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新築物語

パスティーシュという言葉を世に知らしめた清水義範氏のパスティーシュでない小説。副題は「または泥江龍彦はいかにして借地に家を建て替えたか」。

主人公の名前は何かのもじり? 渋澤龍彦という仏文学者はいたけれど。

副題どおりの内容。
私は普通にフムフムと読んだだけなのけれど、家の建て替えを考えている人だったら、けっこうのめり込むかもしれないし、いろいろ参考になることが多いのかも。

熱帯雨林ではユーズドでしか買えないようです。


清水氏のパスティーシュ短編集は2、3冊読んだことがある。どれも楽しかったという印象が残っているけれど、題名と内容をはっきりと覚えているのは「国語入試問題必勝法」だけ。こっちは版を重ねているだけあって、とっても面白いよん。

# by foggykaoru | 2010-06-19 21:02 | 普通の小説 | Trackback | Comments(9)

ショパンを廻るパリ散歩

副題は「ロマン派時代の音楽事情」
著者は中野真帆子という人。

ショパン生誕200年をあてこんだショパン関連本のひとつ。
いわゆるムックというのかな? パリの素敵な写真満載。次回パリに行ったら、「ショパン聖地巡礼」をしようかという気にさせられる。
でも、文章のほうは、なぜかあまりすーっと頭に入ってこない。平易な文章なのに。私の頭、よっぽど疲れてるのかな。

勉強になったことを以下に列挙。

ショパンのおもな活躍の場だった「サロン」、これはもともと語り合う場として発展したのだけれど、王政復古後、語り合うサロンは政治的に危険視されたということもあり、音楽中心のサロンが広まったのだそうだ。
ちょうどそのこと、ピアノの改良が進んだということもある。

パリ初のコンサートホールができたのが1830年。ここに新興ブルジョワたちが足を運んだ。

ジョルジュ・サンドとショパンがうまくいかなくなったのは、サンドの子どもたちが長ずるにつれ、ショパンとそりが合わないのがはっきりしてきたということがある。また、1848年の2月革命によりフランスは第二共和制に移行するのだが、このときサンドは生まれ育った田舎の農民のシンパ、つまり革命派なのに対し、ショパンは音楽家としての自分を育ててくれたサロンのお金持ちさん派だった、という違いもあるそうな。

ショパンが生きた時代というのは、まさに「近代」だったのだなあ。

この時代の作曲家にとっては、オペラを当てるのが最大の夢だったそうだ。
ショパンもそれを期待されたけれど、結局オペラは1曲も書かず、オペラを通して得た声楽のテクニックをピアノに応用した。

なるほどねえ。ショパンの曲はピアノで歌うような曲が多いものねえ。
だから好きなのかな私。

ってか、ピアノやってる人はたいていショパン好きなんじゃないかと思ったりもする。


なぜかモーツアルトを上手に弾けるようになりたいとはあんまり思わないのよね・・・
どうしてなんだろう?


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# by foggykaoru | 2010-06-17 21:18 | 伝記・評伝 | Trackback | Comments(0)

マリー・アントワネットの生涯

藤本ひとみ著。

とても読みやすい。
教科書よりもちょっぴり深いことを勉強したい人にお薦め。

勉強になったこと(その1)
マリー・アントワネットの本名、というよりオーストリア名はマリア・アントニアだそうだ。
アントワネットに対応するフランスの男性の名前がアントワーヌだというこは知っていたけれど、アントワーヌは英語のアントニーだったのね。。。
ということは、クレオパトラのお相手もフランス人はアントワーヌとして知っているのか・・・

勉強になったこと(その2)
彼女がフランス王妃になってから、あんなに女王然とふるまったのは、その成育歴にある。
母マリア・テレジアが(当時の王室としては例外的に)恋愛結婚で結ばれたフランツはロートリンゲン(ロレーヌ)という小国からやってきた、いうなれば入り婿。非常に影が薄かった。彼は「ここにはぼくの居場所はないんだよ・・・」と多少はこぼしたりしたけれど、本質的にとてもお気楽で、政治にも軍事にもうとく、のんきに生涯を送った。
そんな両親を見て育ったマリー・アントワネットが、夫にかしずく妻になるはずがない。
しかも父の血を引いているものだから、能天気に過ごしちゃったわけである。


ただし、ものの見方があまりにも現代の価値観に基づきすぎのような。
「王妃に別れを告げて」あたりも合わせて読んでみたほうがいいと思う。王妃や貴族にだって言い分はあるのだ。



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# by foggykaoru | 2010-06-16 20:52 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(0)

急な青空

南木佳士氏によるエッセイ。

「医学生」のあとがきで知ったのだが、医者と作家という二足のわらじをはいて頑張ってた南木氏は、頑張り過ぎのツケがまわり、パニック症候群に、そしてうつ病になってしまったのだとか。

自らの心身のバランスを見つめつつ書かれたエッセイ集なので、実際の年齢以上に枯れた感じ。

心に残ったのは、エンゲルスの著書を読んだ感想。
資本主義社会の状況をずばり言い当てた部分もあるけれど、大外れだったこともある、でも大外れなところも含めて、なかなか味わいがあるよ、という意味のことを次のように書いている。
時の流れに浸食された風情の見事さも古典の持つ特長なのかもしれない。

さすが作家。うまいこと言いますな。

もうひとつ。
南木氏の患者である、短歌を作るのが趣味のおばあさんの言葉。
「(歌を作るのは)暇つぶしだよ。暇だと生きる意味とか、あたしはなぜ生まれたのかなんてろくでもないことばっかり考えちまうから何かでつぶすんだよ。あんたの仕事だってだいたいそんなもんでしょ」

さすが歌詠み。うまいこと言いますなあ。

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# by foggykaoru | 2010-06-14 20:59 | エッセイ | Trackback | Comments(2)

医学生

ようやく本を読むゆとりができた。

南木佳士著。
実はこの人、高校の先輩でして。在学期間はかぶってないけど。
「ダイヤモンドダスト」が芥川賞を受賞したとき、同窓会報にインタビュー記事が載っていたので、親しみを感じて読んだ。その後、確かもう1冊読んだ。それぞれ印象がとても良かった・・・はず。でも何も覚えていない(涙)

で、この本。

著者が在学した当時の秋田大学医学部を舞台に、4人の医学生の青春が描かれている。

大変面白い。
国立大学に新設された医学部に入ったという、世間的には間違いなく優秀な部類に入るのだけれど、伝統校には入れなかったために、少なからず挫折感を抱いている4人。
しかも、周りは「ど」がつく田舎。テンションは低くなるばかり。
そんな中、とりあえず勉強を続けていく。

私は医者になりたいと思ったことは一度もないのだが、この小説を読んで、改めて思った。
たとえもう一度十代に戻ることができて、しかも理数系の才能を与えられたとしても、私は医者にはならないだろう。
「風邪引いた人の診察をしたら風邪がうつる。この私にそんな仕事ができるはずない」と、風邪ばかり引いていた子どもの私はいつも思っていたのだが、病気というのは風邪に限らないのである。精神的にもダメージを受けるわけで。

誤解されないように繰り返し言っておく。
この本はとても面白い。
医学部に入って、医者になろうという人の本意は人それぞれ。
「人を救いたい」という、まっとうな気持ちで学ぶ人もいれば、「なんとなく」という人もいる。
でも、前者のほうが偉いとか、後者はろくでもない奴だとかいう、単純な話ではない。そこがいい。
医者を目指す若者必読の書だと思う。


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# by foggykaoru | 2010-06-12 20:51 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)