ヨーロッパ物語紀行
2007年 10月 16日
その内訳は「ロミオとジュリエット(ヴェローナ)」「ローマの休日」「フランダースの犬(アントワープ)」「カルメン(セビーリャ)」「エル・シード(バレンシア)」「みずうみ(フーズム)」「エーミールと探偵たち(ベルリン)」「点子ちゃんとアントン(ベルリン)」「エーミールと三人のふたご(ヴァルネミュンデ)」
ケストナーの3作品が入っているのが、この著者らしいなあと思って読んでみた。
このラインナップを見て、興味を惹かれる人には楽しめるはず。
でも、私個人としては、この手の旅はすでに自分でやっているのだということを再確認しただけのことだった。わざわざ他の人が書いた紀行文を読むまでもなかった・・・
第一、知っていることが多すぎる。
「フランダースの犬」の裏話あたり、初めて読んだら「目からウロコ」なんだろうけれど。
ケストナーの出生の秘密のことも書かれている。知っていたけれど、ここまで明言している文章は初めて読んだ。ドレスデンのケストナー博物館の案内係氏は、このことについて触れなかったが、なぜなのだろう? そこまでケストナーをあがめ奉っているのか? それとも、確証が無い噂にすぎないのだろうか? あのとき、「ケストナーの出生について、こういう話を聞いたことがあるのだけれど」と、案内係氏に訊いてみればよかったと、今にして思ったりする。
(私のケストナー聖地巡礼記はこちら)
というわけで、私にとって一番面白かったのは、筋は知っているけれど、ちゃんと読んだことがない「カルメン」。なんせ、フランス文学はあまり得意でないので。
カルメンがロマ(俗称ジプシー)の女性だということは知っていたが、ドン・ホセがスペイン北部の町ナバーラ出身で、バスク人だということは知らなかった。そして作者はメリメ。これはフランス人。スペインを侵略したナポレオンの国の人間。しかもセビーリャはナポレオン軍の攻勢に対し、一番よく闘った「英雄都市」なのだそうだ。
だから、「カルメン」はロマ、バスク、スペインそれぞれの人々に、複雑な感情を抱かせる作品なのだそうだ。
唐突に「ツボ」だったのは次のくだり。
日本でも日露戦争のころは、「カサビアンカ」が愛唱された。これは、ナポレオン戦争の中、ナイルの海戦で、フランス海軍の軍人カサビアンカと十代の息子が、勇敢にたたかって重傷をおい、燃えさかり沈没する戦艦オリエントとともに壮絶な死をとげる軍国的な詩だ。この詩は「カルメン」との関連で触れられているにすぎないのだが、松本侑子氏がランサムをよく知っている人だということを思うと、それ以上のことを勘ぐりたくなってしまう。(それにしてもフランス人だなんて信じられない。実に変わった名前だ)
松本氏による「ツバメ号とアマゾン号」のレビューはこのサイトで読めます。
この本に関する情報はこちら
「カサビアンカ」という名前に関する考察はこちら
by foggykaoru | 2007-10-16 21:46 | 児童書関連 | Trackback | Comments(12)
スペインは言葉だけでなく、ケンカのときのナイフの構え方も違うらしく、ホセがカルメンの浮気した相手を「ナバーラ式の構えで刺し殺してやる」とか言ってましたよ。腿にピッタリと当てて構えるのがナバーラ式だとか。
メリメの文章が、ちょっとバスク人を田舎者扱いしていたようなので、気になっていたのですが、かおるさんのブログを読んで納得しました。そうだったんですかあ。
カルメン、原作は読んだことがありませんでした。読んでみよう。オペラの方は、例えばハバネラなんか歌ってみたいなぁと思うのですけれど、私は色っぽいドラマティックな歌が下手くそなので、どうにもなりません(涙)。
その少年の名前はジャンなんでしょうか、それともピエール? アンリ?(爆)
ほんと、日本でも愛唱されていたなんてびっくりです。
ということは、神宮訳以前に定訳があったということですよね?!
カルメンはアルトだから、サグレスさんの音域にはぴったりじゃないかしら。
あっ、題名合っているかしら?
オペラのカルメンの音域はいいんです。でも私にとって大問題が! 色気です、色気! カルメンにふさわしい色気なんて、逆立ちしたって出ないよう(泣)。
題名合ってますよ。
私は大人になってから読んだのですが、わりと気に入りました。
突き抜けた感じと言いましょうか。
どっちかというと湿っぽいところがあるケストナーの児童書としては、珍しいタイプのような気がしました。