河村幹夫著「われらロンドン・シャーロキアン」
2007年 09月 26日
タイトルから、ホームズ関連のことだけが書かれているのだろうと予想したのだが、読んでみたらむしろ、「ホームズをだしにした英国文化や英国人気質についての考察」という趣だった。
感心するのは著者の好奇心の強さと積極性、精神的な強さ。
まず、ロンドン・シャーロック・ホームズ協会に入会すること自体がスゴイ。だいたいがシャーロキアンというのは「血中英国人度」が平均的英国人以上に濃そうな感じがする。その集団の中に、日本人としてたった1人で入っていったわけで、当然、楽しい体験ばかりではない。でもメゲない。失敗しながらも、次第に受け入れられていく。
「黒い博物館」と呼ばれるスコットランドヤード博物館潜入記もスゴイ。ここは一般公開していないのに、英国貴族である友人のコネを使ってもぐりこんでしまうのだ。この話、最後のオチもいい。
ロンドンをガイドと一緒に歩いて廻る「ロンドン・ウォーク」の様子も興味深い。このツアー、歩き回るのは疲れそうだし英語を聞き取るのが大変そうだ、、、と思って今まで食指が動かなかったのだが、次回(っていつだ?)は参加してみようかなあなんて思ったり。
バスカーヴィルの舞台であるダートムアにもいたくそそられる。
全くの荒れ地で、耕作はほとんど行われていない。(中略)普通の草地に見える所が、水分を多く含んだボッグと呼ばれる湿地になっていて、うっかりすると体が沈んでしまう。(中略)日没を過ぎたら運転しない方が良い。星明かりの他には何もなく、方向感覚がつかめない。(中略)気温も急に下がり、夏でも凍死する人がいるほどである。誰か車で連れていってくれませんか?
びっくりしたのは次のくだり。
ロンドンから北東に進路をとると(中略)海軍基地のあるハリッジに着くが、ここは「最後のあいさつ」でホームズとワトソンが最後のご奉公として力を合わせてドイツのスパイをつかまえた場所である。そこから北に上がって行くとフェン(沼沢地帯)と呼ばれる低地に出る。中心地ノリッジの東北で海に近い所が「踊る人形」と「グロリア・スコット号」の舞台である。そうだったんだ~
「シャーロキアンな旅」と銘打って英国に行くほどのシャーロキアンではないけれど、「ランサムな旅」にシャーロキアンな香りを混ぜてみるのは悪くないかも。
ところで、こういう本のあとがきは言わずと知れたリンボウ先生。
「世界には架空の文学など掃いて捨てるほどあるのに、どうしてホームズ物だけが、こういう破格の取り扱いを受けるのだろうか」とおっしゃるのですが、「だけ」じゃないですってば先生。トールキンとかすごいですよ。ランサムだって。
ちなみに、1994年現在、日本シャーロック・ホームズ・クラブの会員は千数百人なのだそうで。知名度という点でホームズの足元にも及ばないランサムですが、そのファンクラブであるARCは相当善戦しているような気がします。
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by foggykaoru | 2007-09-26 20:38 | 推理小説 | Trackback | Comments(10)
この方、噂に聞きますがすごい方ですよね。小林東夫妻もすごいですけども。
オタクの祭典、コミケットに行くと、オタクなシャーロッキアンたちが、旅同人誌を出しています。
なかにはネパール編なんてのもあります。
わたしなんて全然かないません。
ちょっと自慢なのは、ベーカー街のホームズミュージアムでグラナダホームズのテーマと弾いてみたことくらいですか・・・(笑)

シャーロキアンの裾野は広いですね
聖典で一行程度しか触れてない事を一冊の小説にして売られています
誰か、ランサムで小説を書いてくれたら嬉しいのですが…
書かれなかった13番目の話も気になりますし、ウナギ族がオオバンクラブと遭遇するのも「有り」だと思っています
荒唐無稽な話だったら、月照号がイギリスに帰るまでの冒険譚が楽しそう
生々しくて受け入れそうにないのが、十年後の第二次世界大戦を舞台にした話でしょうね
朝から、色々と妄想して失礼しましたm(__)m

ネパールにホームズの足跡を尋ねるなんて!
カニ島に行こうとするようなものじゃないですか!! さすがオタクの中のオタク!!
>ちょっと自慢なのは、ベーカー街のホームズミュージアムでグラナダホームズのテーマと弾いてみたことくらいですか・・・(笑)
そりゃ十分、自慢するに値します♪
>月照号がイギリスに帰るまでの冒険譚
ふっふっふ・・・
実はあるんですよ。ARCの会員作で。
そーゆー作品が載っているのが、会報「1929」なのです。
会員になると年に2回、送られてきますよ~

かおるさん、かおるさん>
私から見れば、ARCの方の好奇心の強さと積極性と冒険心(精神的強さと言っていいと思う)は、十分にすごいと思うんですけども。
私はちょこちょこ英国海洋小説のあとをたどっていますが、ARCの皆様にははるかに及ばない…と先日のランサム写真展を拝見して思いましたですよ。
でもそんな根性なしの私でも、海洋小説のおっかけしたおかげでたまにすごいとか言われちゃったりするんです、で、思うんですけど、
>好奇心の強さと積極性、精神的な強さ
これって基本的には英国人気質なんだと思う。だから彼らは探検家として七つの海を越えたんだろうと、で、そういう英国人の小説に惹かれる人は、シャーロッキアンにしてもランサマイトにしても、多少なりと同じような基質を日本人でも持っていて、だから結局、及ばずながら後を追う…みたいなことになるんじゃないかと。
展示された写真や小ツバメは、ARC会員所有の至宝ですからね。
写真展開催自体は「みんなでやれば怖くない」という、きわめて日本人的なノリがあったことは否定できないと思います。
っていうか、自ら希望してスタッフになったのは「みんなでやることを思う存分楽しもう」という気持ちを持っている人たちばかりだったから。
もしもロンドンに数年間在住するということになったら、血迷ってTARSに入会したくなるのかなあ・・・

>写真展開催自体は「みんなでやれば怖くない」という、きわめて日本人的なノリがあったことは否定できないと思います。
「みんなでやればできる」でしょうか・・・
>もしもロンドンに数年間在住するということになったら、血迷ってTARSに入会したくなるのかなあ・・・
日本在住でも入会していいんですよ~~。
「血迷って」なんて、まるで他人事みたいに(泣) 私の見た感じ、日常的な場面では、ARCのほうが多くのTARSよりも血中ランサム度は高いと思います。
「怖くない」っていうのは語弊があったかな。
でも、河村さんみたいに1人でロンドン・シャーロック・ホームズ協会に入ることに比べたら、全然怖くないでしょ。
>他人事みたいに(泣)
あ、またまたごめん。でも現に私入ってないし。
第一、英語の会報が送られて来ると思うとちょっと荷が重いんです・・・