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タグ:日本の小説・文学 ( 167 ) タグの人気記事

東大助手物語

著者の中島義道氏については、ずーっと昔「ウィーン愛憎」を読んで知った。
ウィーンでの壮絶な体験記で、飽きずに一気読み。
でも、ほんとうにウィーンというのは住むとそんなに恐ろしいところなのか、もしかしたらご本人の性格も関係しているんじゃないの?などと失礼なことも思ったりした。

その後、彼の本は書店や図書館で手にとってみて、ちらりと中を読んだりしたことがあるけれど、ちゃんとは読んだことはない。
いろんなこと(日本はうるさい、とか)を激烈に批判する人だな、という印象は「ウィーン愛憎」以来変わらない。

今回のこの本。
学者の世界というのは、けっこう大変だということはもれ聞いている。
研究が大変、ということではなく、人間関係、特に上司にあたる教授との関係が。
で、中島氏。「ハズレ」を引いちゃった。
今でいうところの、パワハラの記録です。
壮絶。
中島氏の書くものはどれも壮絶というか、激しいけれど、それにしても壮絶。

それだけだと、やっぱり「ご本人の性格もあるし」みたいな感想がメインになってしまうところだけれど、ギリギリそうはならない。
ご本人が自分の家庭環境、成育歴を客観的に描いているから。それができる人の言葉には真実があると思う。

解説の人選がいい。
「京都ぎらい」の井上章一氏なのである。
京都の真ん中出身の教授に嵯峨出身を馬鹿にされて「なんでそこまで言われなければならないのか」とむかついた経験の持ち主だから。
解説にそのことが書かれているわけではありませんけどね。







by foggykaoru | 2019-03-26 23:52 | ルポ・ノンフィクション | Trackback | Comments(0)

クラクラ日記

無頼派として知られた坂口安吾の夫人である坂口三千代がしたためた、夫の思い出の記。

この本の存在は「ビブリア古書店シリーズ」で知った。
坂口安吾のいちばん有名な「堕落論」は未読だけれど、昔、「不連続殺人事件」がかなりのお気に入りだったので、ずっとちょっとは気になっていた。
先日、友人に「まあ、読んでみなさいよ。昭和を感じるから」みたいなことを言われて、ようやく手にとってみた。

確かに「昭和」である。
今だったら絶対にありえない。
小説書くために覚醒剤を飲み、眠れないからって睡眠剤を飲み・・・
こんなダンナとよくも連れ添ったものだ。
惚れちゃったんだね。
それじゃなきゃつきあえない。
っていうか、作者自身が相当ぶっ飛んでいる人だからこそ、惚れることもできたわけで。

興味がある方はぜひ。



by foggykaoru | 2019-03-04 17:22 | エッセイ | Trackback | Comments(0)

仁義なきキリスト教史

著者の架神恭介という人はフリーライターなのだそうだ。

キリスト教の歴史をヤクザの抗争史にみたてたお話。
ボーンクリスチャンではあるけれどネタ話が大好きな友人が貸してくれた。

とってもわかりやすくて面白い。

大納得です。
イエスが病人を治した話とか、魚をたくさん出してみせた話とか、なーるほど実際はこんな感じだったんだろうな。

ネタバレしたくないので、詳しいことは避けますが、
パウロってのも、なーるほど、そういう奴、いそうだよね。
ルターも似たタイプなんだって。
ふーん。名を成す人って、えてしてそういう奴なのかもしれない。
(以上、独り言です。意味不明でごめん。)

世界史で「ニケーアの宗教会議で、三位一体を唱えるアタナシウス派が主流になって、アリウス派が異端ということになった」ということを「意味わかんないし、んなことどーだっていいんだけど」と思いつつ、入試に出るかもしれないからと、せっせと覚えたのははるか昔。
ほんとに「どーでもいいようなこと」だった、と書かれていて、今にしてなんとなく嬉しく思いました(笑)

カノッサの屈辱。懐かしい。
十字軍の蛮行は、おなじみでした。

最後に旧訳の内容にも触れているけれど、、、
ユダヤ教ってのは・・・絶句。
気候の厳しい砂漠の民の宗教だから、生っちょろい神じゃないんだ、ということを、どこかで読んだか聞いたことがあるけれど、それにしても激しいです。

湿潤な日本とは違う。違いすぎる。
生っちょろいほうが楽でいいよ。




by foggykaoru | 2018-11-10 21:34 | 西洋史関連 | Trackback | Comments(0)

平成大家族

中島京子作。
静かな老後を送っていく予定だった老夫婦(+ヒッキーの長男)
結婚した娘たちが出戻ったりして、あれよあれよという間に大家族になってしまうお話。
章ごとに違う視点で描かれているのが面白い。
ヒッキーを始め、現代の日本の家族にありがちな問題がたくさん盛り込まれていて、決してそんなに甘い話ではないんだけれど、なんともユーモラスな語り口で、うなりました。

中島京子の小説はたぶん三作目だけど、これがいちばん好きかも。

by foggykaoru | 2018-11-04 20:54 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)

さようなら、オレンジ

サボればサボるほど、読んだ本はたまってくる。
まずいまずいと思いつつ今日にいたりました。
読んだ順にアップしていきたいとは思ったけれど、とりあえずネット復帰を第一に考え、直近に読んだ本を軽くご紹介。

