「カサビアンカ」に関する一考察(追記しました)
2007年 10月 20日
これはフランス人にしては非常に珍しい名前です。
というより、イタリア語そのもの。
「bianca」は「白い」の女性形。(だからミス・ビアンカは白いネズミでなくてはならない。)
「bianca」の男性形は「bianco」。白ワインを「ヴィーノ・ビアンコ」と言うのは、「vino」が男性名詞だから、形容詞も男性形を使うのです。
「a」で終わる名詞は女性名詞。だから形容詞も女性形「ビアンカ」を使う。
「カサ」という発音の単語は「cassa」というのがあります。
これは「箱」、英語の「case」です。
私としては、これよりもむしろ「カーザ」と発音する「casa(=家)」説を提唱(?)したいところなのです(ちなみに、スペイン語で「白い家」は「casa blanca カサブランカ」です)が、どっちにしても、なぜこんなイタリア臭い名前なのでしょう?
ここでひらめいたのは、カサビアンカ氏がナポレオン戦争時代の人だったということ。
ナポレオンはコルシカ島出身。
コルシカというのは、フランス領になっているのは何かの間違いじゃないかと思いたくなるほど、イタリアに近い。実際、フランス領になったのは、ナポレオンが生まれるほんの数十年前のことで、それまではずっとイタリアに属していた。
当然、コルシカ方言というのは、イタリア語に近い。現在もそうです。
ナポレオン・ボナパルトはもともとナポレオーネ・ブオナパルテという、こてこてのイタリア系の名前だったのを、自分でフランス風に改名したのです。
ナポレオンはコルシカ時代の仲間たちを重用したことで知られています。
だから、カサビアンカ氏もコルシカ出身者なのかも。
そう考えれば、イタリア的な名前であることにも納得がいきます。
それにしても、イタリアでもCassabiancaやCasabiancaという苗字は珍しいのではないかと思います。
WhitecaseとかWhitehouseという苗字を聞いたことがないのと同じことで。
[追記]
サグレスさんが「カサビアンカ」の原詩を見つけてくださいました。
こちらです。
綴りは「Casabianca」なんですね。
さらに「casa」の発音は「カーザ」でななくて「カーサ」である、とぬまべさんが指摘してくださいました。
これでシニョール、じゃない、ムッシュー・カ(-)サビアンカが、ミスター・ホワイトハウス、つまり「白家(白宅、白タク?)氏」だったということが明らかになったわけです。
しかし、3年も4年も月謝払って勉強したのに、そんな基本語の発音すら忘れてしまったとは・・・! ああ、死にゆく脳細胞に合掌(涙)
by foggykaoru | 2007-10-20 09:13 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(28)

コルシカ島の気質って、まるでシチリア島みたいだな、と思ったことがあります。メリメの「コロンバ」を読んだ時、映画の「ゴッドファーザー」に似てる、と思いました。強い家族愛と復讐、というあたりですが…。

ナポレオン自身が天才過ぎて、部下に人材が居なかったように聞いていましたから…
たしか同盟軍が立てた有効な対策はナポレオンとは決戦をするな、と言う方針だったはず
ナポレオン以外は素人集団だから…
でも、これって軍事に偏った評価
近代的な民主主義の概念はナポレオンの時代から始まっています
ナポレオンは民主主義を利用しただけですから、様々な人々の努力の結果ですよね


たとえば、作曲家には カステルヌオボテデスコさんがいます。「ドイツの古い城」って意味の名字ですよね。これもすごい。
あと、ナブラチロワがすごい。これは「返した」さんですね。名前が過去形なのがすごい。
日本の名字だと、47都道府県の名字が一個を除いてみな実在するそうです。ないのはどこだったかなぁ。で、地名を名字につける場合は、故郷を離れてなつかしんでいるんだそうです。なので、イタリア語の名前をもった人が国外にいるのも自然なのかも。
コロラド出張の時も、ジョン・ルフランソワさんに会いました。アメリカ人として暮らしているので、セディーユが使えず、少年時代は、フランコイスと呼ばれていたそうな。
イタリア語を勉強して「カーザ」と「ビアンカ」という単語を習ったとたん、「カサビアンカだ!」と思ったんです。
だからって、それが人の名前だとは、ついこの間まで知らなかったんですけれどね。
>カステルヌオボテデスコ
すごい苗字! だったら「カサビアンカ」ぐらい、どうってことないですね。
ところでその名前の意味は「ドイツの新しい城」です。「ヌオボ」は「新しい」。
「古い」は「ヴェッキオ」。
>故郷を離れてなつかしんでいるんだそうです。
そうなんでしょうねー
>イタリア語の名前をもった人が国外にいるのも自然なのかも。
確かに。
今までに聞いたいちばん珍しい苗字は、フランス人の「トゥールモンド」さん。
tout le mondeは英語のeveryoneです。
重用していたというか、自分の周囲に気心の知れた同郷の人を置いておいた、ということです。
方言丸出しで語り合うことができる人にそばにいて欲しいというのが人情ですから。
トップクラスまでのし上がったとは限らないけれど、それでも、ナポレオンがいたからこそある程度の地位を得ることができた、という人は少なくなったんじゃないかしら。


