人気ブログランキング | 話題のタグを見る

鹿島茂「パリ五段活用」

この本、途中まで読んであったのだが、中断してしまっていた。今回再び手にとってみて、中断した理由を思い出した。難しいのである。

イギリスの海辺のリゾートには決定的なものが欠けていた。それは、海辺のリゾートの誕生に伴う「美意識の変容」である。

ううむ。よくわからんぞ。イギリスの海辺のリゾートはオシャレ度が低かったということなのか?
「商品を買う」という行為は、現代という社会にあっては、思っているほど単純なものではなく、そこには多分にイマジネールな要素が入り込んでいるのだ。

こちらのほうは、日本女性が(日本でも買えるものを)わざわざパリのブランド本店まででかけていって買い物をするという例が挙げられているので、まあなんとかわかる。しかし「イマジネール」の明確な意味はようわかりませぬ。

というわけで、この本は単なるパリ好き・フランス好きには敷居が高い。フランス文学畑向きかも。同じ中公文庫から出ている鹿島氏の「パリ時間旅行」のほうが一般向き。

印象的で記憶に残っているのは2つ。

まずは「プヌーマティック」というもの。
フランスは電話以前にプヌーマティックが発達していたので、電話網が整備されるのが遅かったのだそうだ。
そういえば、フランスはインターネット化が遅かったっけ。それというのも、「ミニテル」というコンピューターを利用した通信・検索手段が発展していたため。(私は1980年代にフランス人の友人宅でこのミニテルを目にして、驚嘆したものだった。)
それにしてもプヌーマティックってどういう原理のものなんだろ?

そしてFIFAとワールドカップのこと。
正式名称がFederation Internationale de Football Association、つまりフランス語であることから、フランス主導の組織であることはなんとなく知っていた。
この組織を作ったとき、サッカー発祥の国イギリスにももちろん参加を持ちかけた。イギリスは「ふんっ!」と馬鹿にして、一応は参加したけどあんまり本気で関わらなかった。けれどもFIFAは頑張って、規約に「サッカーの世界大会を開催できるのはFIFAだけ」と決めた。そうこうしているうちにワールドカップを開催しようということになり、ウルグアイが開催国として手を挙げた。船旅しかあり得なかった当時、ウルグアイまで選手団を派遣することさえ大変だったが、とにかく開催。このときの笛は、ハンドボールのクウェートも真っ青の不公平なもので、ウルグアイがフランスに追いつかれそうになったら、まだ80分しかたっていないのに試合を終了させてしまったんだとか。
そんな大会であっても、経済的には大成功して、その後のFIFAとワールドカップの隆盛はご存知のとおり。
最初に偉ぶっていたイギリス、損したわけです。


歴史関係の本を読むと、「ウサギとカメ」だなあとよく思います。
先行していてもそれは一時のこと。
諸行無常。盛者必衰。おごれるものは久しからず。


この本に関する情報はこちら

by foggykaoru | 2008-02-10 10:44 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(0)

名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

<< カサビアンカ キャンプの移動 >>