フランス料理を築いた人びと
2008年 01月 26日
面白いです。
あとがきで、この本が口述筆記をまとめたものであることを知り、驚嘆しました。
口述筆記が可能なぐらい、氏の頭の中にはフランス料理のすべてが整理されて入っていて、熟成していたのです。料理の知識だけではなく、歴史の知識もです。その裏付けがあるので、この本は単なる料理の蘊蓄本ではない。
そして愛情。
一流の料理人は芸術家。
でも、手に入る素材とか、原価とか、店の経営など、現実的・散文的な話とは無縁ではいられない。
さらに、同じ芸術家でも、他のジャンルだったら、「死んでからその作品が評価される」ということがあるけれど、料理に関してはありえない。
そういう縛りがある料理と料理人と料理人を目指す人々に対する、氏の深い愛情が伝わってくるのです。
この人、研究者であると同時に、なかなか大した教育者だったんだなあと思います。だからこそ、「辻調」の今があるのだし、氏がいなかったら、日本におけるフランス料理のレベルは今もなお低いところにあったかも。
ただ、フランス語が多い。
フランス語の知識が無いとわかりにくいところもあります。
たとえばフランスの有名な料理人が「私は一介のトレトゥールだ」と言った、とか。traiteurというのは「惣菜屋」のことで、フランスをケチケチ旅行している私にはおなじみの単語だけれど、いきなりトレトゥールと言われてすぐにわかる人はあまりいないでしょう。
でもこの本、お薦めです。
わからない単語は気にせずにお読みください。
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そうそう、今週の「週刊文春」の阿川佐和子の対談、辻氏の息子さんである辻芳樹氏でした。毎週文春を読んでいるわけではなくて、たまたま買ったので、ちょっとびっくり。ご縁があるのかしら(笑)
by foggykaoru | 2008-01-26 10:05 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(0)