>やっぱ、「城」と言ったら「古い」でしょう
あはははは! ウケました! そうですよねえ、どうしたって古いイメージです。
毎朝、入院中の母から電話が来るのですが、カステルヌオボテデスコなる名字の話、お借りします♪ 元ドイツ語教師なので、面白がるでしょう。

http://website.lineone.net/~ssiggeman/hemanscasa.html
だれかこれを神宮先生風に訳してくれないかな~♪

なるほど、カーサビアンンカなのですか。ローザは例外、と。1つ知識が増えました♪
「私の家」「ラ・ミア・カーザ」「ラ・ミア・カーサ」と唱えてみても、「カーサ」という発音だったという記憶はよみがえりません。
年はとりたくないものです(号泣)
追記のところにぬまべさんとこへのリンクをさせていただきました。せめてものお礼のしるしとして。

あっ、そうか、私がぬまべさんの文を読み間違えていたんでした(汗)。これで知識が正確になりました♪
かおるさん、
>死にゆく脳細胞に合掌
うわ~ん、言わないでぇ~(泣)。昔はスポンジが水を吸い込むように生物の名前が覚えられたのに、今ではさっぱりです(涙)。生物学だの語学だの、記憶力が頼りのものを専攻しようとしたら、若い内にじゃかすか覚えないと駄目ですね。(勿論両者とも、記憶力だけが頼りってもんでもありませんが。)

たしかに m は有声音ですけど。
死にゆく脳細胞にとっては、Sの発音も霧の中です(涙)
さらに、旅先で片言スペイン語を慌てて詰め込んだりした日にゃ、頭はぐちゃぐちゃ。カオスです。
イタリア語の発音なんですが、私はいまだに「gli」の発音がよくわかってません(汗)

画像ですので、めったやたらと重いんですが・・・。私の日記にものっけました。ついでに、厚顔無恥にも私も訳しちゃったりなんかして(汗)。
http://base1.nijl.ac.jp/infolib/meta_pub/G0000203KDS/jsp/Frame.jsp?IMG_CODE=CKMR-00008%2FCKMR-00008-0034&IMG_KIND=JPEG


日本語の普通の「り」よりも、舌の盛り上がった位置を後ろに移動させます。
すると「り」と「じ」の中間のような音が出ます。
もしくは、「じ」の音を出す状態で、舌先のみ下に下げで摩擦しないようにします。
すると [gli] になるはずです。実際に聞いたことがあるのなら、体感しやすいと思いますのでお試しあれ。

関西の某所では、「いずみ」を「いるみ」と発音するそうですし、東北の某所では「おりる」を「おぢる」と発音するそうです。
従ってその東北某所では、列車の車内放送が以前は、「降りる人が済んでからお乗り下さい」が、「落ちる(おぢる)人が死んで(すぃんで)からお乗り下さい」という、それはオソロシイものだった、書いていたのは、井上ひさしだったかなぁ・・・。
ヨーロッパ言語でも、LとGが入れ替わっているのが何かあったよーな朧な記憶があるのですが・・・、思い出せません。ああ、死にゆく脳細胞・・・。
なるよど。
日本語の「ラ行」は「ダ行」に近いんですよね。
だから、英語のpuddingが「プリン」に聞こえてしまったわけで。
「ダ行」は本来「ダディドゥデド」だけど、それが今や「ダジヅデド」に変化してしまった。
カルメンの町は一般的に「セビリヤ」という名前で知られているかもしれないけれど、ほんとうは「セビージャ」です。