カテゴリ:エッセイ( 155 )

「不機嫌なメアリー・ポピンズ」

副題は『イギリス小説と映画から読む「階級」』
著者は新井潤美という中央大学の先生。
帰国子女のはしりで、しかもイギリスで何回か転校していて、階級による言葉づかいの違いを身をもって体験して育った人。

実に面白いです。
今、読みかえしているところなのですが、この手のエッセイで読み終えたとたんもう1度読もうという気にさせた稀有の例です。
新書で持ち運びが楽だったという理由もあるんですけれどね(苦笑)

取り上げられているのはメアリー・ポピンズだけではありません。
「エマ」「高慢と偏見」「ブリジット・ジョーンズの日記」「ジェイン・エア」「レベッカ」「大いなる遺産」「眺めのいい部屋」「コレクター」「タイム・マシン」「時計じかけのオレンジ」「ハリー・ポッター」「日の名残り」「郊外のブッダ」

これらの作品をひとつでも多く読んだり(映画化されたのを)観たりしている人のほうが楽しめます。

イギリスは階級意識が強いとは聞いていました。
旅行に行って「コックニー」に目を白黒させた経験もあります。
それにしてもここまでとは。

極端に言えば、ひとこと口をきいただけで「お里が知れる」状態なのだそうです。
だから、これらの作品も、原語で読むと、登場人物の言葉づかいから、その人がどういうバックボーンのかが一目瞭然なのだそうな。
たとえば、相手に対して聞き返す言葉は「What?」がアッパークラスの言葉づかいで、「Pardon?」は非アッパーなんですって。びっくり。

日本語でも言葉づかいには上品・下品といった違いはあるけれど、そんなに明確に階級を示すわけではない。これは現実として階級による差があまり大きくない、ということもあるかもしれないけれど、それ以上に「意識」の差なのだろうと思います。
日本人は何かあれば「右へ倣え」。他の人と同じようにしたがる。
イギリスの場合は、「あの人々とわれわれは違うのだ」と考え、同じようにしようなんてはなから思わないのでしょう。

あと、「イギリスのアッパークラスはインテリでないことを自慢する」のだそうです。本も全然読まない。大事なのは言葉づかいだけ。教養は必要ない。「マイ・フェア・レディー」はそれをネタにした作品。この作品をさらにネタにしているのが「ミー・アンド・マイ・ガール」なのですね。。。

そう言えば、日本のアッパークラスである我が首相。
彼はアメリカ留学したらアメリカなまりの英語を覚えてしまい、茂おじいちゃんが「これはいかん」とアメリカからイギリスに鞍替えさせたそうですね。で、めでたくイギリスのアッパークラスの英語を身につけた。(たぶん。私にはわからないけれど。)
で、確かに教養は身につけてません、、、なんてことまでは、この本には書いてませんのであしからず。

とにかく、「イギリス臭さ」に興味のある方には超オススメです。

ランサムの言及もちらっと。
思わず著者紹介を見直しました。1961年生まれ。なるほど。


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by foggykaoru | 2008-12-03 21:47 | エッセイ | Trackback | Comments(10)

「危ない」世界の歩き方

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熱帯雨林のレビューでは酷評されているけれど、私はけっこう面白く読みました。

旅は出会い。
人との出会いこそが旅の醍醐味であることは間違いない。
観光地を要領よく見て回ったことよりも、地元の普通の人々と交流したことのほうが、よっぽど印象に残るものだ。
でも、「地元の普通の人々」の範囲というのは、どこまでなのだろう?

著者の岡本まい氏(ブログはこちら)は、普通の人々どころか、いわゆる「ヤバい人」ともどんどんお近づきになるし、「ヤバい場所」にもどんどん足を踏み入れるのだが、それは彼女が、旅をしてなくても、つまり日本にいても、あえて「ヤバい人たち」とか「ヤバい現場」に飛び込んでいく人であるせいなのではないだろうか。
たとえば、歌舞伎町の風俗に飛び込むとか。
なにも自分自身が風俗嬢になるということではなくて。
たとえば、取材対象にするとかね。

日本にいるときに、そういう世界に首を突っ込まない人が、旅先だからと言って、わざわざ冒険する必要は無い。いや、自分のガラじゃないことをいきなり海外でやったら、大ケガをするだけです。

インドのバラナシとか、マザー・テレサ創設の「孤児の家」「死を待つ家」あたりは、自分でも行ってみたいという気になりました。


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by foggykaoru | 2008-10-08 20:44 | エッセイ | Trackback | Comments(6)

「オーラ、アミーゴス」

副題は「黒木センセと南米ペルーひとりNPO」
黒木センセとは、著者の黒木暢氏のこと。リマの日本人宿でお近づきになりました。

この3月まで宮崎の中学で美術を教えていた黒木先生は、ペルーの田舎の学校を廻って、学用品を寄付したり、日本の教え子の絵を持っていって、そのかわりにペルーの子供たちにも絵を描いてもらってそれを教え子に持ち帰ったりという、まさに「ひとりNPO」を20数年前から続けているという、奇特な方なのです。

ちょっと考えてしまいましてね。
来年あたり、黒木先生とご一緒できないものかと。
そうすれば、普通の観光客が行かない(行けない)ようなところに行けるんですから。
多少重い思いをしてボールペンとかノートとか運んでも、精神的には十分おつりが来るんじゃないかなと。

でも正直なところ、もうひとり、旅の相棒が欲しいです。
誰か一緒に行きたい人、いませんか? 


