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「明日は舞踏会」

鹿島茂著。

氏の「馬車が買いたい」は19世紀のフランスの若者の一生を文学を材料に解き明かした名著だが、こちらはその女性版。バルザックをはじめとするフランス近代の文学に描かれた貴族の女性の生涯を、おもしろく解説してくれる。

赤ん坊の頃はばあやに育ててもらい、
その後は修道院附属の寄宿舎につっこまれ、
大人になったら、運が悪いとそのまま一生修道院送り、
そうでなければ、ようやく親と1つ屋根の下に暮らし、社交界にデビュー。
そして、裕福で家柄の良いよぼよぼの爺さんと結婚。
子どもさえ生まれればこっちのもの。その後は若い男といくら浮気してもOK。

という流れはだいたい知っていたけれど、歴史的背景も含めてきちっと解説してもらえるとすっきり爽やかな気分(笑)

社交界でのおつきあいが、貴族にとっては単なる娯楽の域を超えた、いわば仕事であり、彼等がいかに激務をこなしていたかということがよくわかる。さぞかし物入りだったことでしょう。(だから若い娘は金持ちの爺さんと結婚しなくてはならなかったのだ。)でも、金を湯水のごとく使わないと華開かない文化というのもあるわけで。
世界大国の地位をアメリカに譲って長いフランスですが、腐っても「文化大国」、それが言い過ぎなら少なくとも「ファッション大国」という肩書きが消えないのは、こういう歴史的蓄積があるおかげなのでしょうね。

この本に関する情報はこちら

by foggykaoru | 2008-04-13 11:08 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(4)

Commented by ケルン at 2008-04-13 15:47
ジェーン・オースティンの本を読めるようになった頃(以前は、女性の結婚話がテーマの本?と敬遠していた。。)、当時のこういう人たちは、外で働く・働けるわけでもなく、結婚相手の財産と社会的地位がすべてを決めるので、誰と結婚するかはまさに死活問題、家の中で刺繍や読書をしながらこういう話で一日過ごさなければならないとはなんて退屈!と、女ばかり5-6人で話した記憶があります。

フランスでも、『ベルばら』なんて読んでいても、女性の結婚で国の関係が決まったりするし、派閥や勢力の構図も複雑そうだし、着飾って社交界で過ごすのはまさに大切な仕事だったんですね。でも、もしかしたら、他の生き方を知らなくてそういうものだと思っていたら大変とは思わないのかな?
Commented by むっつり at 2008-04-13 23:35
ハプスブルグ家?
閨閥が貴族の基本ですよね
一族と国家の命運がかかっていますから、これはもう一種の戦争です
Commented by foggykaoru at 2008-04-14 20:38
ケルンさん。
オースティンの小説、私は何も予備知識がなかったから、気楽に読みました。
>他の生き方を知らなくて
この時代のフランスの貴族の娘にとって、「他の生き方」とは修道女になることだったんです。だから社交界にいて、オジイサンと結婚するのは「ラッキー♪」だったみたいですよ。
Commented by foggykaoru at 2008-04-14 20:40
むっつりさん。
そう、貴族とか王族の場合、家系の存続が至上命令。
だから好きだのなんだのなんて言っていられなかったんです。
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