===============

とっても薄い文庫本です。
たっくさんの賞---大江健三郎賞とか太宰治賞とか。でもいちばんの決め手は「本屋大賞第四位」だったりして---を受賞したと帯に書いてあったので。
私はわりとそういうことに左右されます。ただし、芥川賞にはあまり左右されない。

作者は岩城けいという人。
オーストラリアに長く住んでいるらしい。
アフリカのどこかから難民としてオーストラリアにたどりついた女性と、学者の夫とともにオーストラリアにやってきた日本人女性の物語。
しみじみと面白いです。
さすがたっくさんの賞をとっただけのことはある。
薄いからあっという間に読んでしまったけれど、すぐに再読しました。

きっと作者の体験もたくさん含まれているのだろう。
というか、体験をこめた渾身の一作なのかも。
他にいろんな作品を書くことができるのか、他人事ながらちょっと心配になってしまう。



by foggykaoru | 2018-11-03 09:18 | 普通の小説 | Trackback | Comments(2)

政と源

三浦しをんの小説。

特に彼女の作品を贔屓にしているわけではないのだが、「月魚」が面白かったのでもう1冊、と。

政と源は幼馴染のおやじ2人の名前。
下町の人情をたたえた、なかなか良いエンターテインメントである。
なにより感心したのは、主人公(政だったっけ?もう忘れてる(汗))の心情描写。
よい亭主だったつもりが、妻に出ていかれてしまっている。離婚まではしてないけど。
いったいなぜ!?

あと、下町っぽいおやじ中心の話というと、有川浩の「三匹のおっさん」を思い出すのだが、三浦しをんは段違いに文章が練れている。美しい。

やっぱりあなどれないぞ三浦しをん
と思わせた作品でした。



by foggykaoru | 2018-05-12 09:21 | 普通の小説 | Trackback | Comments(0)

みちのくの人形たち

深沢七郎の短編小説集。
実は途中でやめました。
今まで読了した本しかポストしてなかったんですが。

この作家、「楢山節考」を書いた人だよね、、という認識はあったのですが。
で、「楢山節考」というのは、きっと私の好みではないと思い、映画も観ようとしなかったし、原作にだって手を伸ばさなかったのですが。

今回この本を読んで・・・

いや、もうまったく、ほんとにそういう感じ。

暗~い。貧しさ。悲しみ。モラルを超越した何かがじっとり。
人間の心の奥底に存在する真実。「業」っていうやつ?
でも目をそらせてはいけない。

そういうものを描く作家として、彼は独自の地位を確立したんだろうけど、私はこの本を3分の2くらい読んだところでお腹いっぱい。

作風が合わないというのが大きいけれど、文章も気に入らないんです。
読んでいて赤を入れたくなるところがちょいちょいある。
それがなかったら、なんとか読了しただろうと思います。



by foggykaoru | 2018-04-30 20:37 | 普通の小説 | Trackback | Comments(0)

月魚

三浦しをんの小説。
古書店を営む若者と、その幼馴染である「せどり屋」の物語。

うーんおもしろい。
同じ古書店がらみの小説として、「ビブリア古書堂の事件手帖」があるけれど、こっちのほうが断然おもしろい。

で、なにがおもしろいって、2人の若者の関係性。
BLではないのだけれど、その香りが濃密。
そーゆー記述は一切無いんです。念のため。
でも、さすが「腐女子」を自称する三浦しをん。
書いてないことを想像させるのがうまい!










by foggykaoru | 2018-04-24 21:03 | 普通の小説 | Trackback | Comments(0)

獅子文六の小説二編

「青春怪談」
獅子文六のユーモア恋愛小説。
前に読んだ「胡椒息子」よりもぐっと時代が下る。戦後です。1954年発表。
どうってことないんだけど、後半になると、性というかジェンダーに関して、獅子文六って時代を先取りしてる?とちょっとびっくりな話になるのでした。

「コーヒーと恋愛」
こちらは1962年の作品。
フェミニズムとまではいかないけれど、これまた(今だったら普通だけど)当時としてはちょっと先進的な結末。

獅子文六はフランス通。
奥さんもフランス人だった。
(お孫さんを見かけたことがあります。大学の先輩だったんで)

フランスといえば(というのも変だけど)
「女性は女性に生まれるのではない。女性になるのだ」
という言葉で有名な、シモーヌ・ド・ボーヴォワールの「第二の性」。
日本でも、インテリだったら絶対に知っていた。
フランス通の獅子文六だったら、フランス語で読んでいたかもしれない。
影響も受けたはず。

調べてみたら、「第二の性」は1949年発表。邦訳が出版されたのは1953-55年。
やっぱりね。







by foggykaoru | 2018-04-20 22:27 | 普通の小説 | Trackback | Comments(0)

胡椒息子

獅子文六が、1930年代に発表した小説。
ランサムと同時期ですな。

東京の裕福な家庭に生まれた少年の物語。

ごくごく軽い小説だけど、
当時の金持ちのドラ息子やドラ娘、ドラ妻(なんて日本語は無いけど)の生態が興味深い。
ちょっと気になるのは、男性に甘いこと。
まあ昔だからね。第一、作者自身も男だから。

暇つぶしにお薦めです。

by foggykaoru | 2018-03-24 09:07 | 普通の小説 | Trackback | Comments(0)