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by foggykaoru | 2008-08-24 09:40 | エッセイ | Trackback | Comments(14)

「イギリス鈍行列車の旅」

著者は鉄ちゃんとして知られる英文学者・小池滋氏。

1960年代の鉄道の旅がメインで、その多くは今や廃線となってしまっているので、この本片手に氏の真似をするわけにはいかない。

ローカル線の鈍行を時刻表を頼りに廻る旅は鉄道網が整備された先進国でなければできない。
となると、やっぱり英国がいいのだろうな。
ヨーロッパ大陸はやっぱり大陸だから、だらーっとした景色が多い。車窓ごしに見える景色を楽しめるのは英国がいちばん。
いいなあ、もうちょっとポンドが安くなったらこういう旅をしてみようか・・・
ただ、終点に着いたら乗ってきたその列車でとんぼがえり、というのはちょっとねえ。私は鉄ちゃんではないので、終点では1泊したい。
でも、ほんとに地の果てみたいなローカル線の終着駅には、ろくすっぽ宿なんか無いのだ。
・・・やっぱり私には無理か。

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by foggykaoru | 2008-07-24 20:39 | エッセイ | Trackback | Comments(6)

『懐かしい「東京」を歩く』

古本屋で見つけた。森本哲郎著。

内容は、非常におおざっぱに分けて、
1.著者の幼少時ゆかりの地(巣鴨・渋谷・杉並・中野あたり)
2.芭蕉ゆかりの地、江戸(深川・日本橋あたり)
3.著者若き日、つまり戦後の銀座・渋谷あたり

1は私にもゆかりのあるエリアが中心なので、ふむふむと読んだ。

2はあんまり・・・
古文の引用があると読む気がしなくなる。困ったことだ。

3の、戦後の銀座の生々しい描写が胸に迫る。
どのビルも、火にあぶられてどす黒く煤け、ガラス窓は破れて、蜂の巣のような窓のひとつひとつにベニヤ板が打ち付けられて・・・(中略)・・・ボロ切れをつぎ合わせたテントのような「屋根」を、棒でささえた露店に並べてあるのは、三角形の小さな新聞紙の袋に、ひとにぎりの「南京豆」をつめたのとか、ブリキのようなガソリン・ライターとか・・・(中略)・・・古着、古靴、そんなものばかりである。

これは昭和21年の晩秋の情景である。
戦争が終わって1年以上たっても、そんな状況だったのだ。
2年前、私は旧ユーゴを旅し、ボスニアの銃弾の跡の生々しい建物などに目を見張ったのだが、私の親の世代の日本人は、あれと同じようなところで貧困にあえいでいたのだ。
大学に入っても、食べるためにバイトに追われ続ける著者。
私の父も、学生時代は祖父の収入だけでは暮らしが立たず、バイトばかりしていたと聞いている。
こんな東京で生活に追われていたんだ・・・。

苦労して生き抜いて、配偶者を得て、私を作って育ててくれたのに、親不孝な娘でごめん。

実は、著者のお父上は、私の父の中学時代の担任の先生だったそうで。
この本は父にプレゼントすることにします。

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by foggykaoru | 2008-07-05 21:07 | エッセイ | Trackback | Comments(16)

「世界一周恐怖航海記」

友人が貸してくれたので、なんとなく読みました。

ピースボートでの世界一周の航海体験記。
この人の文章には独特のスタイルがあるなあと思って読み始めたら、著者の車谷長吉という人は直木賞作家なのですね。知りませんでした。

ピースボートというのは、以前からなんとなく聞いてました。
なんか、見聞を広めるために若者が乗るらしい、と。
この本を読んで認識が改まりました。
(昔はどうだったか知らないけれど)今のピースボートというのは、別に若者専用のものではないのですね。そして、参加者の多くが、航海の間に異性とくっつく。というか、それを目的に参加する人がけっこういる。

まあ、船旅というのは暇ですものね。
巻末の旅程を見たら、港から港への間は平均1週間ぐらい。その間、ただ大海原を船に乗っているだけなんだから、恋愛ぐらいしなくちゃ間が持てないというものなのでしょう。アガサ・クリスティーあたりでも、船旅の間に結婚相手を見つける話がけっこうあったような。

さらに、日本から外に飛び出すという感じではなく、日本人ばかりの閉じた空間なのです。うー、息苦しそう。私には向かない。

車谷氏という人はかなり変わってます。
奥さん偉いです!愛だよ、愛!
と思ったけど、奥さん自身もものを書く人で、芸術家同士、相通じるものがあるのでしょう。

ピースボートのHPはこちら

ついでにWikipediaも見てみたら、へえええでした。
こちらです。

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by foggykaoru | 2008-06-27 21:59 | エッセイ | Trackback | Comments(6)

