「ヴィクトリア女王--大英帝国の"戦う女王"」
2008年 05月 31日
エリザベス1世あたりの、のるかそるかという人生とは違って、のほほんとしている。市民革命を経て、「君臨すれども統治せず」になった後の王家なのだから、当たり前なのだが。
だから読み物としては、革命以前の、王が実権を持っていた時代の本のほうが断然面白い。
けれどこの本、思ったよりは面白かった。
ヴィクトリアはただ子どもを産んでいただけではなかったということがよくわかったから。けっこういろいろ口を出していたのだ。
ヴィクトリア朝と言えば、英国が「日の沈まぬ帝国」として絶頂を迎えた時代。
なんとなく「左うちわ」で我が世の春を謳歌していたのだろうと思い込んでいたが、この本を読んで、認識が改まった。
なまじっか世界中に領土を持ってしまっただけに、それを維持していくために非常な苦労をしていたのだ。新たなことを始めるよりも、それをずっと維持し続けるほうが難しい。ウェブサイト運営も同じである(自爆)
でも、帝国の女王たるもの、それを投げ出すなんてことはできない。良いも悪いもない。要するに、女王としてのプライドが許さないのだ。
歩調が合わなかったという首相グラッドストストンには、そんなプライドは無いし、より現実を見据えることができたということなのだろう。
それにしても、ヨーロッパの国々の王室というのは縁戚関係でつながっているとはきいていたけれど、これほどまでとは。
ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世はヴィクトリアの孫。彼が第一次世界大戦を引き起こしたのは、親戚の中で格下なのが悔しかったということもあったのではないか。
ロシア最後の皇帝ニコライ2世はヴィクトリアの孫の夫。
ということは、彼らはヴィクトリアの孫であるジョージ5世の従弟。
こういうことはヨーロッパでは昔からざらにあったのだろうけれど、昔は交通機関や通信が未発達だったから、外国にいる親戚の動静はわかりにかっただろう。交流も少なかったはず。それに、王侯貴族の結婚というのは愛情もへったくれもなく、政略結婚の度合いが非常に高かっただろうから、身内とは言え、かなりドライだったはず。「親戚の○○ちゃんは元気かしら」的な感覚はあまりなかったのではないかと思う。
ヴィクトリアの時代にはそういう感覚になりつつあったかも。つまり、縁戚関係のあるひとにぎりの人々、それも、「身内意識」を持った人々が、ヨーロッパにおいて、かなりの実権を握っていたのである。そして、この時代、世界を席巻していたのはヨーロッパだった。これはすごいことである。
今は普通のOLだった人が王妃になっている国がけっこうあるから、「ヨーロッパの王室中が親戚」という感じは薄まっているかも? よくわからないけど。
まっ、今の国王たちには実権が無いから、どうでもいいのだ。
この本に関する情報はこちら
ヴィクトリア関連をいろいろ検索していたら、Wikiの「ヨーロッパの祖母」という項目を発見。
興味のある方はこちら

by foggykaoru | 2008-05-31 20:33 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(3)

ネス湖で開発中の潜水艦が対ドイツ戦用の戦闘艦だと知って、「ドイツとは戦争にならないようにヴィルヘルムに言って聞かせます」と言うセリフが終盤にあったような…
女王陛下が出てきて、全て解決って?まるで黄門様の印籠みたい、て私は思いましたが、それって、それだけ国民の信頼と尊敬を集めていたと言う証ですよね
勿論あくまで映画の話ですから、現実とは違いますが、それでもある程度は現実を下敷きにしてストーリーを構成しているはずです
映画のネタばらしを書いてしまいましたが、古い映画ですし、かなり有名な映画ですので、ご容赦を
>それでもある程度は現実を下敷きにしてストーリーを構成しているはずです
きっとそうなのでしょうね。
ヴィクトリアはヴィルヘルム通称ウィリーのことを「ちょっと困った子だわ」と思っていたらしいです。
