鉄を知らなかった。
それにしても、100だか200の手勢で数万のインカを征服しようなんてのは、恐るべき暴挙であり、兵士はもちろん、隊長ピサロ本人も相当ビビっていた。
そのピサロを支えたのが、アステカ征服者である先輩コルテスの助言だった。
その助言とは「皇帝を生け捕りにしろ」
これに成功した瞬間、インカは実質的にスペインのものになった。
もちろん、そんな助言をもとに周到に準備したにしろ、最後の最後は一か八かの賭けだったのだが。
そんなスゴイ奴・ピサロだが、スペイン人同士の内輪もめの中であっさり命を落とす。あらま。
一方、インカの生き残りは、その後も抵抗を続ける。
一掃されたのは皇帝が捕まってから数十年後。
そして、20世紀。アメリカ人学生によるマチュピチュ発見。
すでに読みかじり・聞きかじりの知識があったので、新鮮な驚きに満ちているわけではありませんでしたが、それでも非常に楽しめました。真面目な勉強にも役立つだろうし、エンターテインメントとしてもお薦め。中南米史研究のパイオニアである著者が若かりし頃、初めてインカを旅して、その感動をもとに渾身の力で書いたのだろうなあと感じさせる本です。
著者は父の同年代で・・・というか実は友人だったりします。 (注・父はただのサラリーマン。) あの世代で中南米にハマるというのは、かなり珍しかったようで。 (だからこそこの分野のさきがけになったわけですが。) それはそれとして、著者が中南米の旅の折りにインカを訪れたのは1950年代。海外渡航なんかめったなことではできなかった時代です。しかも(アメリカやヨーロッパではなく)中南米に行ったのです。これはすごいことですよ。長年の憧れの地を踏んだ筆者にとって、夢のような日々だったに違いありません。
毎年海外旅行できる私@えせバックパッカーが幸せ者であることは十分自覚していますが、その幸せの代償として、失ったものもあるのだと思います。
憧れや夢は、すぐにかなえられないほうがいい。
人間が一生の間に旅で味わえる感動の大きさは決まっている。つまり、1回の旅で味わえる感動の大きさは、旅の回数に反比例する(というのは言い過ぎかな?)
by foggykaoru | 2007-09-07 10:08 | 西洋以外の歴史 | Trackback | Comments(4)

白人=神と勘違いしたのが悲劇の始まり…
毎年の旅行…とても羨ましいですヽ(^o^)丿