氷室冴子さんがお亡くなりになったそうです。

mixi仲間の日記を見て知りました。
彼女は少女小説作家として知られていたようですが、私にとってはフェミニスト入ったエッセイストでした。

どの本を読んだのか記憶が定かではないのですが、「いっぱしの女」だけは鮮明に覚えています。

いくつになっても結婚しろと迫る母。結婚しない娘というのはそんなにいけないことなのか。こちとらちゃんと仕事して、ちゃんと1人で生きている「いっぱしの女」なのに・・・。

うんうんそうそう、わかるわかる!と、手で膝を叩いた(←比喩表現)私でした。

同年代で同じような境遇。
勝手に「同志」みたいに思ったものです。

そう。
同年代、なんですよ。。。
早すぎます。
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by foggykaoru | 2008-06-07 21:29 | エッセイ | Trackback | Comments(7)

料理に「究極」なし

辻静雄著。氏の死後に刊行された、最後のエッセイ集。

何を書いても前に読んだ辻静雄氏の著書の感想文の繰り返しになってしまう。やっぱりこの人、偉かったんだなあと。

巻末に掲載されている丸谷才一氏の弔辞が泣かせます。最後の部分をご紹介しましょう。旧仮名遣いは改めてあります。
しかし、あの立派な男、優しくて快活で魅力に富む知識人がもういないことの寂しさをどうしたらいいのだろう。今後わたしは、イギリスの新刊書の読後感から一転してロンドンのホテルの朝食について語り合うような友達を、持つことができないでしょう。寂しい。


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by foggykaoru | 2008-03-29 21:36 | エッセイ | Trackback | Comments(2)

遙かなるケンブリッジ---一数学者のイギリス

「国家の品格」で話題になった藤原正彦氏の本。
氏がケンブリッジで過ごした1年間の体験に関するエッセイであること、そして、息子さんがひどいいじめにあったということは知っていた。だいたい想像がつくから焦って読まなくてもいいやと思っていたのだが、古本屋で何回か出くわしたので、そろそろ読んでみるか、と手にとった。(「国家の品格」もまだ読んでません。読めばたぶん共鳴するだろうと思うけど。)

で、予想どおり、なかなか楽しめる本でした。改めて感じたのは、氏の文章のうまさ。
ケンブリッジの十月は、学生のざわめきと共に訪れた。夏の観光客の、明るい服装、ゆっくりした歩調とせわしない視線に代わり、黒い色調の、正面を見詰め足早に歩く学生達が、忽然と、大挙してこの町に現れた。口を閉ざしたまま歩む彼等を包むざわめきは、観光客の喧噪とは異質の、若きエリート達の放つ気の蠢動であった。静粛なるざわめきだった。中世の残映を濃く留める町並みに、若さが充満した。

イギリスの風景を初めて目にしたときの描写にも注目。
機上から見た通り、イギリスは緑だった。どちらを見ても、畑や緑の草原が、なだらかな起伏をなして限りなく広がっている。山は唯の1つもない。白い羊の群が見える。農家であろうか、時々石造りの家が、一面の緑の中に、小島のように浮かんでいる。美しい。田園の美しい国はどこか品格がある。

うんうん、イギリスってそうだよね、と思うとともに、この頃から「品格」がキーワードだったんだな、と、にやり。

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ところで、ケンブリッジと並ぶ英国の名門大学オックスフォードでの生活に関するエッセイとしてはこの本が出色。後半ちょっとだれるけど。
あと、皇太子殿下の「テムズとともに」も。こちらはとても読みやすい。
「遙かなるケンブリッジ」と合わせて3冊読むと、オックスブリッジのすべてがわかる・・・ってのは言い過ぎですが、それぞれの著者の立場が三者三様であるだけに、どれも一読の価値があると思います。


(イギリスじゃないけど)藤原氏のこの本もおすすめ。
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by foggykaoru | 2008-02-24 11:08 | エッセイ | Trackback | Comments(8)

イギリス式おしゃれな生き方

著者のマークス寿子氏のことは「英国貴族と結婚した人」として知っていました。でも、なんとなく手が出ないままでいました。この本もタイトルが気に入らなかったのですが、ブック○フで105円だったから買いました。(←最近このパターンが多い(苦笑))

読んでみたら、タイトルから連想されるようなちゃらちゃらした本ではなく、それどころか、著者の知性が行間にあふれた本でした。この人、私の母親の世代なのですが、大学院まで進み、それから英国留学したのですね。あの年代でそれはすごい。しかもマークスというのはマークス&スペンサーのマークスさんだったんですね。知らなかった・・・。

いろいろな雑誌に掲載された記事を集めたものなので、話題が古かったり(サリン事件とか)するし、どうということのない記事もけっこう含まれているけれど、全体的にはそんなに悪くありません。年末の旅行前にさらさら読んでしまってから、しまった、これは旅先でちびちび読むのにぴったりの本だった!と後悔しました。

言うなれば、「この著者はもっと読み応えのあるものを書いているに違いない」と感じさせる本です。

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by foggykaoru | 2008-01-21 21:03 | エッセイ | Trackback | Comments(5)