ひとつの情報に頼ってはいけない
2008年 10月 11日
初めての方にお断りしておきますが、このポストは3本連載の最終章です。
第一弾はこれ、次はこれ
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日本語版Wikipedia に「アン・ブーリンはフランス王妃クロードの侍女だった」と書いてあったので、ついでに「クロード・ド・フランス」を調べてみたら、食い違いを発見。
以下は「クロード・ド・フランス」の項目内にあった、アンに関する記述です。
1514年に夫フランソワ1世が即位したのと同じ頃、クロードの侍女に2人のイングランド人姉妹がいた。メアリー・ブーリンとアン・ブーリンである。メアリーは1519年に帰国するとヘンリー8世の愛妾となった。1520年頃には、アンはクロードの通訳として仕えていた。
また、クロードの妹ルネ(フェラーラ公エルコレ2世妃となる)のよい話し相手でもあった。彼女も1521年に帰国し、姉と同じく愛妾となり、やがてはイングランド王妃となる。
21年に帰国してしまったら、国王フランソワの母である摂政ルイーズの活躍を見る機会なんてないじゃないか! (注: ルイーズは1515年にもちょこっと摂政をやってますが。)
というわけで、もっと信頼のおけるところ、つまりイギリス版Wikipedia でAnne Boleynを検索してみると・・・
生年不明。1507年とも1501年とも言われるが、01年のほうが有力っぽい。
彼女にはメアリーという姉妹がいるが、どちらが年長だったかはわからない。メアリーのほうが姉だという説のほうが有力。
最初はフランス王妃アンヌ(クロードの母。1514年死去)の侍女だった。その次に王妃クロードの侍女になる。
21年に父に呼び戻されて帰国。
それほど美人ではなかったが、ダンスが上手で会話が面白く、非常に魅力的で、カリスマ性があり、男を引き付ける手管にたけていた。
ヘンリー8世に目をつけられて言い寄られても、「愛人じゃあいやよ、あなたの奥さんになりたいの」と言って拒絶し続けた。
32年、ついに彼を受け入れ、妊娠する。
正式に結婚していないと、生まれた子供は庶子になってしまい、もしも男子であっても後継ぎにできないので、ヘンリーは無理やり王妃キャサリンを離婚し、アンと結婚する。
なのに生まれたのはエリザベスだった・・・
ヘンリーはアンのきつさ、鋭い舌鋒に辟易し、夫婦関係は冷えていく・・・
以下は私の感想。
もしもアンが「奥さんじゃなくちゃいやよ」と言わなかったら、ヘンリーはすぐに彼女を手に入れることができたのだろう。
そしたらもっと早く子供が生まれて、それが男子だったかも。
でもそれは庶子だから国王にはなれない。
いつまでたっても男子後継者ができないことに対する焦りがヘンリーの側につのりにつのったのは、アンが引っ張ったせい。
だからこそ、ローマ教会からの離脱という荒技に走ることになったのだろう。
ではなぜアンは「奥さんじゃなくちゃいやよ」と言ったのか?
単にもともと上昇志向が強かった?
さんざん引っ張っといて、つまんない結論ですいません。。。
by foggykaoru | 2008-10-11 07:41 | 西洋史関連 | Trackback(1) | Comments(15)

「ずさんな脚本の大味なメロドラマ」と、朝日新聞では酷評されていましたが、フランスでもヒットしたこの作品、西洋時代劇好きな私にはすごく面白かったです。 生涯に6人の王妃と結婚したヘンリー8世をめぐる美しい姉妹の、これは単なる嫉妬や略奪愛のメロドラマではなく、男達の権力欲に女性がコマのように利用されるのが当たり前だった時代に、対照的な性格ながら二人がそれぞれの方法で必死に王侯貴族社会を生き抜こうとした記録として、見応え充分な歴史劇ではないでしょうか?ただし、史実とはかなり異なる面があるのも否めません...... more

もっともローマ教会からの離脱は、イギリスの国益に繋がることでしょうから、アン・ブーリンが正妻の座を求めて頑張らなくても、いずれヘンリー8世はやっていたのかしら。(歴史に「もしも」はないけれど、アン・ブーリンが頑張らなかったパラレル・ワールドのイギリスを想像するのも楽しかったりして。)


やっぱり、「もし」と考えると、英国国教会はなくていまだにカトリックだけの国だとしたら、どうなっていただろうというのは面白いです。(でもやっぱりカトリックには飽き足らなくて、仏教かなんかが多数派になっていたりして)。姉妹の話は、無条件で妹に感情移入します。S.ヨハンソンよりはN.ポートマンのほうが好きだわ。
そう、「奥さんでなくちゃいやよ」なんて言わなければ、愛人の一人としてしばらく寵愛されて、そのうちぽいされたことでしょう。
>歴史に「もしも」はない
そのとおり!!
でも、「もしも」と妄想するという楽しみは素人に与えられた特権だと思います♪
きっと「王妃になればぽいされない」と思ったんでしょうね。
でも、離婚OKになれば、結婚しても離婚されるという可能性までは考えなかったのでは。
ましてや斬首になるなんて、思ってもいなかったことでしょう。
仏教が広まったなんて思えないけれど、ドイツ起源のプロテスタントがもっと多くなっていた可能性はありますよね。
フランスにも一時期、相当いたんだし。(ユグノーと呼ばれます。)
フランスの場合、いったん両派の和解があったんだけど、その後ルイ14世がユグノーを追い出してしまい、その結果、経済的に衰退したんですって。
もしもイギリスもそういうことになっていたら、産業革命の進展も変わってしまったかしら・・・
映画ではメアリーは妹になってるんです。
ヨハンソンが演じていて。
さーてどっちに感情移入します?

・エリザベス1世は生まれなかったか、生まれたとしても女王にはならなかった。
・従って、アルマダの海戦はなかった、もしくはあったとしてもスペインの圧勝。
・従ってイギリスは制海権を得ることのできない弱小国のまま。
・従って、大英帝国っつうものもできず、19世紀末ロンドンもみみっちいままで、ホームズの活躍の場がない(泣)。
・さらにランサム・サガも書かれることがなかった(大泣)。
趣味のことしか考えられないワタクシでした・・・。
ところで、無一文で放り出される前の保険として、愛妾時代に修道院に多額の寄付をしておく、という手もありそうですね。老後はそこで面倒見てもらう、という条件で。

修道院について、他ならぬゆきみさんがそうおっしゃると、とても説得力があります(笑)

イギリスがアルマダの海戦で勝って大英帝国になり、ホームズが活躍し、ランサム・サガが執筆されれば、エリザベス1世がいなくても個人的には構わないかな~(なんちゃって 笑)。
ゆきみさん、
わーい、褒められた~♪ でも賢いというよりは、「身も蓋もない現実感覚」なのかもしれませぬ。

柔らかい頭と、アイデ゛アを実現できるお金があればきっとイングランド軍の勝利でしょう。
「身も蓋もない現実感覚」こそ重要ですよ!!気取ってちゃ生きていけませんもの。
歴史の中には、なりふり構わず生きてこその勝利みたいなお話がたくさんありますよね~~

あああ残酷だった…
この続編が、『エリザベス』(あれも血なまぐさい映画)ですか。。
アンがフランスから帰ってすっかり王を意のままに操れるようになっているのがちょっと痛快でした。
それと、すごく豪華なキャストでしたね。イザベラ王妃を演じたのは、『ミツバチのささやき』のアナなんて。